オラクルクラウド戦略 ラリー・エリソン会長
1.クラウドの人事管理アプリケーションの開発
・オラクルではクラウド用の人事管理アプリケーションを作った。クラウドアプリケーションは今までのアプリケーションとは大きく違っている。
オラクルでは10年前からクラウドの人事管理アプリケーションを開発してきた。クラウドの人事管理アプリケーションは、既存の人事管理
アプリケーションをアマゾンに移行するものとは全く違うものになると思う。これまでの人事管理は従業員を管理するものであるが、今後
の日本では、人材不足に対応することが重要になるため、これに対応する必要がある。人事管理のもう一つはお客様対応である。
・21世紀の人事管理システムの要件は、優れた人材の発掘とSNSと同じような使い勝手である。大卒などの新規採用でも、中途採用でも、
人材不足の日本では、優秀な人材の発掘は重要である。最近ではフェースブックやツィッターが出てきたので、10年前とは違うと思う。
古いアプリケーションはSNSがなかったので、的確には対応していない。オラクルの人事管理アプリケーションは全従業員が使うことが
出来る。新しいアプリケーションでは説明書はない。フェースブックやツィッターのようなものであるので、訓練をしなくても使えるようになる。
・これまではトランザクションシステムがあり、データウェハウスが別にあった。しかし、クラウドではデータウェアハウスとトランザクションが
統合されている。そのため、人事がエンジニアを採用したいと思う場合、予算を越えているというアラートが出てくる。必要な時にアクション
を起こす前にアラートが出てくるようになる。
2.クラウドアプリケーションの特徴
・モダンアプリケーションは運用もトレーニングも安くなる。今のコンシューマになじみのあるシステムだからトレーニングが安くなる。すべて
をクラウドプロダクターで行うので、センタもいらないし、運用もいらない。運用はクラウドサービスプロダクターが行うので、お客様は人事
管理のみに専念できる。そのため、3ケ月もあれば人事管理アプリケーションが出来、使えるようになる。
・ソフトを開発したり、センタを運用することに特化していくのが、われわれの仕事である。私たちはITのプロでなければならない。クラウドは
安くなければならないし、信頼性を上げていかないといけない。自動車メーカであれば、クリーンな自動車を作ることに専念できる。
・従業員はソーシャルネットワークを使って採用する。社員のコミュニケーションを使って採用すれば、次の年は採用した人がネットワークを
使って採用するようになる。日本においては、人材を獲得することが難しくなっているので、人脈を活用することが重要になる。
・我々は人材育成にお金をかけている。オンライン大学のようなものである。10年前の人事管理システムはこの機能を持っていなかった。
3.クラウドの進展
・クラウドが必ず勝つと信じている。ユーザが自社のコンピュータセンタを運用する理由があるのか疑問である。コンピューティング機能
は水道や電気のように他のインフラと同じようになる。ネットワークコンピュータの構造はお客様から見られなくなっていく。
・クラウドにより、オラクルも以前より小さな企業でもお客様にできるようになってきた。コンピューティングが安くなっている。近代のアプリ
ケーションの方が機能が多く、安くなっている。オラクルでは、19データセンタで200国以上でサービスしており、SaaSではNo.2になった。
6200万ユーザがアクセスしていて、毎日230億以上のトランザクションを処理している。
・オラクルの新しいアプリケーションは100通リ以上があり、SaaSでNo.2、マーティングはNo.1である。10年前からアプリケーションを開発
してきた。市場に参入するのには8年間かかった。オンプレミスから大きく変わった。これまではSAPやIBMと競合していたが、今では
SalesforceやGoogleと競合している。クラウドは大きな変化を起こしている。クラウドの下部のインフラストラクチャはオープンソースを
ベースとしているが、昔は、インフラでは、IBMと競合していたが、今ではアマゾンと競合している。
・オラクルのHCMクラウドは急成長している。より早く、より安く提供しており、1年間に2倍になっている。クラウドビジネスは右肩上がりで
伸びている。ソーシャルネットワークの統合によって、コラボレーションを促進する。使い慣れたフェースブックの形式により、すぐに習得
出来るコンシューマなユーザインターフェースを実現している。統一されたユーザエクスペリエンスにより、人材の全サイクルの管理と
発掘、育成、維持を行うことができるようになった。
4.各企業の社長との質疑
(富士通山本社長) オラクルとして、クラウドのインフラ部分の取り組みはどのように考えているのか?
(ラリー) インフラ部分はコストが問題で、安くて信頼性を高くすることが重要である。クラウドでは、どのインフラを使っているか聞かれる
ことが少なくなってきた。このため、自由度が上がるので、インフラ部分では大きなイノベーションが出来るようになる。
(NEC遠藤社長) IoTのインフラはどのようになっていくと考えているのか?非構造化データの急増に対応する方法は?
(ラリー) Javaを推進して安くしている。各センサーにJavaでアプリケーションを作っていく。IoTではセキュリティが重要である。
ハデュープで非構造化データを処理し、リアルタイムはオラクルDBで処理することで、すべてのデータが処理できるようにする。
「感想」オラクルのラリー会長からはクラウドの人事管理アプリケーションについての考え方を説明されたが、質疑を含めるとクラウドが
コンピューティングが電気などのようなインフラになっていくということも説明されていた。特に、印象が残ったのは、富士通の
山本社長質問に答えて、クラウドがインフラになれば、お客様からはクラウドの内容が見えなくなるため、大胆な改善が出来る
ということだった。