デジタル革新を支える富士通の役割 富士通 田中社長
1.デジタル革新の時代に
・今回のテーマはドライビングデジタルトランスフォーメーションであり、デジタル革新を力強く進めていくことである。
今、歴史的にも大きな変化が起きている。この時代をどのように進んでいくか、みなさんと共に考え、共に歩んでいきたい
と考えている。人類の歴史の始まりは4万年前に遡る。氷河期の終わりに新人類と言われる私達の祖先が地球上に登場し、
狩猟や採取をベースとした最初の社会を築いてきた。その後、新たな技術を手に入れる度に、社会を発展させてきた。
中でも劇的に変化したのはこれまで3回あったと言われている。第一の変化は農耕や牧畜の始まりによる農耕社会の進化で
ある。これにより定住化が進み、村や町、国家の誕生へとつながった。第二の変化は産業革命で、人類は蒸気機関という
新たな動力源を手に入れた。これにより、生産のあり方、労働のあり方、人々の暮らしが一変することになった。第三の
変化は通信技術と電子計算機の発展である。これにより、人々は飛躍的の多くの情報を手に入れることになり、ビジネス
では生産性が大きく向上した。今、第四の変化が起ころうとしており、それがデジタル革新である。過去にも人類が経験
した大きな変化は生活そのもの、人の考え方そのものを変えてきた。今起きている変化もこれに優るとも劣らない歴史的な
変換点である。今は実感してないかも知れないが、10数年後には人類社会が大きく変わるポイントだったと思われる劇的な
変化が起きている。(ビデオで説明)この第四の変化は一部は既に現実のものになっている。これからの社会、みなさまの
ビジネスが大きく変わっていく。こうした状況の中で本日はみなさまにお伝えしたいことがある。
2.富士通の取り組み
・その前に、富士通が第四の変化に対して既に取り組んでいることがあり、その内容を紹介する。まず最初はAIである。富士通
はメディア処理の分野に大きな強みを持っている。人間でいうと目や耳にあたる部分である。映像は走っている車から町の中
を見て、周りの人や車をAIが捉えて瞬時に認識している例である。人間に代わって色々なものを見て理解する技術は交通安全、
セキュリティ、医療など幅広い分野にブレイクスルーをもたらす可能性がある。富士通が学習の仕組みについて開発した最新
の技術を紹介する。AIではデープラーニングという技術が広く使われている。これは音声や画像の処理を得意としている。
・例えば、様々が画像を多量にインプットすることで、犬とは何か、花とは何か、を区別できるようになる。デープラーニング
は、極端に変化するデータに弱いという弱点もある。私は腕にセンサをつけており、歩いたり、走ったりする以外に、エレ
ベータで一気に30階に上がったりすると、従来の技術ではこのような極端な変化を正しく認識できない。そのため、富士通は
新しいデープラーニング技術を開発して、認識する確率を飛躍的に高めることが出来た。この技術はセンサーデータが飛躍的に
増える時代では大いに役立つと考えている。
・次に重要なセキィリティ分野は、毎日世界のどこかで新しい脅威が見つかっている。新しい攻撃への対処は難しい。これまで
知られていない攻撃でもいち早く見つける技術を開発した。すべての通信ログをAIで分析し、普通と違う、滅多にないという
パターンを探し当て、何か異常がないかと分析することによる方法で、短時間で新しい攻撃を見付けることに成功している。
・テクノロジーを使いやすくする取り組みがロボットである。産業用ロボットでは早くから経済活動を支える存在として活躍して
きた。今後はバーチャル世界とリアル世界をつなぐ役割として、人に近くで人を支える存在として重要性が増している。富士通
でも人に優しいロボットの開発に取り組んでいる。IoTの時代に大量に生み出されるデータは非常に大きな価値を産む宝の山で
ある。実際に活用されているのはごく僅かである。IoTで豊かな社会にするにはデータ活用のボトルネックを解消しなければなら
ない。富士通ではビックデータを活用する基盤を整備した。その一つが地図上に情報を重ねていくことで、データ活用を支援する
プラットホーム:位置情報サービス(STAPIOWL)であり、インドネシアやシンガポールなど世界中で問題解決に貢献している。
・テクノロジーを自然な形で直感的に利用する分野で革新をもたらすのがバーチャルリアリティである。富士通では製造の現場から
教育、医療などで色々なシーンで積極的に展開している。これにより高度な技術を身近に使いやすくすることに取り組んでいる。
・革新的なビジネスを実現するには国境や業界の壁を越えた連携が重要になる。富士通は新しいビジネスの場を作り出すため、数
多くのコミュニティに参加している。例えば、世界中で注目されているモノづくりの自律化では世界的な標準化の動きが加速化
している。富士通はインダストリアルインターネットコンソーシアムに中核メンバーとして参加している。エコシステム作りには
