デジタル技術を活用した社会イノベーション  日立製作所 東原社長

 1.社会の変化とデジタル化の進展

    ・2030年に世界の人口は85億人となり、51億人が都市に住むようになる。65歳以上の高齢者が人口の20%を超える国が

     現在のドイツと日本の2ケ国から35ケ国に増える。人・もの・金がグローバルに展開されるので、セキュリティの問題が

     クローズアップされることになる。これら、現在、世界が直面する課題は未来を形づくる潮流と考えることが出来る。

    ・Uberが急速に普及しており、宿泊予約サイトのAirbnbや販売と流通をつなぐ新しい形態のオムニチャネル、新しい金融

     サービスを生み出すFintechなど、社会全体にデジタル化が進行している。お客さまもものの提供からサービルに変わって

     きている。ものを専有することからシェアするように考え方が変わってきている。

    ・欧州では、インダストリー4.0という取り組みで、産業構造が変わってきている。日本の取り組みでは、先日政府が発表した

     第5期科学技術基本計画では科学技術イノベーション政策を強力に推進していく計画であり、世界に先駆けて、サイバー

     空間と現実空間が高度に融合する超スマート社会を未来の姿とし、その実現に向けた一連の取り組みであるSociety5.0

     の推進が打ち出されている。これは企業だけでなく、一人一人がこの変革に参加することになると思う。このため、11

     テーマに取り組むことにより、解決していくことになる。社会全体として最適に向けてつなげていくことであり、サイバー空間

     と現実空間とつなぐオープンイノベーションが大きなカギになる。

    ・具体的には、フィジカル空間にあるあらゆるものをセンサーでデータを収集し、サイバー空間で分析して、フィジカル空間に

     フィードバックすることになる。大量のデータの流通が可能となった。高度なモデリング技術が出ている。センサーも精度の

     高いデータを集めることが出来た。しかし、オープンイノベーションは1社だけでは無理である。産学官が地域の枠や壁を

     乗り越えて取り組んでいくことが必要である。あるべき社会像を共有して取り組んでいく必要がある。IoT推進コンソーシアム

     では2400社が参加している。電子情報技術産業協会(JEITA)は、規制・制度の改革、税制改正への要望に取り組んでいる。

 2.日立が取り組む社会イノベーション事業

    ・日立では、社会イノベーション事業を進めるために、情報をより高度に活用し、何を目指し、取り組んでいくのかをまとめた。

     電力エネルギー、産業流通水、都市開発・アーバン、金融・公共・ヘルスケアの4分野に注力していく。これまでは、OT×IT

     ×プロダクトシステムでイノバーションを提唱してきた。制御・運用、把握分析アルゴリズムに取り組んできた。

    ・大事なことはお客様と一緒に課題を見つけることであり、問題を共有することがポイントで、見える化し、ビジネスモデルを

     デザインし、検証シュミレーションにより具現化することを、日立が提供するフレームワークで実現するようにした。お客様の

     抱えている課題は現場に行くと上司と担当者の間に考えていることが違っていることが多い。課題に関連する業務を止める

     と上手くいく場合もあった。

    ・EXアプローチでは、デザイナーなど色々な人を入れていくことで幅広く検討することが出来る5年後、10年後から見て行くと、

     ビジョンデザインで言っている課題をビジネスになるか検証する必要がある。事業価値の検証では鉄道ソリューションの例が

     ある。実装するには、プラットホームが必要になる。IoTのプラットホームとなるLumadaを日立は作った。オープンブランドで

     提供している。Lumadaは適用性・高信頼性を実現している。

    ・650万人が住んでいる街に地下鉄をひいて混雑を解消したいと考える場合、最初に駅を決め、料金を決め、シュミレーション

     ツールで分析すると、ビジネスの実現性が分かる。製造現場のスマート化、無人搬送車と人との協調に取り組んでいる。

     これからの時代はつなぐということが大事になってくる。サプライチェーンとEコマースによるバリューチェーンなどがある。

     柏の葉スマートシティは環境共生、健康長寿、新産業創生の最適化を目指しており、日立はエネルギー分野に参加している。

     住民と三井不動産、日立が手を組んで進めているのが特徴である。マライ島のバーチャルパワープラントでは、日本と米国

     が協力して、再生可能なエネルギーの利用から出てくる課題に取り組んでいる。電力需要に対して、大量の導入された再生

     可能エネルギーの発電予測を加え、高効率の利用を可能としている。電気自動車のバッテリーを蓄電に利用する方法により、

     安定供給も実現している。このプロジェクトは住民が参加しているので上手くいっている。

    ・日立は、“つながる”から“広がる”ことにより、“快適に暮らせる社会へ”を目指していく。


 「一言」CEATECのキーノートスピーチとして、日立製作所の東原社長の講演を聞いた。お話の内容が多岐にわたるためか、

      なかなか理解し難い部分もあったので、出来るだけ聞いた話を中心にまとめることにした。最近はIoTやAiなどデジタル

      技術が社会に進展していることから、社会イノベーションを実現するため、産官学が連携して、取り組む必要があること、

      一人一人が参加して進めることが大事だということだと思った。

      また、日立の中期経営計画発表の時の東原社長の説明を
以下に参考として引用した。

(参考)・日立の特徴は制御と運用によるOT(オペレーショナル・テクノロジー)と、IT(インフォメーションテクノロジー)の2つを

     持つこと。そしてプロダクト、システムを提供できる会社であること。こうした強みを持つ会社は、グローバルにみても、

     それほどあるわけではない。これまで日立が取り組んできた社会イノベーション事業は、個別最適に向けてITを活用

     することでより高い付加価値を提供することであった。今後はデジタル技術によってこれらをつないで、全体の最適化

     を目指すことになる。