プログラミング教育 坂村東大教授、南場智子さん、石戸奈々子さん
1.坂村教授の説明
・Tronを使っていくには、プログラミングが出来る人が出てきて欲しいと考えている。世界では初等教育にプログラムング
教育を入れようとしている。日本では大学の入試にプログラミング科目がないので、真面目に取り組む学生がいない。
・コンピュータ教育の内容は、@CS;コンピュータサイエンスがあり、アルゴリズム、プログラミング、コンピュータ原理等
を理解させること、AIT;インフォメーションテクノロジーがあり、効率的な7Web検索の仕方、ソフトの使い方、複数の
ソフトを組合せることがある、BDL;デジタルリテラシーがあり、安全な使い方やプライバシー保護などがある。
・イスラエルではプログラミングの教育が進んでいて、コンピュータ業界では高いアウトプットが出てきている。イスラエル
では95年に、ジュディス・ガル=エゼル教授がA High-School Program in Computer Scienceという論文を発表した。
中等教育でのコンピューター教育は、使い方よりも、原理やプログラミングを教えるべきだという内容で、2000年頃から
高校教育レベルでプログラミング教育を実施している。その結果、コンピューター分野でイスラエルは人口に比して
非常に強力な国となり、世界中の企業がイスラエルの技術を競って買う状況になっている。
・次は、英国で今年9月から義務教育としてCS教育を開始した。英国では決定して3年で開始した。英国では、拙速でも
走りながら修正すれば良いという考えであり、プログラニング教育では短期間で実施することが大事である。日本では
決めてから実施するまでに10年位かかる状況で問題だと考えている。米国でも、プログラミングの高校教師1万人の
養成を目指すCS10K運動を始めた。ニュージランド、デンマークも高校レベルでCS教育を開始した。
・日本のCS教育は全部で5、6時間であり、パッケージの利用が中心である。新たな基礎学力として、プログラミング教育
があり、アルゴリズムやフォーマルな記述などを教育する必要がある。
・これから必要となるイノベーションは進化論の世界で、チャレンジしかない。世界は益々チャレンジが容易になっている。
チャレンジして駄目なら、次のチャレンジと粘り強く続けて、成功することを目指す必要がある。独創性を直ぐに世界に
問える状況になった。そのためには、プログラミングの専門家ではなく、スマート農場でイノベーションを起こすのは、
プログラムの出来る農民である。その分野の仕事の専門家にならないと、イノベーションを起こすことは出来ない。
・最近、コンピュータは論理性だけでなく、感性に向かっている。人間と機械が競争することになる。機械が感性を持つ
のであれば、人間は論理性を高める必要があると思う。その時、重要なのはプログラミングの力である。
2.南場さんの意見
・DeNAのプログラミング教育の取り組みについて説明する。最近、カメラを見ると日本のシェアが急速に低下している。
技術は持っているのに、発想で損をしていたり、勝機を逃していたりしているところがある。デジタルカメラは伸び悩んで
いるが、アクションカメラが急速に伸びている。GoProを筆頭とするアクションカメラメーカはS/Wで設計している。
アクションビデオも急速に伸びており、2013年には1000万台になっている。
・世界の若い人の意識調査の結果を見ると、日本人は起業に対して、67位と極めて消極的である。一方、失敗の恐怖は
4位と非常に高い。これは非常に心配な状況である。日本の基盤産業の国際競争力は低い。間違えない達人の量産
により、問題解決、リーダーが育っていない。また、世界とのコラボレーションも苦手な人が多い。
・起業も日本はうまくいっていない。世界一流の企業が少しずつ出てきていても、数が圧倒的に少ない。これを解決する
ヘソやレバーはプログラミング教育だと考えている。社会のほとんどがコンピュータサイエンスの素養をつけて欲しい。
・子供の頃からCSを操れるようにしたいので、DeNA×武雄市×東洋大で小学校のプログラミング教育を取り組んでいる。
DeNAのCEOが出掛けて行って、授業を支援している。小学生は熱中するので、時間を決めて教育するようにしている。
プログラミングが出来る、多様な個性や能力を持つ人を育てたいと思う。集中力が問題で、脱落する生徒が出ないよう
にしている。武雄市は小学生全員にタブレットを渡しているが、30分すると止まるようにしている。
3.石戸さんの意見
・未来をつくるのは子供の想像力と創造力である。ある調査によると、現在ある仕事の65%がなくなると言われている。
これまでは暗記、記憶が中心だったが、これからは創造である。プログラミングで表現する力を身につけることである。
そのため、小中学生を対象としてプログラミングの講座を開いていて、チップを使って3万5千人に実施する予定である。
・教科科目の理解を深めるためのITの活用に力を入れている。プログラミングを学ぶではなく、プログラミングで学ぶと
言っている。コードを覚えるのではなく、プログラミング学習を通じて、論理的に考えて問題を解決する力とか、他者と
協力して創造する力を身につけてもらうことであり、プログラミングは、あくまでも表現方法のひとつである。
現在の教育では科目が分断されているが、ITで統合することが出来るようになると考えている。
小中学生にプログラミング教育をやったことによって分かったことは、子供はプログラミングに熱中するが、大人が反対
したり、分からない、大人の理解が問題であることである。
(南場)子供の吸収力は凄いと思う。これまでと違って、答えが一つではないので、想像力が重要になってくる。
中学生や高校生になるとシリコンバレーに行って教育した人と日本で教育を受けた人と差が出てくる。日本では自分
の趣味を学校で広めることは止められるが、米国では自分のパッションを広く共有するように指導している。
グローバル化で日本人だけで解決できないことが増えているのに、外国人と共同していけないのは大きな問題だ。
(坂村)答えが一つじゃない考え方はされてこなかった。イノベーションを進めるには、答えが一つではない状況になるため、
コンピュータ教育を初等段階から進めることが必要だと思う。
(石戸)プログラミング教育を義務教育に入れて欲しかったが、学校で出来なかったので、外から始めた。プログラミング教育
を進めるにはリーダーシップが必要であると思うが、そのリーダーシップには政治の力がないといけないと思う。
「感想」大学卒業した社員のプログラミング教育の参考なるかと思って聞きに行ったが、初等教育の話が中心であった。
しかし、プログラミング教育とは何かということや、プログラミング教育には新しいビジネスがありそうな感じがした。
今まで、お話を聞いたことがない人の話も聞けて面白かった。