TechShop、MetaArcベンチャーコミュニティ、FIFJなど積極的に仕掛けている。世界のICTのトッププレイと良好な協力関係にある。
拡がりを続けるデジタル社会において一社で出来ることには限りがあるので、パートナーとの連携を一層強化していく考えである。
3.皆さんに伝えたいメッセージ
・これまでの発想を超えるデジタル時代のビジネスは、ゲームのルールそのものが変わることを意味する。当然、みなさまの
ビジネスにも大きな影響が出てくる。しかし、変わっていくものがある中で、変わらないものもある筈である。変わっていく
ものは、ビジネスが進化する中でポイントとなるのは、つながることの価値である。幾つかのビジネスやサービスがつながる
ことで、単純合計をはるかに超えた価値がもたらされる。これはモノだけでなく、みなさんが持っている知恵がつながって
いくことが価値を生み出していくのである。柔軟な発想を持って、組織や業界の壁を越えた連携を実現することが重要になる。
一早くそうしたモデルを生み出せるかどうかが成功に向けたポイントである。富士通はみなさまと共にこの変革を進めていく。
・一方で変わらないものがある。皆様にも、どんなに環境が変わっても大切にしてきたものがあると思う。皆様が本業を通して
目指している価値、例えば、お客様に安心安全をお届けする、命や健康を守る、人々のクロリティ オブ ライフを支える、
これらは決して変わることはない。デジタル革新における大きな環境変化の本質は、皆様が本業で目指していることをより
進化した形にして実現し、大きく発展させるであると考えている。富士通にも変わらず大切にしてきたものがある。それは
常にテクノロジーにチャレンジし、お客様と共に一緒に歩くということである。富士通に入社した時のブランドメッセージ
は“信頼と創造”であった。創造というのは新しいテクノロジーで豊かな未来を創造することであり、信頼というのはお客様と
共に歩んで信頼して頂くということである。その後、“夢をかたちに”、“Everything on the internet”、“shaping tomorrow with you”
など幾つかの言葉を使ってきたが、しかし、テクノロジーへのチャレンジとお客様と共に歩くという二つは変わっていない。
・最近自動運転が注目を集めているが、富士通は20年以上前から自動車会社と一緒に挑戦してきた。富士通は常に時代の最先端の
テクノロジーにお客様と一緒にチャレンジしてきた。これからも富士通は皆様に信頼されるパートナーでありたいと考えており、
そのため、もっと技術を高め、専門性を磨いていく考えである。その上で、富士通では3つのテーマに取り組んでいく。一つ目に
デジタル革新を支える最先端テクノロジーに取り組んでいく。2つ目には、そのテクノロジーを安全で使いやすい形でお届けする。
3つ目にお客様やパートナーとの共創を進め、より変革をもたらすビジネスモデル作りに貢献する。そのため、体制も変えた。
新体制は、テクノロジーとビジネスモデルを追及する研究開発体制、それを事業に展開するビジネスグループ、それを世界各地に
届けるフロント部門、これらの一環性を強化する。フロント部門では専門性の知識を持ったチームの強化を進めている。
数年前からヘルスケア、農業、ものづくり革新といったテーマ毎に、専門チームが地域のアカウント一体となりお客様をサポート
している。今後、より多くの分野に専門体制を拡げていく考えである。
・今はほとんどのお客様が、従来のシステムからデジタル革新を享受できるシステムの移行過程にあると考えている。従来のシス
テムをきちっと運用しながら、デジタル化にも取り組まなければならないことで、多くのお客様が悩んでいる。私達はこれまでも
お客様の課題を理解し、共に解決し、発展することに喜びを見い出してきた。デジタル革新への道においても、お客様と一緒に
考え、高いハ-ドルに直面しても、自ら汗をかき、お客様と乗り越えていくことを約束する。
・デジタル革新は新たなスマート社会をもたらす。それを豊かな未来とするカギを握るのは今を生きる私達一人一人である。富士通
はヒューマンセントリックというビジョンを掲げている。すべてにおいて人を基点に考えようという意味である。人工知能が発展
し、自動化が進む時代だからこそテクノロジーが力強く人をサポートして、より高い創造性や能力を発揮できるようにしなければ
ならないと考えている。私はテクノロジーは必ず人を幸せにすると確信してICT業界で生きてきた。今改めて、その基本に立ち返り、
人を幸せにするテクノロジー・イノベーションに拘っていきたいと考えている。その観点から富士通はお客様、社会から信頼される
会社でありたいと考えている。デジタル革新が実現する豊かな社会を皆様と共に作っていきたい。ぜひ、富士通と一緒に新たな世界
に進んでいきたいと考えている。
「一言」社長が交代して最初の講演を聞いた。デジタル革新に対する考え方を丁寧に説明をきいた。講演では聞き取りにくい
ところがあったので、インターネットで流れている講演を聞きまとめた。結構、時間がかかったが、何となく分かった
感じがする。