日経CNBC ザ金融闘論   〜アベノミクスと税制改革 評価と展望〜

 1.アベノミックスの現在の点数は

    (竹中) アベノミックスを推進している当事者だから点数は付け難いが、三木谷さんの採点の75点が的をえていると思う。

    (神野) 65点である。不可ではないが、良でもない。政策面で良い薬を使っても副作用があるが、対策が準備されていない。

    (中島) 80点である。基本的には企業の活力を生かすことであり、活力は出てきたが、まだ、経済環境を作っていない。


 2.海外の投資家が注目しているのは、法人税だが、法人税は引き下げるべきか

    (神野) 税ベースを考慮しないで税を引き下げるには、税の本質を明らかにする必要がある。成長戦略で行うなら、投資

         に結びつかないといけないが、今の企業の資金は潤沢であり、資金を投資に結び付けるパイプが詰まっている。

    (中島) 企業の活力をいかに活かすかという点で見ると、企業減税がある。企業の活力を引き出すという点では 賛成で

        ある。海外の投資家を考えるとマーケットが進んでいく方向であり、企業を前向きに動かすという点で賛成である。

    (竹中) 法人税は早期に大幅に引き下げるべきである。デフレの時には企業の資金は動かないが、デフレでなければ、

        投資が出てくる。法人税減税は政府のメッセージである。阿部首相はダボス会議で、日本の企業が国際的に競争

        できるところまで法人税を引き下げると言った。ダボス会議ではイギリスの首相は法人税を20%に下げると言った。


 3.本当に企業は良くなるのか

   (中島) アベノミックス以前は企業は6重苦だった。円高が改善された。更に法人税を下げると、企業の活力を高める効果

       が良くなる。円安株高がどう効いてくるかがポイントだが、昨年の状況を見ると株高が消費に効いてきている。

   (神野) 法人税を下げて成長した国としてはスエーデンやアイルランドがある。そのポイントは賃金であった。日本の今の

       位置づけは産業構造を変える時である。バブル後、産業構造を行う必要があったが、日本は産業構造が変化して

       いない。法人税減税により、黒字の企業に恩恵を与えることで、産業構造を変えることが出来るか良く分からない。

   (竹中) 株高は外国の15兆円の買い越しによるものである。欧米の投資家が今年はどうするか考えており、日本に非常に

       高い関心を持っている。法人税を下げることは大きな関心事である。黒字の企業は成長している。それらの企業に

       頑張って貰うことで日本の経済が成長すると思う。政府にはどの企業が伸びるかは分からない。そのため、色々な

       企業がチャレンジしていくしかない。その頑張っている企業の手足を縛らないことが大事である。


 4.消費税を10%にすることは

   (竹中) 財源調達としてはリーマンショック前の政府の予算は80兆円だったが、今は100兆円になり、2割増えている。個人  

        の財布は増えていないのに、政府の財布は2割増えている。この増加分を半分にすれば、法人税は下げられる。

   (神野) 欧米が法人税を引き下げた時は、課税ベースを拡げている。ドイツは支払利子等も含めて課税ベースを拡げた。

        法人税を引き下げるのなら、課税ベースを拡げる必要がある。もう一つは分配の不公平感を改善する必要がある。

   (中島) 成長戦略には企業の新陳代謝がある。日本の企業の開店率は非常に低い。マーケットが飽和している状況では

        財力がないと上手くいかない。稼いでいる企業を元気にすることが必要である。税制のことが良く言われるが、

        社会保険のことは言われていない。欧米では社会保険料を充実させて、法人税を下げている。人をどれだけ多く

        使っているかということが社会保険料に効いている。社会保険料を充実させると、生産性を上げることになる。

   (竹中) 日本は開店率が低いが、閉店率も低い。生産性の低い企業が残っている。銀行も企業と持たれ合いになっており

        株式の持ち合いまでしている。日本の企業人の志が低いことが問題である。独立した外部取締役の採用と金融    

        機関の株式の持ち合いを止めることが必要である。


 5.成長と財政再建は両立するか、消費税
10%をどう思うか

   (中島) 消費税を10%にすることは賛成である。経済が悪い時に増税するのは難しいが、経済が良くなった時に税を上げる

        必要である。マーケットは消費税を10%にすると言ったことで動いており、消費税を上げるのを止めた時は日本に

        対する不信感が大きくなり、国債は売られ、日本売りにつながると思う。

   (竹中) 経済を成長させないと財政を再建することは出来ない。小泉さんの時は歳出を減らさなかった。財政再建の本質

        は税金ではない。歳出を抑えることである。増税は新しいことをやることに使うことがポイントである。

        日本の税収が最も多かったのは、消費税を3%から5%に上げた1997年である。その後、税収は増えていない。

        デフレを克服しないと、増税をしてはいけない。阿部首相はデフレを克服すると言っている。

   (神野) 産業構造を変えないといけない。新しい企業がチャレンジできる安全のネット作りが必要である。失敗しても良い

        ようにする必要がある。これからはソフト的なインフラ作りが必要で、新しい産業への人材を育てる必要がある。

   (竹中) 消費税を上げると言っているが、内容的は4%は穴埋めであり、残りの1%6割が低所得者対策である。若い人へ

        のお金は0.4%しか回っていない。これでは、消費税を上げても、産業を大きく変えることは出来ないと思う。


 6.アベノミックスに必要な政策は

   (中島) 企業の新陳代謝である。日本企業の収益力は欧米の半分しかない。企業は資金を積み上げているが、資金を

        活用していない。活力のない企業は退場すべきである。

   (神野) 2つのネットを張り替える必要がある。産業構造を変えるため、安心して新産業にチャレンジできる体制を作るよう、  

        ソフトの産業の人的インフランを充実する必要がある。伸びている産業に資金が流れていくようにすることである。

   (竹中) 阿部首相がダボス会議のオープニングセレモニーで公約したことを実現することである。特区のワク組みを使って

        2年で岩盤規制に穴を空けると表明している。更に、日本の企業が競争出来るように法人税を下げることである。

        更に、女性の積極的活用を進めることや外国人を活用することが必要である。


  「感想」 日経CNBCの録画を聞きに行った。3人の専門家が独自の立場で意見を言っているのを聞くと面白いと思った。
        講演会の話をまとめるのではないので、整理するのが難しかった。