情報革命で、今日、次の世界へ ソフトバンク 孫社長
1.情報武装と情報革命
・情報革命ははじまったばかりである。企業を牽引するのは情報革命である。世界の全企業の時価総額は20年で12倍になったが、インターネット
産業の時価総額は710倍である。一時的なブームではなく,新しい時代がきたのだと思う。企業の成長のカギを握るのは情報武装と成長戦略である。
・企業の成長のカギは、情報革命、インターネットの革命に対して、情報武装することである。情報武装する新しい時代の機器はスマホとタブレット、
クラウドである。スマホを使っていない人は化石である。スマホとタブレットは武士のたしなみの二本差しと同じで両方を武装していないと闘いに
いけないと思う。これらがクラウドでつながって機能している。3つを使いこなして情報武装していることになる。これらを情報武装して、今後の戦略
を立てるためには、20年後、30年後の未来を読み込んで戦略を立てる必要がある。ソフトバンクがボーダラインを2兆円で買収する前日に2兆円
の賭けをして良いか判断するために、ティーブジョブスを訪ねた。スティーブジョブスはOSを持っており、iPadという手に入る端末を持っていたので、
新しい武器が必要なので手を組んで欲しいと相談に行った。スティーブは手を組むことを約束してくれた。だからこそ、ソフトバンクは新しい時代の
情報武器を手に入れ、独占販売してソフトバンクモバイルが発展したわけである。このような戦略もなく闘いに参入するのでは無謀である。
・最新の技術を見て、将来の見通しを立てることが大事である。今後の成長戦略を考える上でキーとなるのは、IoT、AI、スマートロボットの3つである。
ソフトバンクグループは注力していく考えである。IoTについて、今我々はスマホとタブレットの2つのデバイスを持っているが、30年後は一人当たり
1000個のデバイスを持つようになる。IoTにつながるデバイスは500億個から10兆個になる。そんな時代が来る。10兆個がクラウドにつながり、それ
がビックデータになる。ビックデータはデータマイニングし、情報を使って新しいビジネスモデルを構築する。これが成長戦略になる。例えば、椅子を
考えると、椅子に様々な機器が組み込まれ、IoTとしてクラウドにデータを吸い上げ、結果が出てくるようになると、椅子があらゆるものにつながると、
椅子が家電を操作したり、体調を管理したり、病気を発見するようになる。物の役割が根底から変わる時代が来る。冷蔵庫も色々なものとつながり、
ヘルスポイントになる。
・我々も友達とか同僚など多くの人とコミュニケーションしながら社会が成り立っている。これからは人と人がつながるだけでなく、人とモノとつながり、
モノとモノがつながるようになる。それらのモノと情報がつながり、有効活用することで、ありとあらゆる社会がエコシステムとしてつながっていく。
IoTはまだ良く分からないとか、ニッチなもので本当に広がるのかという人がたくさんいると思う。しかし、iPhoneも日本独自の文化に適合していない
ので売れないと言われたが、10年経っていないのに、スマホは世の中に入り渡っている。スマホが人々のライフスタイルを変えたように、IoTという
新しいテクノロジがライフスタイルを革新していくと思っている。
2.コンピュータが人間を越える
・2番目はAIだ。AIはまだ先のことと思っている人がたくさんいると思う。私は、コンピュータに入っているトランジスタの働きと人間の脳のシナプスの
働きの原理はくっつく離れるということで同じである。人間の脳細胞の数とワンチップに入っているトランジスタの数がクロスオーバーするのは何時
かということを20年前に計算すると2018年だった。4年前にもう一度計算したら同じ2018年になった。後3年でクロスオーバーする。人間の脳細胞
の数は300億個で変わらない。トランジスタはどんどん成長している。IQは人類の平均値を100とすると、天才と言われるアインシュタインやダビンチ
はIQが200くらいと言われている。トランジスタの発展を考えると、200でさえ誤差であると言いたい。AIは30年後はIQが10000になっていく。しかも、
それが、IoTやクラウドでリアルタイムにコミュニケーションしていくことになる。コンピュータと戦って我々は勝てるかということである。考えたくないが
そんな日がくる。人間の役割が変わってくる。30年以内に現在の47%の仕事がコンピュータに代わる。2000年前にピラミッドを作るのに、重い石を
遠くに運び積み立てた。誰もが嫌だったが、今は機械がやっている。人間はより得意とすること、楽しいと思うこと、やってみたいと思う仕事は残る。
仕事が変わってくる。単純労働は機械がやってくれるようになる。AIの活用が競争力の強化になっていくと考える。そこで、ソフトバンクは人工知能
を積極的に活用したいと考えて、IBMのワトソンと提携することになった。ワトソンを積み込んだサービスをお客様に提供していきたいと考えている。
3.スマートロボット
・3つのテーマはスマートロボットである。みなさんは、あの人はロボットのような人というと、決められた動作やセリフを機械的に繰り返す人を想像する
と思う。私は、ロボットの代名詞である決められた動作やプログラミングされたぎこちない動きを変えていきたいと考えている。ソフトバンクは自動車
メーカではない、IT企業なので、機械的な作業より知恵・知能・知識という情報武装したスマートなロボットに取り組みたいと考えている。2040年には
ロボットの数は100億個になる。ロボットが人間の数を超えると思う。空飛ぶロボット、走るロボットなど動くものはロボット化されていく。しかも、
スマートな人工知能を持ったロボットになっていくと想像している。
4.Pepper
