これからのビジネスを取り巻く経済動向とIT戦略 慶応大学 岸教授

 1.日本経済

    ・アベノミックスで日本経済が再生していくと報道関係は言っているが、本当に再生していくかはまだ分からない。

    ・金融緩和と財政出動は想像以上に成果を上げている。その結果、デフレは脱却したということは出来る。

     もう一つ課題として、低成長からの脱却が必要であるが、その観点から見るとアベノミックスはまだ進んでいない。

    ・財政出動の効果は1年くらいから出てくるが、2年くらいで終わる。そのため、第3の矢の成長戦略が必要である。

     成長戦略には産業戦略と構造改革が必要である。政治や官庁は産業戦略に重きを置くが、成果は限定的である。

     成長戦略で本当に大事の構造改革が中心になることである。民間が自力で競争力をつけるようにすべきである。

    ・マーケットは法人減税や岩盤規制を求めており、安倍首相は法人減税を行うと宣言しているが、まだ進んでいない。

     現在、景気が良いのは大都市や大企業だけである。地方や中小企業は良くなっていないで、まだ苦しんでいる。

     地方や中小企業が変わるには時間がかかる。そのためには、成長戦略であるが、あまり期待できない感じである。

     今回の大企業の決算が良いのは、半分は円安や財政出動であり、イノベーションが起きているのではない。

    ・消費税の影響は少ないと報道されているが、4月からは消費税のみでなく年金、医療費など色々と上がっている。

     日本経済は政策次第と言われているが、民間企業の責任も重いと思わないといけない。日本の経済規模のGDP

     500兆円を政治だけでコントロールすることは出来ない。イノベーションが起きないと経済は回復できない。


 2.イノベーション

    ・日本でイノベーションと言うと技術イノベーションと考えられているが、技術イノベーションは時々しか起きない。

     イノベーションにはビジネスイノベーションもあり、継続的に行えるビジネスイノベーションも重要である。

     最近の日本では大企業ほど、イノベーションが少なくなっている。ソニーもウォークマンでは世界へ影響を与えたが、

     今のソニーにはそのようなイノベーションを作れていない。何故かと言うと、経営陣に問題があると考えている。

    ・大企業の経営者はエリートとして上がってきてムラ社会を作っている。このような社会では前例がないと動かない。

     今の官庁では前例がないと政策は作れない状況であり、イノベーションが起きることは出来ない状況になっている。

     政治や行政とつながりの強いほど、イノベーションは少ない。しかし、零細企業ではイノベーションを起こしている。

     売り上げが大幅に落ち込んだレコード業界ではAKBが生まれており、漫画喫茶も新しい形態が次々と出ている。

    ・日本は高齢化、少子エネルギーなどと課題がすごく多い国である。それだけ、イノバーションできるところが沢山ある。

     大都市や大企業は政治に頼っていて、イノベーションは出てこない。地方が頑張って欲しいと思っている。

     コンビニはイノベーションの固まりである。商品開発や流通の仕組みなど日に日に変わっている。しかし、日本中

     に出来ているシャッター通りと言われている、多くの商店街は何もしようとしないので、再生は無理と思っている。

     イニベーションを作り出す企業は生き残る。イノベーションを作りだす場合は投資が必要になる。


 3.デジタル化

    ・構造変化では、グローバル化とデジタル化がある。日本ではグローバル化は進んでいるが、デジタル化は未だだ。

     欧米ではここ数年でデジタル投資を積極的に行っている。日本で評判になっている3Dよりロボットを使っている。

    ・クラウドやビックデータの活用は当然であるが、どちらもシリコンバレーから出ている。日本の企業はアメリカの

     プラットフォームをそのまま持ってこようとしているが、日本の社会は欧米とは違っているので、成功しない。

     例えば、ソーシャルメディアについて、日本でSNSFacebookを利用しているユーザは2000万人であるが、Line

     利用者は4000万人と大きく違っている。これは日本人の会話がアメリカ人の会話と違っているためであると思う。 

     アメリカ人はあまり知らない人でも論理的な話をするが、日本人の普段の会話には中身がないことが多い。

     日本人は大事なことは仲間内で話をしている。日本のソーシャルメディアでは、オタク的な人が集まっている。

    ・日本とアメリカでは社会が大きく違っているので、欧米のプラットフォームをそのまま持ってきても上手くいかない。

     日本の風土に合うプラットフォームを作らないといけない。


 4結論

    ・日本の経済は云われているほど、調子が良いわけではない。安部政権の政策は来年春まで効果が上がるが、

     その後は成長戦略次第である。そのためには、民間がイノバーションを起こしていく必要がある。

    ・デジタル投資として、クラウドやビックデータを使うのは当たり前であるが、シリコンバレーの形のままで導入する

     のは良くない。日本の風土に合わせたプラットフォームを作り、活用する必要がある。

 「感想」現在の日本経済の状況を分かり易く説明して頂いた。日経新聞が報道している部分と異なることを説明しており、
      見方が違うと言うことも違うと言うことを強く感じた。経団連が抵抗勢力と言うのは何となく分かった感じがした。