アベノミックスとマーケット ニッセイ基礎研究所 矢島チーフエコノミスト
日本経済新聞 滝田編集委員
・マイナス金利は限界を見せないという意味では良かったと思うが、為替から貿易に向かっていたことと国民に
不安を持たせたことになった。アメリカの金利を上げるのを抑えたことの影響があり、金融政策から財政政策
に移ってくると思う。構造改革は競争であり、経営者が経営を考えるようにしないと駄目だと思う。
“製造業にはインバウンド、農業には株式会社、医療にはビックデータ”という課題があり、民間の企業が逃げ
ないようにしないといけない。
・第4次産業革命はドイツ流IoTで、“「政官財」+「学」”で進める必要がある。日本企業の経常利益は2014年には
65兆円である。バブル時の日本企業の経常利益は40兆円であり、リーマンショック直前の経常利益は55兆円で
ある。日本の企業はたくさん稼いでいるが、使わないで抱え込んでいる。学校も経済に役立つ研究をしていない。
今あるお金を如何使っていくのかがポイントになる。トヨタが自動運転でシリコンバレーに行くのかというと、国内
に研究するところがないからである。京大の山中先生が取り組んでいるiPS細胞の研究を如何に事業に結び付け
稼げるようにしていくかの取り組みが大事である。
・世界経済のリスクとして、中国の問題や石油の価格低下、米国の利上げなどがあるが、少し落ち着いてきた感じで
ある。これからは各国が政策を打てるかが大事になる。今の課題は“政治の分断”であり、イギリスのEU離脱や
欧州の難民問題、トランプ現象などが出てきているが、各国が政治的に手をつなぐ姿が見えない。米国のトランプ
氏を押している力は大きくなっている。安倍首相の人気が頭打ちになっている感じがあり、サプライズを起す必要が
ある。このような時には、サプライズの一つとしてロシアとの領土問題などが考えらえる。
・今後のマーケットを考えると、昨年は為替が動かなかったが、今年は動くと思う。政治的に混迷する中国の問題では
良いことはない。円高の圧力が強い一年になると思う。世界がリスクを取らない方向に行くと円高・ドル安ではないか
と思う。これまでの日経平均株価とアメリカのダウを比較すると、日経平均をその時のレイトでドル換算するとアメリカ
のダウと相関が強いことが分かる。そのように考えると、1ドル120円でダウが17Kドルなら日経平均は18360円になり、
ダウが15Kドルなら16200円になる。1ドルが105円で、ダウが17Kドルなら16065円に、15Kドルなら14175円になる。
「一言」経済の専門家2名が今後のマーケットの動きを説明していた。二人共、国際的に政治が不安定になる感じで、
円高ドル安に進むのではないかということだった。そのため、株は年末にかけて下がっていく予想だった。
日経平均をその時のレイトでドルに換算するとダウと非常に一致しているということは面白かった。