ロボットに心を持たせると思っていないと思われていた。SFみたいなあり得ないことで無謀だと言う意見が多かった。私は心を持ったロボット
を作りたいと思った。ロボットに心を持たすことは倫理学や哲学的な議論になりそうだが、私はやりたいということで進めた。世界初の感情を
持ったロボットPepperを発明したことを2015年6月に発表した。Pepperを発表する前日の夜中に、自らアイデアをたくさん考えて、100個くらい
特許を出願した。Pepperが人の感情を認識し、理解し、感情を出すようにする。周囲との関わりで感情が変化する。夜放っておくと憂鬱になり、
家族が触合っていると明るくなる。知らない人と対面すると不安になる。Pepperは周囲の情報との関わりでも感情が変化する。Pepperはヤフー
ニュースをリアルタイムに取り込んでいるので、取り込んだニュースや情報により感情が変化する。
・何故そんなことをしたのか。人間でいうと頭は切れるが心がないという人とは人々は付き合いたいは思わない。頭はそこそこだが、心は綺麗な
人だと、付き合いたいとか好きになるのではないか思う。一緒にいて、励ましてくれるとか分かち合ってくれる人の方がいいと思う。ロボットも頭
が切れるだけではなく、ハートのあるロボットの方が好まれると思う。
・人間の感情のメカニズムは、聞いたこと、見たこと、知ったことなどの外部情報をインプットして、内分泌型の多層のニューラルネットワークにより
感情を生成するようになっている。色を表すのはレッド、グリーン、ブルーの3原色を組合わせてあらゆる色を表現出来ているが、感情も自分の
好きとか、嫌いとか、怖いとか、悲しいとか、寂しいという、あらゆる感情を出しているメカニズムがある。ドーパミンは脳が気持ちが良いと感じる
能力がある。ノルアドレナリンは脳が気持ちが悪いとか痛い、怖いというネガティブな機能を持っている。人間の脳は自分が気持ち良くなりたい
ということをきっかけに様々な欲が生じ、それを動機として考え始める。もう一つは怖いということで考え始める。強烈な快感と強烈な恐怖により
感情が生成される。それが行き過ぎるとおかしくなるので、行き過ぎるのをコントロールするのがセロトニンである。人間にはセロトニンがあるので
理性や社会性、モラルというものが生じている。Pepperは目に入る、耳に入る情報を認識しながら、リアルタイムにドーパミンとかノルアドレナリン
をエミュレーションして、様々な感情を生成していく機能を持っている。全部、命令されて動く機械的なロボットでなく、自らの意思で感情で動いて
いく。家族が喜んでいると明るくなり、悲しんでいると暖かくなる。Pepper for Bizを2015年10月1日に販売開始する。
PepperはDeep Learningの機能をつけた。画像認識を実現する。今後、Deep Learningとワトソンを組み合せて学習能力を向上いく予定である。
・Peppper は接客機能を持っているが、同時にインタラクション分析を持っている。接客したお客様の年齢や性別、感情などを収集して、分析する
機能を持っている。Pepperがいるだけで、職場が明るくなり、会話も増えるので、月に5.5万円で派遣する。家庭向けに先月から販売を開始した。
一般モデルの7月分1000台は1分で売り切れた。企業向けにPepper for bizのプラットフォームを作り、ビジネスアプリを簡単に生成できるように
したいと考えている。アプリの開発制度を作った。認定パートナーが連携して、カスタマイズ、導入のコンサル、追加サポートなどをやっていく。
・3つの成長戦略にソフトバンクグループは注力していく。情報革命を目指す企業も情報武装していく必要がある。その次に成長戦略を見直すこと
が肝要かも知れない。情報武装した企業が成長する。情報革命は良い企業の成長だけをしたら良いのではないと考えている。
シンギュラリティ(Singularity)はまだ馴染のない言葉かも知れないが、これからみんなが大きな経験することになると思う。シンギュラリティは
コンピュータの知能が人類の知能を超える日が来るという技術的特異点である。ある日突然やってくるのではないが、一度、クロスオーバーする
と、2度と逆転できない。そのような日があと数年でやってくる。
・これまではその都度、プログラムを作ってきたが、これからはディープラーニングのように自動学習していくことになる。コンピュータが人間の知能
を越えていく日が来るので、私達はこのような時代はどのように取り組んだら良いかと考えると、哲学的考えを持つ必要があると思う。
・情報革命は進化なのか、破滅なのかということがあるが、私は情報革命は人々を幸せにする革命のためであると思っている。ロボットが人間より
賢くなるからこそ、優しい心を持たせたいと考えている。昔、私はアトムを見て、アトムが人の涙を見て涙の意味が分からなかった。鉄腕にハートが
なかったことが可哀想だと思った。私は鉄腕アトムにハートをプレゼントしたいと思った。ロボットは敵ではなく、仲間であり、家族である。情報革命
は生産性のためだけでなく、人々を幸せにするため、言葉の壁のない世界、交通事故のない世界、資源豊かな世界、人と人が愛し合える世界を
つくりたいと思う。情報革命ははじまったばかりである。5年前に情報革命、我々の気持ち、理念を描いたビデオを作ったがが、今も変える必要が
ないと思う。ビデオを見て頂きたい。
「感想」 孫社長はお話が上手だと感じた。これからロボットが進化していくと思われるが心を持たすということが
非常に大事なことだと考えていた。今回はPepperに感情を持たせるということにしたのは非常面白い
取り組みではないかと思う。孫社長の話が毎年進化している感じが強く、面白かった。メモにするのは大変だった。