世界最強のオムニチャネルデーラーを目指して  セブンイレブン 村田社長

 1.オムニチャネル状況と消費者の心理

    ・オムニチャネルで先行している米国の状況について、ガートナーの報告では、実店舗は11.2%減少しており、

     Eコマースは7.4%増加している。モバイルコマースは4.3%増加している。

    ・ネットやスマホの活用も大切だが、お客様との信頼関係やお客様の立場、お客様に近づくことが重要である。

     消費者の心理としては、情報過多による情報疲れがあり、消費者は何を信頼すべきかが分からなくなっている。

     専門知識を持った第3者の情報や自分のためにカスタマイズした情報が求められている。更に現物を見られる

     とか、現物から得られる直感、体感の情報が求められており、接客と商品開発を進めていきたいと考えている。

    ・セブンイレブンとしては、リアル店舗からのお客様の評価がポイントであると考えて事業を改革している。


 2.セブンアイグループ

    ・セブンアイグループは20059月にイトーヨーカ堂とセブニレブンジャパン、デニーズジャパンを集めてグループ

     化して出来ており、セブンアイグループの企業価値を最大化するように事業を進めている。

     現在のセブンアイグループは、百貨店、食品スーパー、総合スーパー、フードサービス、コンビニ、ITサービス、  

     金融サービスの7部門に分けて事業展開しており、7つの事業領域への挑戦を進めいる状況である。

    ・米国のセブンイレブンからはコングリッド化によるディスカントを行う形態を要求されたが、戦略的共通ブランドの

     下に、変化への対応と基本の徹底を目指して、各部門が独立に活動しており、お客様は横断的に利用している。

     当初、ITサービスがどのようになるか分からなかったが、将来を考えて、ITサービスも事業体として入れ込んだ。

    ・売上は1972年は825億円であったが、2014年は95978億円と116倍になった。利益は40億円から3396億円と

     なり、84倍に増加している。世界の店舗数は54000店であるが、日本の店舗数は18000店になっており、一日の

     来店数は世界の店舗では5500万人、日本の店舗では1950万人となっている。


 3.セブンアイグループの取り組み

    ・グループの企業理念はお客様、社員、企業に信頼されることであり、変化への対応に40年前から取り組んできた。

    ・国内のマーケットの変化を考えると、1970年からの高度成長期があり、お客様の特徴は十人一色で、大型店の

     積極的出店に取り組んだ。次は1980年からのバブル時代であり、お客様の特徴は十人十色で、在庫のコントロ

     ルによる死蔵品の排除に力を入れた。次は、1990年からのマイナス成長のデフレ時代であり、お客様の特徴

     は一人十色となり、お客様の要望の変化に対応する在庫のコントロールが重要になった。

    ・事業展開としては、変化への対応と基本の徹底の考えの基に、終わりなき改革の連続であった。そのため、過去

     の常識に捉われない、時代の変化に即した仕事を追及してきた。

    ・チームMD(マーチャンダイニング)の考え方としては、系列組織の弊害を打破し、将来に売れる商品を作っていこう

     と考えた。主人公は企業では人であると考えて、トップ企業とも共同する、緩やかな系列を作ってきた。

     これまで着実に成長してきたが、チームMDによるオリジナル商品の開発により、ここ34年が急に成長している。

    ・日本のコンビニマーケットの40%を持っているが、商品の改革は人真似はしないものを作っている。イノベーション

     の連続である。物流システムの革新では、共同配送システムにより、各店舗への配送に従来は70台で配送して

     いたのが9台に減少した。おむすびは毎日3回は配送しないと美味しいおむすびは出せないことが分かったので、

     必要な毎日3回は配送するが、共同配送する方法を工夫ことにより、店舗への配送を大幅に減らすことが出来た。

    ・情報システムの革新としては、POSの導入により、発注精度を向上させると共に、仮設の検証が出来るようにした。

     POS情報と天気などの周辺情報とリンクさせて、仮説を立て→商品を発注→検証する、というサイクルを繰り返す

     ことにより、きめ細かな単品管理を行うことで、売り切る体制を確立した。

    ・サービス機能の革新としては、料金収納代行サービスを進め、取扱高が4兆円、取扱件数は4.3億件/年となった。

     それに伴い、ATMサービスを開始し、更に、セブン銀行を設立し、年間の取扱い件数は7.35億件になっている。

    ・セブンアイグループの経営を支えているのは外部とのコラボレーションであり、改革する意識を持ったことである。

     SEJはフレッシュフードを中核に売上を伸ばし、創業20年で現在の原型を完成させた。ビジネスの根幹はインフラ

     の改革で、表面的に見えるものはその一部である。ビジネスインフラの根幹の方が非常に大きい。日本のSEJから

     世界の7-11の支援プログラムを用意し、2000名が経営指導を行っている。


 4.セブンプレミアム

    ・高齢化や女性の社会進出、IT化などにより、これからの時代認識としては、質を重視した経営がポイントなる。

     そこで、質を強く考えてセブンプレミアムを作っている。従来のPB(プライベートブランド)は安さを追求していたが、

     セブンプレミアムでは質と価格を徹底的に追及して、お客様が満足する商品を開発した。セブンプレミアムは正に

     小売りが主導したイノベーションであり、グループのマーケティング情報とメーカの高い技術を融合して、売り切る

     商品を開発した。仕入れから商品開発・販売のプロセスを一本化し、競争力の高い商品開発の体制を実現した。

    ・ヒット商品としてはセブンカフェが4.5億杯を売り、500億円を売り上げている。金の食パンは年間3000万食を売り、

     50億円を売り上げている。消費税のアップに伴い、7割の商品をリニューアルする予定である。

    ・セブニイレブンは、昔はお店が開いてて良かったと言われ、即食性の高い商品を売っていて、男性のお客様が
     多
かったが、今は近くて便利ということで、品質の良い商品を積極的に開発しており、主婦の客様が増えたことである。


 5.オムニチャネル

    ・セブンイレブンのオムニチャネルは、社会構造の変化に対応していくセブンプレミアムに次ぐ、グループのシナジー

     と考えている。リアル店舗とネットの融合によるビジネスチャンスと捉えている。ネットワークで予約した商品を店舗

     で受け取ることを考えている。例えば、そごう西武のキレイステーションでアドバイスを受け、サンプルを購入した後、

     気にいった場合は、ネットで予約し、近くのコンビニで自分に合わせた商品を受け取ることを実現している。

    ・多くのチャネルを用意することで、潜在ニーズを掘り起こさせることを目指している。一人一人のお客様に合わせた

     提案が大事であると考えている。7つの検討領域に分け、実行計画を検討している段階である。

    ・サイト領域での検討をしており、統合ECである7&iネット(仮)を構築し、オープンプラットフォーム化で通販を拡大

     する。お客様のニーズ行動を起点として、提案できる商品・サービスの可能性を追求する考えである。


「感想」 セブンアイHDの村田社長のお話を聞いて、非常に面白いと思った。コンビニと百貨店、スーパーを統合的に
      事業展開しているが、基本はお客様の動きに合わせて、事業を変革しており、日々変化しているということは
      驚いた。コンビニも変わっていると思ったが、ビジネスのインフラが大きく変わっているのには驚いた。
      流通業界のトップの話を聞く機会が少なかったので、非常に関心を持つことが出来た。