富士通フォーラムの基調講演

 1.お客様と共に、世界のビジネスと社会課題解決に挑む     山本社長

     ・富士通フォーラムは富士通の取り組みを総合的に紹介し、お客様に活用して頂きたいと思い、毎年同じ時期に開催している。

     ・今年のテーマはヒューマンセントリックイノベーション イン アクションである。今、デジタルテクノロジーの普及によって、これまで

      SFの世界のことだったような話が次々に実現している。これを人に役立つイノベーションへと変えていくこれが、ヒューマンセント

      リックイノベーションである。昨年の富士通フォーラムでもメインテーマとして掲げており、継続的にやってきた。2015年は、より

      具体的な取組みとして進化し、今まさに進行している姿をリアルにお見せしたいという思いを込めて、イン アクションとしている。     

    ・富士通は今年80周年を迎える。富士通の80年の歴史は日本におけるICTの歴史と重なる。その中で世界をリードするテクノロジー

     を数多く生み出してきた、当社は電話交換機の会社として創業したが、そのリレー式交換機の心臓部を計算機に応用したものが、

     コンピュータの始まりである。その後、LSIをコンピュータに使って高性能化を実現し、大型汎用機を世界に送りだしてきた。その他

     にも、モバイル通信や携帯端末を支える技術を実現した。富士通は数多くのブレークスルーに加えて、信頼性の高い社会システム

     などを通じで、今日のデジタル社会の実現に貢献してきた。コンピュータのF1と言われるスーパーコンピュータでは何度も世界一の

     性能を達成している。さまざまな産業や社会のいたるところでデジタル化が革新的な変化をもたらし始めている。この激動の中で

     ビジネスや社会におけるイノベーションを実現していくことが求められている。80年の節目に当たり、過去の実績を振り返るのでは

     なく、それを実現してきた挑戦する富士通のマインドでイノベーションを加速していきたい。

    ・富士通はこれまではICTそのものの進化に力を注いできた。これらも様々なブレークスルーにチャレンジする。しかし、これから

     社会をより豊かにしていくには、これに加え、ビジネス、そして社会のさまざまな分野において各業界の皆様と共に新たな価値を

     生み出していくことが不可欠だと考えている。すなわち、ICTの力を使って、みなさんの本業、そして社会の役に立つようにすること

     がICT業界の使命であると考えている。富士通は責任を持って取り組んでいく。例えば、ドイツで第4の産業革命、インダストリー4.0

     と言われているように、各国でIoTや知能コンピュータ等を活用した新たなモノづくりへのチャレンジが始まっている。こうした革新の

     主役は産業機器や輸送機器のメーカであるが、金融業や輸送業、農業をはじめとする一次産業でもデジタルテクノロジーを生かした

     チャレンジが必要だと考えている。そのチャレンジをICT企業として支援していく考えである。日本をはじめ世界の各国で高齢化が

     進んでいくが、如何に健康寿命を延ばしていくか、自立した生活を支援できるかという課題にも、ICTで貢献できることが数多くある

     思う。医療機器をはじめとする多くの人と協力して取り組む必要があると考えている。豊かな社会の実現には、ICTに加えて、多く

     人との連携が欠かせないので、みなさんを支援することを通じて、共に未来に向かって進んでいきたいと考えている。

    ・富士通にはすごいアスリートがたくさんいる。アメリカンフットボールでは今年1月悲願の日本を達成した。陸上では競歩の鈴木

     選手
が世界新記録をマークする快挙を達成した。2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。成功させるために、

