リーダーシップと声の力      キャスター  吉川美代子

  ・最近、本屋に行くとコミュニケーションの本が並んでいる。学者、政治家など色々な方が本を書いている。

   これは話し方には正解がないということだ。コミュニケーションは言葉のキャッチボールのようなものである。

   パパと子供のキャッチボールとスーパー高校生のキャッチボールでは、二人の距離が違っている。子供とパパ

   のキャッチボールでは、子供はどこに投げるか分からないので、パパは右に行ったり、左に走って、ボールを

   を受け取っている。投げている人は、受け取っている人のことを考えて、ボールを投げ、受け取っているかが

   ポイントである。

  ・コミュニケーションでは相手に何かを伝えるために発信している。肺で呼吸する空気はすべて人に同じだが、

   発生する声はみんな違っている。世界で同じ声はない。体格や血縁で似たような声もあるが、声紋を調べると

   違っていることが分かる。地球上で唯一つの声であり、人が生まれると出てきて、死ぬとなくなるものである。

   色々な人がいて、色々な声があるが、自分の声に自信を持って下さい。その声を通して相手に気持ちを伝えて

   下さい。自分の声を録音して聞くとみんな驚く。声には自分の内側から脳に行くのと、外側から脳に行く2つの

   方法がある。そのため、自分の声を録音して聞くと少し軽い感じになる。言葉を使う時には人生の経験が凝縮

   されていると思って欲しい。機械を通して伝えることが増えている現代では、直接声で話をすることが最も相手

   に伝わると思う。このため、世界の首脳も少ししか話が出来なくても、直接話をすることを大事にしている。

  ・自分が伝える時の表情や自分の話を聞いている時の相手の表情が大事である。自分で伝えたいことを自分の言葉

   で言った時に相手に伝わる。日本人に綺麗な富士山と言うと、相手はその富士山のイメージをすることが出来る。

   しかし、地球上には日本を知らない人が多く、日本をまったく知らない人に綺麗な富士山と言っても言葉として

   “ふじさん”を聞くことになるので、日本人のイメージは出来ない。相手のことやその環境を考えて話をすること

    が大切である。

  ・昔は若い女性のアナウンサーはいなかった。吉川さんは入社6年目に報道のニュースを担当することになった。

   半年前に政治経済部門に移り、記者の経験をした。中曽根首相の頃で、国会担当の記者として、国会が紛争した

   ことがあり、各党の委員長が昼夜交渉する様子を徹夜をして対応した。その結果、国対委員長会談という言葉が 

   塊りとして出るようになった。言葉の中味を伝えることが分かったように思う。それまでは一言一句をきちんと

   読むことに努力していたが、中味を理解していないと言葉の重みが違っていると思った。

  ・自分の思っている中味と相手が持っている中味が違っていることがある。警察学校で教鞭に立つ警察官を集めた

   警察大学校で話をしたことがあり、全国から集まっている警察官に高い建物と聞くとかなり違っていることが

   分かった。高い建物が少ない地方の警察官は7階~10階と思っている人が多いが、都内の警察官は30階~40階と

   考えている。高いと聞いた時に大きく違っているのである。自分が言葉を投げる時に、同じセクションの人と

   別のセクションの人では受ける時に違っている。誰に投げる言葉か良く考えて欲しい。昔は飲みに行くお店や

   自分の家の場所を声で知らせることをやっていた。今ではFAXなどから打ち出して見るようになったので、声で

   知らせることはなくなった。相手の立場に立って言うことが少なくなった。アナウンサーの研修で自分の行く順

   を説明させるようにしている。バスを降りたら、行く方向に歩いて2つ目の角を左に曲がるということを説明した

   アナウンサーがいたが、聞いた人はまったく違った地図を書いていたので、調べるとバスを降りる時はバスの横

   を真っすぐ行くことだったので、バスの進む方向と90度違っていたのである。相手の立場に立って話が出来るか

   どうかが大事である。言葉のボールを投げる時は相手が自分の考えの中で理解できるようにすることが大事である。

   話をする時は相手の表情を見ることが大事である。相手の目を見続けることは難しいので、目の下を見たりする

   ことが大事である。相手の目線より上に視線を外すのは、相手は自分に興味を持っていないと感じるので良くない。

  ・雑談力があるということを言われているが、雑談は本題がちゃんと真心で対応できることが前提である。雑談だけ

   で人の心は掴めない。雑談が出来ない人はきちんと挨拶をして、きちんと本題に向き合うことが大事である。相手

   が言っていることをきちんと受け止められることが大事である。詐欺師は直ぐ分かるが、本当の結婚詐欺師は自分

   も騙している人がいるので分かり難い。このような結婚詐欺師に騙されて女性は、他の人は騙されているが、自分

   だけは騙されていないと言う場合が多い。詐欺師もその時々は真剣に考えているが、他に行くとその場に合わせて

   真剣に考えていくようである。言葉使いが上手くなくても、真心があれば相手に伝わる。毒蝮三太夫のコーナー

   の売りはおじいちゃんやおばあちゃん、クソババーなどと言う言葉を連発するが、何処からも抗議がこないので

   番組は40年以上続いている。横田めぐみさんの両親の記者会見で話し方は上手でないが、誰もこのじじとは言う

   人はいない。心からの叫びだから、話し方が通じなくても伝わるのである。真剣さがあれば、自分のエネルギーが

   相手に伝わる。

  ・声は幅広い。声にはあいうえおの5つの発音であるが、声には正しい舌の動きと口の動きがある。“え”という声

   でも暗い気持ちの時と明るい気持ちの時では違っている。声は気持ちによって色々と変わってくるので幅広い。

   心からの声を自然の高さで出すと相手にふっと入ってくる。自分の基本となる声を知っておく子音は大事である。

   自然に声が出ると言う時とは、厳しい仕事をした後で風呂に入った時に出す声や仕事の後にビールを飲んだ時に

   出る声である。人前で話す時、自然に出る声で発声を始めると自分の言いたいことが話せる。自分の名前を言う

   時に最もナチュラルな声が出ることが多い。パワーポイントで発表する時は考えてきたことに目がいく傾向がある。

   自分とパソコンの画面だけの会話になる。大事なことは伝えたいことを伝えるべきである。伝えたいことに優先

   順位をつけて、伝えたいことを話すことである。

   最近、飛行機に乗ることが多いが、機長の挨拶を聞くと安心できる。機長には話し方の訓練はしていないとのこと

   であるが、機長が責任を持ってお客様を運ぶという気持ちが強いので、聞く方が安心できるのだと思う。年末の

   アメ横でも大きな声で売っているが、少し高い声で売っているので聞こえる。普通の声では大きな声を出しても

   聞こえないと思う。声はその状況に合わせて使う必要があると思う。  


  「一言」元アナウンサーの吉川さんの話を聞いたが、声はその人の人生の縮図だということは面白いと思った。

      人の声はその人だけの声で、生まれたら出てきて、死ぬとなくなるということは感心した。リーダー
  
      シップとの関係は良く分からなかったが、お話は伝えたいことを伝えるべきということは大事と感じた。