日本経済のゆくえと不動産活用の未来   慶応大学院大学 岸教授

  ・今の報道には怒りを感じている。森友学園の報道が多いが、森友学園の問題がそこまで大事な問題かと思う。

   私は日本経済の方向は大丈夫の方が一番気になっている。日本経済を建て直すのはここ3年しかないと思う。

   日本の経済は2020年~2025年には大変なことになると思う。それを防ぐには、日本経済の成長率を高くして、

   経済成長を続けることがポイントである。今の成長率は1.5%であり、高くはない。2%はないと駄目である。

  ・経済学では、需要を増やして経済を良くする方法があるが、需要を増やして経済を良くしても1年くらいしか

   持たない。需要を増やして成長率を高くすることは良いことだが、未来永劫に続けることには無理がある。

   経済成長を長く続けるには何をすれば良いかというと、潜在成長率を高くすることである。今は非常に低い。

   人口減少していて潜在成長率を上げるのは厳しい。

  ・今年、来年は経済は良くなると思うが、その後が心配である。経済の生産性を高めることが大事である。

   安倍政権はPRばかりやっている。官邸が次々と色々なテーマをPRしているが、生産性は上がっていない。

   官邸や行政は今の状況を変えたくないのが本音である。変えると権限を手放すことになるので、嫌がるので

   ある。官邸は外交や安保に重点を置く必要がある。農業改革や働き方改革をやっているが、内容は行政が

   やっていける範囲のことだけに絞っている。海外のファンドなどでは、今の安倍政権では経済改革は期待

   出来なくなっていると考えている。

  ・憲法改正に力を入れている時期ではない。2019年には消費税は10%に上がるため、経済にはマイナスである。

   トランプ大統領が出てきて金利を上げている、オイル価格が安定してきたなどの影響で、デフレ脱却の環境

   は整ってきた。そうなると日銀は金融緩和を止めることになり、経済にはマイナスである。2015から世帯

   数が減少する。2020年のオリンピックの後はどこの国も同じように経済は低下していく。2025年には団塊の

   世代のすべてが後期高齢者になる。社会保障費が飛躍的に増えていく。日本の収支改善が出来なくなる。その

   ため、社会保障費を抜本改革しないと国債が狙われることになる。2020年にはプライマリーバランスの改革と

   言っているが、政府は方向性を出していない。社会保障で今の水準を守るには、消費税を30%にしないといけ

   なくなる。そこまで消費税を上げる訳にはいかないというので、世界の消費税と同じ15%に止めると、社会

   保障費を30%切り下げる必要がある。そのためには、年金開始年齢を70歳に上げ、年金をカットしないと駄目

   になる。ギリシャみたいにならないためには、2025年までに社会保障改革をしないといけないのである。

   社会保障改革には時間がかかる。そのため、今からやらないと間に合わないのである。

  ・政治が期待する方向になっていかない。それならば、国民の側は自衛する必要がある。非常にシンプルである。

   自分のことは自分で守ることである。第一には、若い人が対象となるが、自分の稼ぐ力を高くする必要がある。

   給与は物価が上がれば上がるが、基本は、その人の生産性が上がれば給与が上がるのである。自分の稼ぐ力を

   強くするにはスキルアップすることである。日本にはスキルアップという考えが非常に低い。これまでは企業

   が研修してくれた。欧州では失業すると政府がスキルアップできる環境を整備している。日本でスキルアップ

   する環境を作っているのは大企業くらいであり、たくさんの人が働いている中小企業では無理である。これは

   将来的には非常にまずい。将来、年金支給開始年齢が高くなっていく。寿命も延びているので、働く期間は長く

   なる。転職も当たり前になる。最近企業している人は60歳以上の人が多い。若い人を中心に自分の将来プラン

   を考えて、スキルアップする必要がある。

  ・もう一つやらなければならないのは、自分の持っているお金に働いて貰わないといけないと思う。将来の不安を

   払拭するにはすべての人が働かないといけないと思う。家計の生産性を上げるには、家の資産に稼いで貰う必要

   がある。日本の資産は、大半が預貯金になっており、特殊である。アメリカでは預貯金の割合は十数%であり、

   イギリスは二十数%であり、株や投信などで運用している。日本人は博打が嫌いだから、投資をしないという人

   がいるが、パチンコを見れば分かるように違っている。日本人は日本政府が何とかしてくれると思っているので

   ある。日本政府の財政状況を考えると、国が面倒見てくれるとは思えない。各自が資産運用で稼ぐ必要がある。

  ・資産運用の力をつけるには時間がかかる。ネットの話は信用しない方が良い。個人投資家で成功している人は少

   ないので、成功した個人投資家の本を読んでも上手くいかない。地道に投資しながら、信用できると思った人を

   フォローすることだ。資産運用の力をつけることで基本となるのは分散投資をきちんとすることでる。リスクを

   下げるために、株も1社にしないで分散しておく必要がある。株だけでなく、不動産にも分散しておく必要がある。

   資産運用している人にはワインや車を投資の対象にしている人もいる。不動産投資について人口が減少しており、

   空き家が増えている時期に馬鹿だという人がいる。地方と都市ではまったく違う。地域でも大きく変動している。

   人口が減少している時は借家で良いという人がいるが、家賃をずうっと払い続けていかなければならないので、

   より多く稼いでいかなくなるので大変である。ワンルームマンションも過剰になっていると言われているが、場所

   より違っている。今日は京都のマンションの説明会であるが、京都は住み易く、地域の活性なども高いので、

   セカンドハウスや投資にしても良いかも知れない。日本全体では不動産投資に適している場所は少ないが、その中

   で京都は適していると思う。

  ・歴史家の話であるが、日本は40年毎に大きく変わっていると言っている。1865年には江戸幕府が崩壊して明治政府

   が出来て、社会的にはボトムであった。1905年は日ロ戦争に勝利してピークになった。1945年は第二次大戦に負け

   ボトムになった。1985年はバブル期になり、ピークになった。2025年は団塊の世代がすべて後期高齢者になるので、

   ボトムになる恐れがある。2020年までは大丈夫と思うが、2023年頃には経済危機が起こるのではないかと心配して

   いる

  
    「一言」岸さんはいつものように日本経済が心配だということを説明していた。そのため、自分のことは自分で守るということが

        必要であり、老人は資産運用の力をつけることが大事だということだった。そのためには、地道に株式などの運用をして

        実力をつけることや分散投資をしてリスクを下げることなどの話であった。