協創による価値創造:社会イノベーション 日立製作所 中西会長
・日立が社会ノベーションを進めており、本展示会が日立が取り組む方向を示す中心となる展示会である。日立が社会イノベーション
に取り組んで、6年目になる。日立は社会イノベーション事業を進化させているが、やればやる程、大きな課題を抱えた事業である。
今日のテーマは、これを進めている上で一番大事な皆さんとの会話、相互理解を深めていくための色々なツールや道具立てに
ついて、立入って説明させて頂きたいと考えている。社会イノベーションの協創についてが 大きなテーマになる。
・社会イノベーションを進めていく時には、キーワードがある。一つは、Chanceであり、色々な意味がある。発展途上国では安全安心
の社会を作っていくということがchanceになる。日立にとっては、課題解決を進めていくことがビジネスとなり、大きな事業機会となる。
それを進めていく一つのキーワードがDataである。すべてがデジタル化されている。その中から新たな変化を創り出していく。変化を
創り出していくにはopenだということを中心に進めている。Openが最も難しい課題である。
・Chanceについて考える。世界のメガトレンドを見て、5年、10年、もう少し先の、20年、30年先の時代の流れを想定すると、エネルギー
が大きく変わっていく。都市化は半分以上の人が都市に住むようになるとか、交通についても幅広い変化が出ていく。それを変えて
いくポイントが、デジタイゼーション、すなわち、デジタル化の波で、それを使うことによって、よりスマートに賢く、色々な変化を創って
いこうという動きが出てくる。そのようなことをやっていくと、医療という意味よりも、生活自体をヘルシーに、健康を中心とする社会に
なっていく。そのような考え方による社会課題に対して、未来をどう創っていくのか、皆さんと一緒に考えていくのが、新たなイノベー
ションになると思う。世界中がそのような取り組みをしている。例えば、欧州では、Industrie4.0とか、OECDが中心になるHorizon2020
とか、アメリカでも,Industrial Internetであるというように、デジタル化によって社会の仕組みを大きく変えていこうという動きがある。
中国も一帯一路とか、中国製造2025とか、internet+とか、インフラをアジアに投資していくアジア投資銀行の設立というように、国の
成り立ちを大きく変えていこうとしていると言える。
・日本でも大きな動きに拍車がかかってきたと言える。日本政府の新たな科学技術投資でも、より社会に密着していく形で展開しく動き
の典型的なものが、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)がある。単なる科学技術の開発だけでなく、それを社会の中に仕掛け
として作っていこうという考えで、昨年からスタートしている。エネルギーとかインフラの老朽化したものをマネージメント出来る仕組み
とか、一番話題性のある自動車の走行のSIPがスタートしている。更に、来年から始まる第5期の科学技術基本計画の中心の課題は、
新たな社会の課題を解決していく方向を、デジタル化の大きな波の中で展開していく考えである。
・先週、民間の団体であるIoT推進コンソーシアムがスタートした。経済産業省と総務省が民間と力を合わせて、新たなインタネットが
切り開く産業とか社会構造の変化に取り組んでいく予定である。例えば、自動車の自動走行システムは、単なる自動化ではなく、
道路を含めた社会の仕組みを作り上げていく取り組みである。また、IoTの時代になり、すべてのものがインターネットにつながって
くる世の中では新たなサイバーセキュリティの課題が浮かび上がってくるという認識で、一企業が取り組むのではなく、政府や産業界
やアカデ二ズムのすべてが力を合わせて対応していくような、社会の仕組みづくりであるという捉え方のプロジェクトである。これらは
Industrial4.0が製造業に着目したIoTの世界であり、Fintechが金融界の取り組みがあるが、これらの個々のものを全体の中でデジタル
化のイノベーション力を徹底して活用していく試みであると考えている。これがChanceである。
・次はDataである。Dataというのは最初にあるのがデータであるが、データだけでは使えない。データからある情報:インフォメーション
