緊迫する国際情勢と日本の対応    外交評論家  岡本行夫

   ・最近は色々なことが起きてきており、1つのものごとに集中できる時間が短くなっている。今は25年から30

    サイクルで起きる大時代であると思う。中国では、鄧小平が黒いネコでも、白いネコでもネズミを捕るのは良い

    ネコだということで、金を稼ぎ出す時代を作ったように、大きく変わる時代になると思う。

    新しい帝国主義の時代になると思う。憂鬱な時代になる。プーチン大統領と習近平の野心的な動きがあり、米国

    もトランプ大統領が出てきて変わっている。欧州はバラバラになる。これらはグローバリゼーションの揺り戻し

    と言える。世界の直接投資が10倍になり、12ドル以下の絶対貧困が35%から11%に減少している。世界のトップ

    10%の人が持つ資産が世界の資産の90%になり、下層50%の人の持っている資産が1%以下になっている。富の

    格差が拡がっている。人口の爆発的増加がこれを助長しているとも考えられる。1930年代は世界の人口は20億人

    だったが、1960年に30億人になり、1975年には40億人になった。1980年には60億人になった。物理現象と同じ

    ように一定の空間に分子が増えると動きが激しくなるように、人口が増えると大きく揺れるようになる。昔は人口

    は負の資産と言っていたが、今は人口はプラスの要因と言われるようになった。2050年には米国の人口は4.5億人

    に増加し、日本は9千万人に減る見込みで、4.5倍になる。昔は約3倍であったので、経済的に非常に豊かな米国の

      人口が4.5倍になることは驚くことだ。インドネシアの人口も2億人になり、昔は4千万人だったフィリピンも大きく

    増えている。

   ・ITの伸びも凄い。幾何級数的に伸びており、むかしみんなが使っていたFDの容量が2Mだったのに対して、今の

    
HDDは2Tにもなっており、100万倍になっている。この進歩のスピードについて行ける人はハイウエイを行く

     ようなもので、このスピードについていけない人は歩いているようなものである。

   ・トランプ大統領は、米国の技術と経営で持って、中国に行って安い労働力でものを作るのはおかしいと言っている。

    これで米国の製造業が駄目になっている。今のアメリカがどの方向に向かっていくのか、共和党が作っている。

    その中で共和党は土俵を同じにしてくれと言っている。アメリカの企業に対して投資減税をしてくれと言っている。

    アメリカで作ってドイツで売ると間接税を取られるが、ドイツで作りアメリカで売る製品には減税している。その

    ため、アメリカで投資減税を2%くらいにして、ドイツと同じにすると言っている。

    また、アメリカの企業が外国で稼いで持っているお金をアメリカに持ってくることには減税すると言っている。

   ・アメリカの家計のバランス収支について考えると、安定的成長期の1990年代は収入に対して借金が90%台だった。

    バブル後の2008年には借金が130%と増えてきた。今は借金が103%と落ちてきており、もう少ししたら90%台に

     になると考えられ、大幅に改善されてきた。その上、トランプ大統領がインフラ投資をするのだから、米国経済が

    良くなる。しかし、米国経済は9年くらい伸び続けている。1990年代は10数年続いたが、それ以外はそのように長く

    経済成長が続いたことはない。また、トランプ大統領の政策の半分は議会の承認が必要なため、10月以降になる。

    そのため、かけ込みの輸入が増えたり、投資と輸出を手控えたり、抑える可能性がある。色々なことが起こるので、

    断定的に言える状況ではない。

   ・先日の選挙では、クリントン候補の得票率は47%であり、トランプ大統領の得票率は42%であったが、選挙の結果

    はトランプ大統領が勝った。投票日の10日前にセキュリティの再捜査を行うということなどが大きく影響している。

    誰がトランプ大統領に投票したかと言えば、郡部の白人もあるが、米国の女性達である。白人女性が得票者の40

     いるが、この人達の50数%がトランプ大統領に投票した。これまで、夫や息子を戦争に取られ、夫や息子の仕事は

    減る、それに伴い収入も減ることが続いた。ワシントンの政治がこのようにしたと考えて、その結果、クリントン

    候補には投票しなかったのである。昔は、仕事もあったし、収入もそれなりにあった。平和で戦争で死ななかった。

   ・それで選んだトランプ大統領が過激な動きを始めた。トランプ大統領が選出された以上、4年は政権に就く。8年に

    なるかも分からない。クリシュナバロンなど戦略家が側近にいる。経済政策は4年目に成果が上がるようにするとか、

    収支は8年で改善出来るようにすると思う。大統領になる前にしたことは弾劾の対象になるどうか難しい。しかし、

    脱税があれば現職でも追及できる。ホワイトハウスにいる人は選挙前からトランプ大統領を応援してきた人で、考え

    が偏った人が多い。閣僚候補には良い人が多い。外交、安全保障を固めている。内政は選挙前から応援してきた人が

    占めており、内政の人は壊し屋の人達が多いので、評価は出来ない。マティス国防長官を狂犬と言っているが、英語

    には狂ったと言う意味はない。猪突猛進と言った方が良いと思う。マティス長官はたくさん本を持っているが、それ

