アベノミックスと日本の変革      慶応大学 竹中教授

 ・世界におかれた日本の立場

   ・国会が変なことになっている。社会保険のセキュリティ問題で野党が勢いづいてきた。今の議案がある程度まで進んだところで成長戦略を

    出す予定だったので、心配している。

   ・2050年の未来という本をエコノミスト誌が出した。その中にはたくさんのことが書かれているが、一つ印象に残ることは世界のシュンペーター

    リアンコンペティションの社会になると言っている。イノベーションの競争の社会になると言っている。シュンペーターは色々なものが結びつき

    新しいものが出てくると言っている。最近、日本に海外からの旅行者が増えたのも、円安になった中で、ビザの発行条件を緩めた結果である。

    この本には、今後2050年までには、色々な国が出てくるが、英語が国際語の王座に君臨するということである。日本人は英語に弱い人が多い

    ので考える必要がある。アジア諸国もイノベーションが課題になる。中進国の罠を突き抜けて先進国になるには、イノベーションが必要である

    日本と韓国はイノベーションで先進国に入ったが、中国はどうなるのか。自由のない中国はイノベーションが出てこないので、経済が伸びない

    と言っている。ASEAN諸国は日本の真似をしたいと言っている。ASEAN諸国は、途上国の急速な経済成長に伴って、低所得層のBOP

    所得向上が期待されることから、BOP層は新たな有望市場として、目指している。ASEAN諸国がBOPを目指すことは日本とin-winの関係に

    なる。この本を出した経済センターの見方では、中国は比較的早い時期に成長が止まるのではないと言っている。中国の成長率が下がると

    色々な問題が出てくると思うので心配である。成長している時は色々な問題は抑えられるが、成長が止まると問題が出てくる。


 ・日本の経済状況

   ・2年半前にアベノミックスが出てきた。日本経済は非常に大きなチャンスである。同時に、このチャンスを押し潰そうとしている力がある。この

    問題を取り組む主役はみなさんである。アベノミックスは正しい方向だと思う。デフレを克服することは正しい。デフレでは投資も消費も進

    ないので、経済が悪くなる。日本のデフレの原因は何か。人口の減少が原因だという人もいるが、人口が減少しているが経済が成長している

    国は沢山ある。日本のデフレの原因はマネーが少なかったからである。黒田日銀総裁になり、政府は物価目標 2%を約束した。他の国には

    既に物価目標を設定していた。黒田総裁は着任早々マネーを2年で2倍にすると言った。その次に、国債を30%買うと言った。その結果、日本

    の株が1年で57%上がった。バブル時代の株の上昇率は50%だったので、それ以上上がったことになる。しかし、昨年消費税を上げた。その

    結果予想以上に日本の経済は落ち込んだ。その結果、昨年のGDPの伸びは0%になった。そのため、今年は消費税を上げるのを2年延ばした。

   ・安倍首相のもう一つの約束は、日本の財政再建のロードマップを今年夏までに出すと言っている。これは大変だ。財政再建のためには、

    社会保障を抑える必要がある。今は経団連の会長のように金持ちまでも、年齢になると年金を渡している。見直さないといけないと思う。

    第2の矢は機動的な財政出動であるが、後半は財政再建である。第3の矢は成長戦略である。第1の矢と第2の矢はお金を使う側の話だ。

    第3の矢は企業の体質を変えることであり、時間がかかる。更に、法律を変える必要な場合があるが、法律を作るには1年はかかる。今の

    成長戦略は安倍さんも満足していない。昨年、成長戦略の第2段が出た。日本の成長戦略について、ロンドンでは評価が非常に高かった。

    一方、フィナンシャルグループは政治では出来ない問題だと言っている。海外のメンバーが関心を持っている。


 ・ダボス会議のスピーチ

   ・ダボス会議で安倍首相がスピーチして約束した。まず、一つは規制緩和である。自由がないところではイベーションがないのは当然である。

    日本には岩盤規制がある。国家特区で2年以内にすべての岩盤規制に突破口を作ると言った。今まさに、国家特区が動き出した。東京では

    13のプロジェクトが動き出した。大手町丸の内有楽町は三菱地所が、日本橋、八重洲地区は三井不動産が、赤坂、六本木は森ビルが分担

    している。これは9区しか対象としていないが、更に拡げる見込みである。もう一つは医学部の新設である。37年前に琉球大学に医学部が

    新設された後、まったく医学部は新設されていない。これは異常である。医者は西日本が多く、東日本の医者は少ない。アジアのが日本に

    治療に来るようになる。更に、農業の話がある。今の制度では、法人が農業をするには、農業法人になる必要があるが、農業法人には制約

    が一杯ある。兵庫県の養父市特区に指定していたが、続いて、愛知県の常滑市が検討し始めた。特区では区域会議があり、国と企業と

    地方が対等決められるようになった。

   ・ダボス会議で安倍さんが約束したものに雇用がある。求人を増やして、完全雇用を達成した。次は女性の雇用である。今までは20代で就職

    して働いていても、30代になり、子育てで退社して、40代で働きたいと思ってもパートタイマーになることが多い。女性がパートタイマーになる

    と男性と収入に大きな差が出てくる。子育てで退職し、40代からパートになると、継続して働く場合に比べて2億円くらい収入が減少する。