を引っ張り出し、それを加工し上手く使えるようにして、知識:ナレージまで持っていく。そのナレージを使って新たな価値を創造して
いくというプロセスを皆さまと一緒に作り上げていくことが非常に大事なことだと思っている。それ一つ一つの課題に課題が出てくる。
例えば、データだと個人データの保護をどうするのかというようなことが出てくるが、そのようなことも全部を含めて大きな課題であり、
大きなチャレンジであると考えている。
・次がchengeである。何が変化していくのか。メガトレンドを考えてみると、Industrial4.0が取り上げている一番は、大量生産で大量消費
に応える製造業ではなく、マスカスタマイゼーションという本当に自分に合ったものを作って貰うという機能を追求していくことである。
IT産業でも、システムインテグレーションとしてお客様と個別のスペックを積み上げて作り上げていくことも大事だが、ソフトウェア アズ
ア サービスSaasのというようにすぐ使える形で提供していくようになってくる。企業の在り方も独占していくと言うより、みんなでシェア
しようという方向にいく。ビジネスの形そのものが、業界に境目がなくなることも含めて、常にパートナーと連携を取りながら進めていく
というような仕事の組み立て方になっていく。それがOpenというところにつながってくる。オープンを本当に追及していくと色々な工夫が
いる。色々なメガトレンドということは、一つのことを解決したら、すべてを解決したことにならないことでもある。マニファクチャリングを
やる立場からでも、色々なプロダクトだけでなく、サービスのことも一緒に考えたり、他の業界との連携も必要になる。色々なビジネス
の組み立て方をオープンにしていくことで、始めてValueに到達できる。ここが結構大変難しいことである。このようにchanceからOpen
までのな色々なプロセスをしっかり組み合立てていくことが日立の考える社会イノベーション事業である。
・日立は、エネルギー、街そのものをどう創っていくかという課題、交通、ヘルスケア、変わっていくロジスティクス、水というように色々な
ところが変わっていくところで、ITを使った知恵を盛り込んで、より良いソリューションつくりを展開していく考えである。特に、日立は
機械メーカでもあるので、単にITだけでなく、オペレーションテクノロジーOTという,制御とか運用も一緒にした、IoTという時代をしっかり
捉えた形での新たな価値を提供していきたい。プロダクトを届けるのではなく、それにプラスして、システム化して、サービスという形で
届けるのが大きな事業機会になると思っている。
・それを実際にやろうとすると幾つもやることが出てくる。一つの事例だが、あることを解決しようとすると、多くのステークホルダーがいる
ので、課題を共有することとそれへのアプローチを見えるようにすることが大事になる。見える化にはITは便利である。シュミレーション
など色々なツールが出来る。一番ポイントになるのが、ビジネスモデルのデザインである。誰がどういうベネフィットやバリューを得るの
かが分かる。そうなると、金の出し方や労力の使い方が決まる。それを検証、シュミレーションして具体化するサイクルを回していくこと
が出来る。見える化、ビジネスモデルのデザイン、検証シュミレーションが高度に手軽に出来ることがポイントになる。日立は共生自立
分散というコンセプトを提案している。色々なステークホルダーの全体を補完するコンセプトを如何に実現していくかがキーポイントだ。
・協創の仕掛けについて説明する。出発点が難しい。最初は、信頼関係を作る、問題点を理解し合うことであり、出来ないと進まなくなる。
協創のフレームワークを作るために、情報をどう扱うか、インフラの全体像の見える化をプラットフォーム化する努力をしている。課題の
他に、ビジョンの共有化が出来ると、お客様との対話が一遍に花開き、それをつないで分析し、一緒に考えていくプロセスが重要になる。
パートナーとのイノベーションのベネフィットの確かさを確認をすることも大事である。早めに確認できることが一緒に進める前提になる。
・課題とビジョンを共有する3つのツールを紹介する。一つはEXアプローチと言っている。多くのステークホルダーが一緒に集まって議論
することが大事であると考えており、皆さん方の個々の見方を作る手法である。実例を紹介する。柏の葉スマートシティである。柏の葉
には東大、千葉大、三井不動産が入っている。三井不動産は30年プロジェクトと考えており、住めば住むほど価値ある居住を提供する
