パネル討論:集団的自衛行使の意義と日米同盟の新展開

  パネリスト ・カート・キャンベル前米国務次官補
         ・ジェームス・スタインバーグ前米国務副長官
         ・マイケル・グリーン前米国家安全保障担当大統領特別補佐官
         ・小野寺五典膳防衛大臣
         ・北岡伸一国際大学学長、安全保障と防衛力に関する懇談会座長

  (グリーン)日米同盟を強化するために何をすべきか。他国に何を発信していく必要があるのか。

  (ジェームス)大きな変化が起きつつある。まだ変わっているところだ。日本がノーマルな国になり、地域に貢献していく

     ことになるなら、米国は支持する。また、この地域の各国が理解してくれる必要がある。

  (小野寺)大臣在任中は東アジア地域で問題を起こさないことを考えてきた。日米関係の修復と防衛力の強化に取り

     組んだ。東アジアは世界の経済の中心であり、日米オーストラリア、日米インドの関係を軸にやってきた。海上の

     行動規範も今年の春に合意した。ASEAN各国と日本の防衛大臣の会議も行われた。日本の防衛を考える時、

     日米技術は強く連携していることである。実態として、日米は共同で活動する体制が出来ている。

  (キャンベル)1990年に取り組みを開始した日米の安全保障と多国間のパートナーシップが大事であると思っている。

     経済のサイドが重要で何をするかははっきりしているが、アジアの国の支持を得ることが大切である。

     中国から歴史問題を聞かれると1950年以降、日本が平和と安全に貢献してきたことを話している。

  (北岡)日本は安全保障の面で大きな潜在能力を持っている。一つは軍事がない方が良いという考えを持っている。

     これは間違いである。安全保障は適切なバランスを持っているべきである。もう一つは、今までやってきたから、

     このままで良いのではないということである。日露戦争では軍艦は石炭で動いていた。今は石油で動いている。

     日本が石油を求めて、第2次大戦になった。もう一つは潜水艦である。現代の技術革新は続いている。安全

     保障の基盤は環境の直視が必須である。これらの壁があったが、集団的自衛権で風穴が空いたと思っている。   

  (小野寺)日本は自国をしっかり守ることが基本であるが、更に、米国に支援を要請することになる。米国の世論が

     大事であるが、毅然とした態度を取る努力をすることである。私たちが持っている中国のイメージと中国が考えて

     いるイメージが違っていると思う。中国は最大時の領土のイメージを持っている。中国が大国として果たすことを

     国際的に求めていくことが大事である。100年前に取られたから取り返すということを軍事的に行わないよう

     することで、日本は民主国家として対話していくことが重要である。

  (キャンベル)多面的な問題であり、透明性を持って取り組むことが大事である。米国の軍部も救援などで中国と協力し

     始めている。TPPを完了させることは経済外交で重要である。日本と米国がやるべきことは中国が国際社会で

     果たすべき役割を持たすことである。ここで出てくることは中国のリーダーが根本的に問題があることを明るみ

     に出すことになる。アラブの春が中国に伝染するのではなく、秩序立った改革が出てくる必要がある。     

   (北岡)中国は軍事的には慎重ではあるが、多くの準備をしている。中国の中身は良く分からないので、こちらは

     着実にやっていくべきだ。孫子の話では10倍なら攻めろ。5倍なら囲む。2倍なら分断する。同じなら攻めないと

     言っている。そのため、こちらは連携していくべきである。2つ目は問題があれば指摘する。3つ目は常に中国に

     オープンであることである。安倍一次内閣の頃、日中歴史共同研究をやったが、中国は戦後編は見せなかった。

     最近、本として、日本と中国で出版されることになった。中国の内部も変化している感じがする。

     前回は、日中のみに研究範囲が厳しく限られていたが、周りの国も含めた研究をやりたいとと思う。中国

     愛国主義の教育の影響が大きい。これを変えていく必要がある。オープンの中には挑発しないこともある


  (スタインバーク)中国の成長自体は歓迎する。増加した力を中国がどう使うかが問題で、平和的な意図が中国になるなら

      それに相応しい行動をとらなければならない。

  (北岡)日本が第一にやるべきことは日本側の防衛力を高めることである。中国の領海侵犯に対して、毅然とした

      態度で対応するということを示すことになる。紛争による問題解決を許してはならない。

  (グリーン)中国の台頭を阻むのではなく、国際社会で大きな役割を果たせるように支援することが必要である。

  (キャンベル)朝鮮問題は長い歴史がある。その間に中国の影響力が強まった。北朝鮮は核兵器や拉致問題を独立

      してしまう。中国に役割を持たすべきだ。北京に北朝鮮は失望している。今のところ大きな進捗はないと思う。

  (小野寺)北朝鮮では軍部は米国を恐れている。テポドンは米国まで届くといい、軍事力を持っていると発言している。

      米国ではこれは中国の問題と言っているが、私は米国のスタンスが重要だと思っている。米国と対等な軍事力

      を持っているイメージを持たさないことが大事だ。

  (キャンベル)クリミア半島の編入のような行為は国際社会で許されるものでないことをロシアに強く伝える必要がある。

      欧米や日本のとった制裁の結果、中国とロシアの距離が縮まっており、両国の接近を懸念している。

  北岡)どの国も抽象的に言うと、国益、安全ということでは同じである。地政学的な研究は重要であり、オレンジ

      革命以降、ロシアの態度が大きく変わった。ウクライナが我々と同じ民主主義になるかが心配である。ロシア

      が中国だけを通してのみ、アジアに関与するのではなく、多様的にする必要があり、もう少し落ち着いたら、

      日ロで話を進めることも大事であると思う。ロシアも法の支配が実現していない。

  (小野寺)昨年のこの時期に日ロ2+2の会議が行われた。過去、最も中が良かった時期である。ウクライナ問題を

      契機に毅然とした態度を取ることにした。最近では、北方のロシア軍が過去最大の規模になっている。ロシア

      軍の活発化に伴い、日本の航空自衛隊の緊急発進は過去最多になっているが、日本は冷静に対応している。

      日本は力による現状変化は認めない態度を取っており、ウクライナ問題で欧米と同調して制裁に参加したこと

      で、かなりの犠牲を払っていることを米国も理解して欲しい。

 「感想」日米の中心で活躍している方々から話を聞くことが出来て、面白かった。しかし、通訳を通じて聞いているためか、
      米国の人の話が抽象的過ぎる感じがした。聞いたお話をまとめるため、日経新聞を買って、読んだら、私のメモを
      大きく違っているのに驚いた。小野寺前防衛大臣の話は印象に残ったところが多かった。