令和5年港区防災士有資格者向け研修

            在宅避難を想像する:在宅避難の重要性       (港区防災アドバイザー 小野修平)

 1.首都直下地震ってどんな地震?

   ・想定する首都直下地震は都心南部直下地震と多摩東部直下地震が考えられ、広い範囲で
    震度6弱・震度6強・震度7の揺れがお起こると考えられている。
   ・死者・けが人が発生し、体調を崩す人が出る。帰宅困難者が発生する。
    物流・交通網が寸断し生産が停止して生活物資が不足する。
    電気・上下水道・ガス・通信・トイレ・エレベータの寸断によりライフラインが停止する。
    災害ごみの発生、支援制度事務の遅れ、災害ボランティアの不足で生活再建に時間がかかる。

 2.フェーズ別の状況
   ・命を助ける救急救命期は、①家屋の耐震化、②家屋類の点灯・落下・移動防止対策、③ガラス
    の飛散防止対策、④火災対策などの事前の対策が大切である。
    災害時には自分の身は自分が守り、いち早い共助による安否確認と救命活動が重要になる。
   ・命と生活を守る避難生活期は、命と健康を守り、安全やプライバシーを確保しつつ、避難生活を
    送ることが出来るように、各個人がトイレや水、食料、電源や照明、通信手段を確保しておくと共に、
    身の周りの方にも気を配ることが大切である。
   ・生活を立て直す生活再建期は、災害により壊れた生活を立て直すべく、片付けを進めながら、生活
    再建支援制度に関する情報を集め、必要な申請手続きを行い、生活を再建していく。

 3.様々な避難形態

   ・避難とは危険から逃れ安全な場所に移動することで、広域避難所、地域内残留地区、区民避難所
    がある。広域避難所は震災時火災の延焼による危険から避難する場所であり、地区内残留地区は
    震災時、火災の延焼の危険性が少なく、広域避難所に行く必要がない地区で、どちらも屋外である。
    区民避難所は災害による家屋の倒壊・延焼等で被害を受けた区民の一時的な屋内の生活場所である。
   ・避難生活の場は「区民避難所」以外に、自宅で生活を続ける「在宅避難」の他、知人・親戚宅での生活
    や車中泊、疎開避難など様々な形態がある。
   ・港区では、安全の確保、限られた収容人数、公助による支援の限界から在宅避難を推奨している。
    熊本地震の場合は広い場所に居たいという考えで、中学校の校庭に3千人が集まった。
    一般の住宅の人には、住宅に住めても避難場所に集まる傾向がある。

 4.在宅避難を実現するために2つの重要なこと
   ・一つは安全空間づくりであり、家屋の耐震や家具類の転倒・落下・移動防止対策、ガラスや食器の
    飛散防止対策及び火災対策の実施は命を守るだけでなく在宅避難をするためにも重要である。
   ・もう一つはものの備えであり、トイレや水、電源や照明、熱源、情報を得たり連絡を取り合う手段を確保
    することで、最低でも3日、できれば710日分程度は確保しておく必要がある。
   ・これらの備えを家族全員で共有しておくことも大切である。
    阪神淡路大震災で多かった圧死した人はほとんどが15分以内に死亡していたという調査結果がある。

 5.在宅避難の現実と支えるために
   ・在宅避難のメリットは安全や健康、プライバシーを確保できることである。
   ・在宅避難における注意点は、①それぞれの状況や困りごとが見えにくくなる。
    発災から数日が経過すると、避難所には様々な目が向けられ、支援や情報が集まり易いが
    在宅避難者には届きにくい。ライフラインが止まった中での在宅避難生活は相当大変であり、
    心身ともに体調を崩しても気が付かれにくい状況になる。  
   ・在宅避難を支えるためには、集合住宅ごとに支え合う仕組みつくりが大切である。
    一人で頑張るとしんどくなる。チームの取り組みが大切になる。