上司と部下のストレス学 健康社会学者 河合薫様
1.講師の経歴と健康社会学
・学校を卒業した後、直ぐに、ANAのスチュワーデスになり、30歳で転職して、お天気キャスターになり、8年間
天気を見てきた。その内、天気によって人間の体調が変わることに気がつき、調べてきて、まとめて本を出した。
・人の心に影響を与えるのは、天気だけでなく、経済など色々とある。しかし、すべての人の心に影響を与える
のは人である。心理学の究極のゴールは心が強くなることである。しかし、心が強い人ばかりではなく、心の
弱い人もいるので、社会学の究極のゴールは一歩前に出てみることがゴールである。
・チーム作りのヒントになることを話したい。
・健康状態には、健康になる健康要因「元気になる力」と健康が破綻する危険要因「マイナスの力」がある。
情報の多さもストレスになる。特に、情報量が増えていくとストレスが大きくなっている。
・健康とは心の強さ、生きる力である。日本が成長している時、世界では日本の強さを調べていた。その一つが
年齢と共に成長すると考えて採用していた終身雇用制であり、年功序列は人の成長に期待して力を出していた。
雇用に対する安心感がストレスを抑え元気だった。しかし、何時も良い時だけではないので、変わってきた。
2.傘を差す勇気と傘を差し出す勇気
・元気になる力はまわりにある。そのことに気付くことが大切である。ストレスは人生の雨だ。しかし、晴天が続くと
人は雨乞いをする・人生も一緒である。人生も晴天続きの人生を送っていると何か起きないかと言い出す。何か
とはストレスである。雨が降ってくると傘を差せば良い。傘も一本ではない。色々な傘がある。使い分けた方が
良い。一年中、雨が降っているところはない。気象衛星から見ても、地球全体が雨のことはなく、何時かは晴れる。
人生も同じである。雨が上がれば、草木は成長する。人間もストレスが過ぎると成長する。
・傘置き場は2つある。一つは心の中であり、傘を増やそうと思っても簡単には増やせない。もう一つの傘置き場が
ある。傘を貸してくれる近くにいる人である。心の近い人がいることである。リーダーシップの強い人はこのような
人達に支えられている。傘を借りる勇気を持つことである。これは人生の伴走者になることである。傘を差し出す
勇気を持って欲しい。傘を借りる勇気と傘を差し出す勇気の両方を持って欲しい。
3.
Sense
of coherence
= 守備一環感覚
・イスラエルのアーロン・アントノフスキーが提唱した概念である。ナチスの収容所から生還してきた沢山の人から
話を聞いたところ、70%の人が、心に深い傷を持っていて、元気になる力を持っていなかったが、30%の人は人生の
意味を持っていた。これらの人は、Sense of coherence = 守備一環感覚で、人生のつじつま合わせたストレス
対処力=生きる力を持っていた。これは環境で生まれる能力で、子供の頃に育つ。次が仕事に就いた時である。
・Sense of coherenceの有意味感とは、周りに持たせたい傘で、仕事に意味があると思うことである。意味のない
仕事と思ってやっているとミスが出る。意味のないと思うことを続けていると、自分の人生も意味を感じなくなる。
・スチュワーデスになった時、分厚いマニュアルを読んで、研修してきたが、ワシントンに行く20数時間の内10分
くらいしか意味のある仕事と感じなかった。こんな仕事は意味がないと思っていた。意味がないと思うと、いつ
辞めるかということばかりを考えていた。しかし、会社の社員達が励ましてくれた。自分の苦労を分かってくれて
いると思うようになった。その結果、しばらくすると会社の仕事に馴染んでいった。
・パフォーマンスの高い人は引っ張っていくが、真面目でこつこつやっている社員は会社の基盤である。会社が
好きで、出世も望まず嫌な仕事も厭わずやっている人が会社の土台になっていることを考えないといけない。
4.挨拶と無駄を大切にして!
・挨拶は心と心の距離感を短くする。挨拶は人と人の間でするものであるので、上の人から挨拶をしても良い。
会社を訪問すると会社によって空気が違う。元気な会社はトイレが綺麗なところが多い。元気の良い会社の人
は細かなところにも気がつくのだと思う。無駄を大事にして下さい。無駄話で人の関係が良くなる。
元気の良い会社に行くと空気が暖かい感じがする。
今日の話で、会場の感じは少しは暖かくなったと思うので、参考にして欲しい。
「感想」 講師の河合さんの経歴を聞いて、自分で思うことに対して積極的に進んでいるのは凄いなと思った。
お話は講師の得意なお天気や傘を例にして、説明されていて、分かり易い感じだった。内容的には先日
聞いた孫子の考え方に通じるものがあると思った。