考えである。その考えをみんなが共有することで上手くいったと思う。違ったものの見方で、そのまま議論が出来ると言うことである。
・サイバーPOCがある。中国の蘇州の事例である。中国が発展していく途中ではロジスティクスが大きな課題になる。一つの企業と日立
が取り組んでも上手くいかないと思うので、地域全体で考える必要があると言うことで提案した例である。渋滞回避と渋滞遅延の提案
を明確にし、実現イメージを検証した。複数の基地と共同配送することで、コストも遅配送延も改善出来た。たくさんの企業を集めていく
ことのメリットを説明していく重要なツールであると考えている。
・サイバーPOCの更に戦略的な次に手を考えていくと、ビックデータとそのアナリテックスの展開が色々なところで出てくる。その一つの
ポイントは、あることとあることの因果関係を全部詳細に説明しなくても、大きなデータを集めて解析していくと、相互にあることが起こる
と必ずこのようなことが起こると言う事実としての実績が見えてくる。改めて何故だろうと考えるような色々な分析する、つなぎ合わせて
全体像を捉えるという大きなツールになっていく。データを集める仕掛け、貯める、その上で一次利用、二次利用と展開していくような
全体をサポートできるようにした。ペンタホ社を買収して、社会に役立てるような様々な展開をしていきたいと考えている。
・更に、判断して提案するには、データをアナライズするだけでなく、その次には様々なAIのテクノロジを使って展開していくことになる。
ビックデータからまちづくり、交通の問題、製造でのマスカタゼーションという販売と製造のプロセスでの情報共有の仕掛けづくりなど、
様々な展開が図れる。何よりデジタルインフォーメーションを進めるためには、ITのインフラのスピードアップとコスト削減が効果がある。
AIがもっともっと広がる観点で様々なパートナーと共有しながら膨らましていくというトライアルをやっている。これを活用して、社会課題
の解決やお客様の企業活動の戦略性の向上や様々な展開にお役に立ちたいと思っている。このようなことをやっていくには、色々な
ことをオープンにやっていくことが大きなポイントになってくると思っている。
・IoTの時代になり、色々な機械や設備がインターネットにつながってくるので、これに対するサイバーやフィジカルも含めてセキュリティが
どうなってくるか、その仕掛けが重要になってくる。サイバーセキュリティに対して、情報漏えいだけでなく、IoT時代になると制御機器に
対するインターネットからのアクセスにより、インフラストラクチャの制御がおかしくなると社会や国の基幹が揺らぐことになる危惧を持って
いる。フィジカルな意味でも人のアイデンティファイも含めたトータルシステムとして考えていくことが大事になると思い、皆さんと危機意識
を共有しながら、安全安心の世界を作るということに邁進していく。
・色々な意味で展開を図っていくと、パートナー様というかお客様と色々なビジネスの形が出てくる。一つの例はレミックスウォーターがある。
海水を淡水にするという技術で真面に行うと非常に大きな電力が必要になるが、下水と混ぜ合わせてやると省エネが実現できるということ
であるが、これを行うには色々なステークホルダーと合意しないと上手くいかない。下水とか工業用水とは上水は監督官庁が違っているが、
水全体をトータルで考えるということで価値の共有、課題の共有をするということで、より省エネで合理的な水システムを作ることが可能と
なった。単に技術の問題ではなく、協創、コラボレーションクリエイティブということがないと上手くいかない。このようなニーズは日本だけで
なく、南アフリカのダーバン市で実証実験をやっている。日本の技術をそのまま持っていくと言うより、このようなコラボレイティブワークの
やり方を含めて持っていかないと、真に社会に貢献できるインフラにはなっていかないと考えている。
・もう一つの例は、ハワイのマウイ島でのバーチャルパワープラントである。マウイ島では自然エネルギーを進めていたが、不安定で
バッテリーが必要になった。電気自動車のバッテリーを活用することで、自然エネルギーの比率を上げている。電気自動車を一つの
発電所として、どこからでも使えるものにしている。VPPのソフトウェアをクラウドでどこでも使えるようにしており、地域のコミュニティ
の中で合意が出来るようになり、地域の仮想的な発電所として使えるようにしていきたいと考えている。これも多くのステークホルダー
