日本経済とサイバーセキュリティ 東洋大学 竹中教授
・私は小泉政権の時にIT担当大臣をしていた。当時のIT関連ではインターネットの通信速度を如何に速くするかが課題
であった。今では日本のどこに行ってもインターネットの通信速度は非常に速くなり、この問題は解決したと思う。
・最近のダボス会議ではインダストリアル4.0と共に、セキュリティが話題になっている。最近、日本の大手企業のCEO
にセキュリティの対策に聞くとほとんどが担当に任せており、十分に対策出来ているとのことであるが、もっとCEO
自らが積極的に取り組む必要がある問題であると考えている。
・先日、日米の経済担当者が集まって議論したが、セキュラースタグネーションが話題になっている。世界の経済が
長期的な停滞に入っていくのではないかということである。投資と貯蓄を均衡させないといけないが、今は投資が
減っており、この状態が続けば、経済が低迷することになる。そのため、日銀の黒田総裁はマイナス金利を実施して
投資を増やそうとしている。投資を増やすには、インベステメント・オポチュニティを起こす必要がある。そのため、
インダストリアル4.0に挑戦する必要がある。日本の大企業もまだインダストリアル4.0に取り組んでいない状況である。
・大きなことを行うにはパブリックなプラットフォームが必要であるが、今はいらなくなっている。例えば、安心して
旅行をするには、安心して泊まれるように旅館業法が必要だった。エアビー&ビーでは泊まるところをお客様が評価
できるようにしているので、安心して泊まれる宿を提供できることから、旅館業法は不要にしている。ウーバーでは
タクシーのような制度をいらなくしており、今では売上げが7兆円になっている。このように昔からの色々な制度を
必要なくしているが、デジタルなテクノロジーが橋渡し役をしている。
・ネットワークを外部から守るにはつながっているところを守れば良いが、今のネットワークはスマホがつながるように
なっており、守るのが難しい状況である。金融の決済でもフィンテックが出ている。決済では信用の保証が重要である
が、フィンテックではビックデータを分析することで、信用状況を管理できるとしている。今年の成長戦略の一つには
インダストリアル4.0がある。成長戦略の資料は233ページもあるが、フィンテックのところは1ページしかない。この
ようにネットワークの活用が広がっているのにつれて、サイバーセキュリティが問題になっている。
・安倍首相が消費税を上げるのを延期すると言ったのは当然のことである。アベノミックスの成果として、株価が大きく
上がったが。もう一つは完全雇用である。失業率が3.5%以下になると完全雇用になったと言われているが、現在の失業
率は3.2%や3.3%と低くなっている。すべの人は仕事を選ばなければ、働きたい人は仕事があるという状況になっている。
・今年は少し景気が低下しているが、この3年間で日本は30兆円増えている。その内の22兆円が国が吸い上げた。今の税制
では収入が増えると税金が大きく減るような制度になっている。これは大蔵省が言わなかった。このような状況では
減税するべきであるが、増税しなかったということで当然のことである。消費税を上げなかったので、企業では投資を
して欲しいと考えている。特に、サイバーセキュリティ対策の投資をして欲しいと考えている。インダストリアル4.0
までには4、5年かかると思うので、それまでに投資すべきだと思う。防災や震災の投資と同じである。今こそ投資すべき
将来大きな効果を上げると思う。
・アベノミックスの効果の一つはコーポレートガバナンスが改善したことである。これまでは日本では企業の起業する率
が低かった。利益が出なくなった企業が退場しなかったこともその原因である。これが、社外取締役を入れたことで
進んだ。東京証券取引所がコーポレートコードとして社外取締役を2名入れることを要請した。これを実施出来ない場合
はその理由を説明するように求めた。その結果、日本の企業は横並び的に社外取締役を入れた。これにより、コポレート
ガバナンスが大幅に改善出来たと思う。今後は、コーポレートガバナンスの一環としてサイバーセキュリティ対策である
と考えている。
「一言」今日の竹中教授の話は30分程度と非常に短かったことのためか、少し分かり難い感じがした。しかい、税制の問題や
コーポレートガバナンスの話などは印象が強かった。