昨今の日本経済・アベノミクスの課題とFintech革命    東洋大学教授 竹中平蔵

 1.日本の政治状況

    ・日本の総理大臣には任期がない。しかし、自民党総裁には任期があるため、選挙に勝っておく必要がある。

     今は人気の低迷が少し治まってきたので、1/3は無理でも、過半数は出来る時期と考えられている。そのため、

     野党との対立点をなくしていく必要がある。小池新党が出てきたので、少し分からなくなってきた感じがある。

    ・経済政策から考えると、保守の革新勢力が力を持って欲しいと考えている。加計の問題の背後には52年間

     獣医学部が新設されなかったということがある。その間でも世界は大きく動いている。


 2.日本の景気

    ・日本の経済はゆるやかに回復している。IMFの報告では世界経済も同じである。当面、経済は安定している。

     しかし、昨年6月のブレクジットやトランプ大統領の出現等、ポピリストが出てきている。社会の分断の中にある。

    ・昨年の株価を考えると、年初は18400円だったがトランプ大統領が出現して15000円になった。年末には19100

     になり、大きく変動している。これらを見ると日本に関係にないところで起きた乱気流の中で影響を受けている。

    ・このような中で日本は第4次産業革命という大きな風に向かって行く必要がある。今まで営々と続いた産業が

     あっという間になくなる。反対もある。その中にFinTechがある。4次産業革命はドイツがインダストリアル4.0

     いうことを2011年に発表した。ダボス会議で大きく捉えた考えになっていった。アメリカはビックデータやディープ

     ラーニングが2015年頃から使えるようになった。日本では2016年に成長戦略で政府が認識してきた。先進国に

     比べて2~3年遅れてきた感じである。日本にはロボティクスや産業機械に導入する潜在力は持っている。

    ・何が起こっているかは分からない。バズワードとして、AI人工知能ブロックチェーンなどが使われている。輪郭

     がぼやけているが、色々な言葉がとあぶれている。このような時は5つのポイントを考えておく必要がある。

     AIドローンを含めたロボット、IoTビックデータ、シェアリングエコノミーの5つである。

   ・アメリカでは部分的なものも含めると今の仕事の47%がなくなると言われている。完全になくなるかどうかして

    かなりの部分がなくなると考えられている。

    囲碁の分野で起きてきた。建設業も変わってきている。ドローンを使って、全体の状況を把握して、若い女性が

    短時間で設計出来るようになってきた。ビックデータを使ってシャアリング出来た事業としては、3兆円の売上を

    上げているAirbnb7兆円の売上を上げているウーバーが出てきた。

   ・今起こっていることは、今まで必要としてきた社会的インフラが不要になってきたことである。タクシーという国の

    お墨付きに対して、運転手の評価が出来るようになったことで、国のお墨付きが不要になった。旅館業も同じよう

    に宿泊所の評価ができるようになったので、民泊が増えてきた。民泊を認めないといけなくなり、制度を作った。

   ・人々の見えない変化として、インフラがいらなくなったということが起きている。金融制度でも起きている。銀行の

    信用保証がなくても、ブロックチェーンのようなものが出てきている。ビックデータで信用評価が出来るようになって

    きた。ビットコインは出て来てから、大幅に高くなってきて、投資として扱われるようになった。

   ・通貨は3つの役割がある。1つは価値を測ることであり、2つ目は交換の手段である。3つ目は富を蓄えることである。

    ビットコインは、交換の手段が成立する前に、富を蓄えることを求めてきた状況である。今の送金の手数料は高い。

    特に、海外に送金する場合は高過ぎる。金融機関のある部分の自己否定が出ている。持っていることを超えている。

    資金決済を昨年日本は取り入れた。昨年の第4次産業革命の報告の中でフィンテックの部分は1ページと1/3である。

    フィンテックの取り組みは大きく遅れている。金融庁では検査業務を廃止するという動きがある。問題だと思う。

   ・今年6月出てきた制度がある。ビックデータの司令塔を作る制度である。ビックデータは有効だと考えられているが、

    どこに貯まっているか分からない。米国では巨大なIT企業の中にビックデータがあると言えるが、日本では巨大な

    IT企業がないので、どこに貯まっているか分からない。エストニアは国家がビックデータを整備した。エストニアは

    人口120万人なので出来たと思う。ビックデータの司令塔を作ることになったが、制度設計は民間にやって貰わない

    と困る。自動運転のデータを集めて欲しい。次は、医療のデータである。自動運転は道路交通法により、日本では

    実験が出来ない。先進技術の実証実験を円滑に進めるためには、日本でもサンドボックス作る必要がある。

    小池都知事が大田区で自動運転のサンドボックスを作ることを検討をしている。

   ・日本にはセキュリティ技術者が不足している。フィンテックでは個人認証が必要になってくる。個人認証技術には

    セキュリティ技術者が多く必要になる。インドでは国民11億人が個人認証したが、日本では簡単には出来ない。

    第4次産業革命と言われる動きが進んでいることを考えると、新しいことに前向きに取り組む必要がある。


  「一言」久しぶりに竹中教授のお話を聞きましたが、時代が大きく変わってきているのか、お話に内容も大きく変わって

      きた感じがします。バズワードという言葉が出ましたが、最近はバズワードが多く出てきたためか、理解し難い点

      が多い感じがして、理解できないところもありましたので、聞いたまままとめたところがあります。