    女性の労働参加率を上げるにはメイドがあり、メイドを海外から連れてくる。女性が職場に増えることはダイバーシティを高めることになる。

    イノベーションには新しい効果がある。この2年間で女性の社会参加が100万人増えた。減少し続けた生産年齢人口を増やす効果があった。

    メイドについては大阪や横浜はやると言ったが、東京がまだやると言っていない。

   ・ダボス会議のもう一つの約束はコンセッションである。コンセッションとは、インフラは自治体が持つが、運用は民間に任せることである。

    海外では空港や港湾、水道などで行われているが、日本では出来ていない。コンセッションに反対するのは自治体の職員である。しかし、

    コンセッションの効果は民間がやると効率が上がってくる。今の空港のボディチェックは航空会社が行っているので、チェックインカウンター

    内には飛行機に乗らない人を入れたくないということになっている。空港を運営する民間が行えば、お客様を入れて、売上を増やすことに

    なると思う。仙台空港がコンセッションを選択していくことにしており、4社が入札に入っている。新しいビジネスチャンスが生まれると思う。

    関空が次にやろうとしており、一社が入札している。続いて、千歳空港や福岡空港、高松空港もやるとしている。浜松市や広島市も水道

    事業でコンセッションをやるとしている。売上に兆億円単位のお金が自治体に入ってくる。このお金を高金利の地方債の返還の回せば、

    地方の財政は楽なると思うが、財務省が反対している。細かなことになると色々と出てくる。空港の管制業務は今は国が実施しているが、

    民間で行う場合、当初は支援する必要があるが、今の法律では公務員が特定の企業を支援することは禁じられているので、法律を見直す

    必要が出てくる。戦略は細部に宿るということを勉強させられた。

   ・公的年金を運用しているGPIF130兆円も持っている。これまでは自動的に国債で運用していたので、運用益は少なかった。これらは、

    もっと有効に運用することになった。この結果、78兆円が投資に回った。経済はそれ程、くなっていないが、資産運用は大きく変わり

    つつある。経済を成長させるには、アウトプットであるGDPに対して、インプットを増やせば良い。生産年齢人口は10年前から減ってきたが、

    女性の労働参加で増えている。資本はデフレからインフレにしている。それ以外はイノベーションである。主要国では成長の半分以上が

    イノベーションによるものである。イノベーションによる成長は多くの都市に依存している。都市を強化する必要がある。都市は色々なもの

    が集まっており、結びつくことで強くするのである。東京を分散して弱くするのは正しくない。

   ・DMOという新しい考えが出てきている。集中的に管理する専門集団が地方創生に取り組むことを提案している。札幌と台湾の間はジャンボ

    ジェットが毎日3往復している。北海道には台湾から300万人が来ている。これは台湾の8人に1人が来ている状況である。北海道では通訳

    が少なく、台湾から来た人が迷っている。北海道の受け入れ態勢が弱い。それに対するイノベーションが求められている。イノベーションには

    人材が必要である。マイナンバー制を幅広く使うことで新しいサービスが出てくる。マイナンバーと免許証と結びつけると良い。マイナンバーを

    持ち歩くようになる。そうすると、医療の分野でも活用できるようになると思う。


 ・2020年に向けて

   ・2020年に向けてチャンナスがある。オリンピックは特別であり、世界の7割の人が目にする。オリンピックが起爆剤となり、色々なことが進む。

    前回のオリンピックでは、ホテルニューオオタニや東京プリンスホテルなど大きなホテルがオリンピックの年にオープンした。ホテルオオクラも

    2年前にオープンした。トイレの目印も色々な国から来る人が分かるように作られ、大阪万博で国際スタンダードになった。冷凍食品が進んだ。

    色々な人種の人の食事に対応するため、冷凍食品が出来、それを活用してファミリーチェーンが出来た。また、色々なビックな人が来るので、

    セコムが出来た。当初は2人であったが、今では警備保障の従業員は53万人に増えている。このように、オリンピックに向けて色々な変革が

    進むことになる。改革の主役は、政府ではなく、民間である。時間がかかる。

 Q/A ドローンや社会保険事務所のセキュリティ事故などが出てくるが、問題を解決することが必要である。ガバナンスが大事であり、罰則規定も

     大事である。問題があるから何もやらないと言うのは良くない。改革には副作用が出てくるが、乗り越えることが必要である。コンセッション

     では自治体の職員の反対があるが、もっと大きな問題として、自治体が手にしたお金で高金利の債券を返却することに対して、財務省が

     反対していることがある。


 「感想」今回は2時間あったので、じっくりとお話を聞くことが出来た感じがする。私の回りには成長戦略の具体的な話が聞こえてこないので、
   
      既に、色々と動いている様子を聞いて驚いた。石破さんのお話、片山さんのお話を聞いた後だったので、何となく分かり易かった。

      今は世の中全体が他人任せ、三人称で動いている感じがするので、主役は民間、みなさんというのは良く分かった。しかし、今の社会
   
      は知恵が出ない、評論家が多い、社会になっていることを考えると、少し不安を感じた。