    らの本を読んでいる。マティス長官は日本を守ると言っている。チェスト国務長官は中近東にかかりきりになる。

    マイケン・フリンは辞めたが、後任には私の親友に近い男ぺトレイアスが候補として上がっている。ぺトレイアス

    ホワイトハウスに入ると歴代の中で最強のチームになると思う。

   ・安倍首相は良く頑張ったと思う。共同宣言をまとめたのは大きな成果である。日本を核兵器を使って守ると言ったのは

    初めてである。共同宣言を見て最も驚いたのは中国だと思う。今回の共同宣言は抑止力になると思う。経済案件は

    大きな枠組みを作って、副大統領と副首相がやることになった。米国の全体のことを見る副大統領が日本という国の

    話し合いのトップになったことは大きい。日本にとっては日米の
TFAを進めることは良いことと思う。日本がTPP

    話を始めたのは
2006年であり、TPP12ケ国であるが、その内の8ケ国はFTAは結んでいる。トランプ大統領は2国間

    FTAを進めると言っている。英国もFTAを結ぶと言っているが、英国はEUを出る2年後になる。そのため、2国間の

    FTAでは日本をモデルにしたい思っているので、アメリカも無理は言わないと思う。日本がFTAを結んでいるのは

    22%であるが、韓国は66%であり、日本は損をしている。早く70%に持っていくべきだいと思う。アメリカとFTA

    を結ぶと15%上がる。

   ・欧州は深く傷ついている。ブレグジットは大きいと思う。24ケ国でまとめようとしているEUは壮大な実験場である。

    英語を使うイギリスが出ると、英語を使う国はアイルランドなど2ケ国になる。イギリス人がEUの事務局から抜ける

    ことになる。イギリスも結構厳しい。WTOからも抜けないといけなくなる。イギリスの法律の約70%は直さないと

    いけなくなる。気の遠くなる程の苦労となると思う。昔アイルランドがEUに入ろうとして国民投票をしたら、法律

    の問題で否決されたことがあり、EUに頼んで特別の扱いで加入したことがある。これからのイギリスはどうなるか。

    もう一度、国民投票をやればEU残留が勝つと思う。この前の選挙では60歳以上の人がみんな投票に行って反対した。

    若い人が投票をさぼったので、EU離脱が決まった。そこへどうやって持っていくのかがポイントである。交渉期間

    が2年間しかない。イギリスは交渉期間を伸ばしたいと考えているが24ケ国が賛同しないと出来ないので、難しい。

    イギリスが頭を下げ、EUに残るのが良いと思う。EUの力が落ちていくことになる。

   ・プーチン大統領はヨーロッパを分断しようとしている。トランプ大統領もEUを分断しようと考えている。ホワイト

    ハウスのリーダーが頑張ってトランプ大統領を洗脳していくことを願っている。エストニア、リトアニアのような

    小さな国はプーチン大統領を恐れており、ロシアが攻めて来たら守り切れない。その後、バルチィック3国、更には

    ポーランドまで手を突っ込もうとしている。どこかの国を攻めるとEUとの全面戦争となるので、全面対決ではなく、

    各国の政府がガタガタになることをやることになると思う。こんな時期にプーチン大統領が北方領土を返すことは

    ない。平和交渉の前提に3000億円のプロジェクトをやるように言ってきている。

   ・シリアの内戦は戦っている人がみんな疲れきるまで続くと思う。アラブの春もアラブの冬になっている。チュニジア

    だけが上手くいった。中東の混乱はまだしばらくは続くと思う。昔、政府が持っていた武器を今は国民が持っている。

   ・中国との関係は少しづつ良くなっている。安全保障はどうにもならない。中国は太平洋まで進んでいくことを続けて

    いる。2030年までに第2列島線まで取り込んでいく考えである。日中の2国間関係は少しづつ良くなっている。これは

    世代交代である。これから中央で中心的な立場になる第6世代は中立的な考えを持っている人達である。自由な考えを

    持っている。その後の世代は反日教育を受けている世代であり、難しくなる恐れが強い。中央委員会の半分くらいが

    第6世代になるので期待している。

    韓国は真逆の状態である。386世代は反日の思想の人であり、次期の大統領候補はすべてこれらの人である。

   ・日本がどう対処したら良いかということだが、日本はこれまでジャパンファーストでやってきた。日本は難民を受け

    入れていない。昨年は26人だった。ODA97年以降は減っており、今では先進28ケ国中19位となっている。防衛も

    世界
102番目でアメリカに頼りきっている。イラクに自衛隊が行ったが、装備は不十分ということで、オランダ軍に

    守って貰った。これを良い機会だから日本が踏み込んでいくべきだと思う。ミクロベースでは経済的に強くなることで

    ある。企業は積極的に出て行って欲しい。日本は安全で綺麗な社会であるが、世界が大きく動いている。技術も進歩して

    いる。今の若い人が仕事につく時には、今はない仕事に
65%がつくことになる。生息する地域が減っている中で生きて

    いく方法だと思う。

   「一言」90分間色々な国際情勢の話を聞いた。分かったところもあるが、分からないところもあった感じがする。

       しかし、全体的な国際情勢は分かった感じがする。最後に言われたように、住み難くなっている世界で

       どのように生きていくか考えることが大事だと思った。