     
ICT支援、挑戦することの素晴らしさと感動を世界に届けたいと考えている。同時に、交通やセキュリティ、金融などのインフラ

     の整備も進む
と思うが、ICTは重要な役割を果たすと思うので、しっかりと貢献していきたい。その経験を世界で役立てていきたいと

     考えている
富士通自身も新たなチャレンジに挑んでいきたいと考えている。私は6月に会長になるが、田中新社長と連携していく考え

     である。


 2.イノベーションがもたらす豊かな未来  田中副社長

    ・私は営業出身で、中国やシンガポールに駐在したことがある。富士通の考える未来について私の考えを話したい。

    ICTは空気や水と同じように生活になくてはならないものとなった。だから、富士通は人を中心にして、人を幸せにしたいと考えている

     人の笑顔や生き生きとした活動の裏側で富士通のテクノロジーやサービスがしっかりと支えている将来像を描いている。富士通が

     実現し始めた事例を紹介したい。働く人を幸せにする例として、モバイルやクラウドの登場で機動的で柔軟な働き方が可能となった。

     働く人がそれぞれのポテンシャルを最大限に発揮する、時間と場所を越えて多様な人材が活躍する場が形成できるようになり、グロー

     バルでオープンな環境が提供されることになった。4月から様々なアイデアを議論するワン富士通ジャムをスタートした。これから世界

     に展開していく計画である。人と人がICTが作る場でオープンなコラボレーションを実現し、社員のやる気を高めると共に、企業内の

     イノベーションを加速していきたいと考えている。

    ・働く人の安全・安心をサポートする仕組みも始めた。例えば、ビーコンのセンサで温度や湿度を管理し、熱中症を防止したり、加速度

     センサで転倒を検出し、救援活動を行うことが出来る。既にある技術でも、アイデア次第では働く人を快適にすることが出来る。次に、

     ショッピングや銀行の例を紹介する。コンビニやドラッグストアのきめ細かな品揃えは驚く。欲しいものはほとど手に入るし、めったな

     ことでは品切れもない。これは過去の気候と売上の関係や一緒に売れるものなど様々なデータの基づき分析されて、予測して情報

     と
物流が連携しているからである。マーケティングは更に進化して、私たちが欲しいと思うものを欲しい時に手に入るようになった。

     ある会社では過去のデータやSNSの情報を分析し、一人一人が欲しいものを捉えて、ご案内やクーポンを提供している例もある。

    ・支払や振込でも安全で快適なサービスが登場している。スペインでは利便性の高いスマートATMの導入を進めている。カードだけ

     でなく、モバイル端末やウエラブル端末も使える。ショッピングを楽しんだり、金融財産を安全に活用するには、ICTは欠かせない。

    ・製造業でもICTが革新を支えている。多くの人に使われている仮想化技術は発想を支援し、自由度を高めることに貢献してきた。

     試作品を作る前にバーチャルに検証することが出来る。離れた場所にいる複数の人が同じ環境で検証することが出来るようになる。

     3Dプリンタで設計や開発は大きく変わっており、富士通の現場では試作品を作る工数を大幅に削減した。それをサービスとしている。

     保守部品をその都度作ることが出来るようになれば、部品の在庫を持つ必要がなくなり、企業にとっても効率化が図れることになる。

    ・自律性の高いロボットと人の連携は効率的で高品質なモノづくりを実現する。難しい設定を楽にするインターフェースも登場しており、

     ロボットの活用に向けたハードルは益々低くなっている。ICTを生産ラインの自動化や自律化に生かす取り組みも広がっている。

    ・教育ではICTの活用が加速している。アメリカのセントジョセフアカデミーではインターラクティブな授業を行ったり、教師との連携により

     機能的な学習を可能としている。タイでは教師が一人一人の学習履歴を把握できるようになり、よりきめ細かなフォローが可能となった。

    ・食の安全を支えるため、富士通では農業分野のICT化を積極的に進め、国内外で色々なプロジェクトを立ち上げている。ICT技術を

     生かして、生産者をサポートし、栽培の最適化を目指している。流通業界や食品メーカとも連携して、より高い付加価値を生み出して

     いる。イオングループや朝日酒造などと連携しており、農業クラウドのAKISAI350社が採用している。

    ・交通では安全でスムーズな移動を進めるため、テクノロジーの高度な利用が始まっている。自動車の走行データを分析することで、

     事故のリスクを事前に警告したり、渋滞を減らす取り組みが始まっている。インドネシアでは高速道路のリアルタイムな走行データを

     ドライバーに提供し、誘導に役立てている。バルセロナでは近隣の自治体が共同で、地下鉄からバスなど、料金の支払いから情報

     サービスまで統合した一大プロジェクトがスタートしている。5600万人の9億回の移動をスムーズにする予定で、27年には新しいシス

     テムが稼働する。シンガポールでは、港湾から陸上輸送までの物流設備を最適化することや自動車の渋滞だけでなく歩行者が集中

     する場合の安全の確保などをビックデータ技術を使って解決策を考えている。

    ・医療・介護では、電子カルテや医療データを通じて、安心で優しい医療の実現に支援してきた。医療は広域に連携していく時代が来た。

     今後はセンサーネットワークを生かして高齢者や慢性疾患を抱えている人が安心して自立した生活できる世界を実現したいと考えている。

     既に、アイルランドで実証実験を行っており、予防医療に役立てることを考えている。最近の研究で薬の効果や病気になるリスクは一人

     一人大きく違っていることが分かってきた。将来的には、個人に特化した薬の処方や生活面でのアドバスなどが受けられるようになって

     いくと思われる。これを支えるのが、医療実績やゲノムの解析といったビックデータの解析である。富士通は積極的に取り組んでいく。

    ・社会の機能を人にしく快適にするには、高度なインテグレーションと運用が重要である。グローバルに連携していく考えである。人や

     社会を、増大し巧妙化するサイバー攻撃から守るためにセキュリティ対策に真摯に取り組み、お客様の大切な資産やビジネスを保護

     していく。そのため、専門家を揃えたセキュリティイニシアチブセンターの整備や様々取り組みを行っている。

    ・富士通はICT技術とインテグレーション力を磨き、運用サービスを充実させることによって、人を幸せにする、人の集まる社会や企業を

     高度化する、人や社会の安心安全に貢献したいと考えている。

    ・面白いサービスや製品を紹介する。スポーツ観戦をもっと面白くするサービスである。プロ野球選手がヒットを打った瞬間、投手が三振を

     取った瞬間に、その場面をもっともっと見たいと思うことがあるが、それを自宅でも外出先でも一発で見られるようにできるサービスである。

     裏側では 高度な画像処理技術を駆使し、膨大なデータを自動認識して、選手の情報などを紐付けすることにより実現している。

    ・最新のスマートフォンでは、世界で初めて虹彩認証機能を取り入れて、画面るだけでセキュリティロックを解除できる。セキュリティと

     使い易さは両立が難しいが、この技術が両立している。ヒューマンセントリックエンジンを搭載しており、周囲の環境や使っている人の

     特性に合わせて、画面の明るさや色合い、音の大きさなどを自動で最適化する。また、ユーザの行動を学習して使い易くなるようにした。

    ・指にはめて使うデバイスで作業をしながらエクセルの入力や複雑な漢字の入力が可能となる。眼鏡型の端末は網膜に直接画像を照射

     することが出来るので、周りの景色をしっかり見ることが出来たり、視力の弱い方をサポートすることも出来る。

    ・富士通は総合力でも、単独技術でも、お客様基点で考え、グローバルの現場現実をしっかり見て、全力で取り組んでいく考えである。