が合意をしないと上手くいかない。このようなことがソーシャルイノベーションを具体的に展開していく難しさであり、大きな価値である
と考えている。ハワイ島では全エネルギーの40%を自然エネルギーにしようと決めている。
・もう一つの例は英国の鉄道である。英国は国営の鉄道を民営化し、更に工夫を加えてPPPといいスキームを作っている。政府は大きな
仕掛け、都市計画などをコミットメントする。それに伴って、トレインオペレータが輸送提供する。トレインオペレータに対して運行ダイヤ
に適合する列車を提供する形態になっている。そのため、列車を届けるのではなく、直ぐに使えるようにすることで、サービスの提供に
なっていく。そのため、10数か所の保守部門を作っている。列車のアベイラビリティを上げていくための取り組みはメーカがやっている。
最初は輸出であるが、9月には英国で作るようになる。申し上げたいのは、日立が社会の仕組み作りに取り組んでいるということである。
・まだこれからのトライアルであるが、地方創生で金をバラまくのは違うと思う。地方でイニシアティブをとるのは、自治体とその地域の大学
の知恵が集まって、地域の住み易さや産業の起こし易さということに着目した施策を打っていくことが大事になる。何を変えていくのか、
変えていくヒントをデータから持っていくことが大事だろうという議論が出てきた。NTTと方向性の合意が出来て、最初に福岡市の行政
の根本的な改善とか、住民サービスのボトルネックについて取り組んでおり、議論が出来る場の設定が始まった状況である。漠然とした
地方創生の課題に対し、本物にしていくにはどのような知恵がいるかという大きな挑戦だと思う。日立は意味のあることだと考えている。
地方で一番得意なところは農業とか観光というところであると思うが、これらの豊かなサービス性を展開していく手伝いを真剣にやりたい
と思う。NTTの得意はデータを集めたり、それを届けることであるので、一緒にやろうということになった。
・ソーシャルイノベーションビジネスを6年間やってきて、このような取り組みを続けていくためには課題がたくさんあると思っている。一番
大きな課題は日立の中にある。日立は工場でモノづくりで育ってきているので、モノが売りたくてしょうがない。モノを売る前に、お客様の
ニーズが何か。何をやりたいからこういうものがいるということを考えたい。一緒に共有して、その次のステップをやっていくためには、
カルチャを変えていく必要があり、大きなチャレンジであると考えている。
・外に向かっても進めていく仕掛けをしたいということで、そのキーワードは2つ、Open InnovationとCollaborative Creationである。
一つはオープンイノベーションである。イノベーティブであるということは、自分一人が机上でイノベーションするということは難しく、多く
の場合、ステークホルダーが集まって、フランクにディスカッションする中で、色々な新たな発想が出てくる。その中から、コラボレイティブ
クリエイションという共に次のステップを創っていこうというようなことが始まっていくと思っている。この2つが重要は事業の方向性である。
色々な社会課題があるが、それを解消していく先は見えてこないため、しっかり創っていくことと出来るだけ大きな範囲で見ていくことが
大事だと思う。
・デジタイゼーションというキーワドの中から、社会課題を解決していくのが、我々のミッションであり、事業ビジョンであると説明してきた。
そういうことをするのに、こういう技術が良いとか、製品が良いというアプローチではなく、まず、一緒に課題を考え、共有し、出来たら
次のステップのビジョンまで一緒に話をする中で、次のビジネスチャンスを作っていくというアプローチが、日立の社会イノベーション事業
だと考えている。ソーシャルイノベーションを6年間やってきて、かなり一般用語になってきたと思う。これが社会の進歩に役立つように
していきたい。
「一言」日立の会長のお話を聞いた。非常に盛りだくさんの内容で、面白いと思った。色々と聞きなれない言葉も出てきたので、
インターネットで録画したビデオを流していたので、それで確認しながら、まとめたので非常に長くなった。世の中を変える
ためには、色々な人が話をし、問題を共有すると共に、次の方向に対する意識を合わすことが大事だと思うが、なかなか
上手くいかないのが現状で、説明されたツールも一つの方法ではないかと思った。