日本経済の展望と成長への道筋  慶応大学 竹中教授

 1.日本経済の状況

    ・今回の内閣改造は大きな意味を持っている。アベノミックスがこれから上手くいくか、2つの考えがある。

    ・最近は矮小化して見ることが増えている。

     例えば、集団的自衛権について、徴兵制につながるという項目に集中的にアクセスが出てきたことに驚いている。

     今の軍事行動は専門家でないと出来ないので、徴兵制では上手くいかなくなっているというのが世界の常識である。

    ・2年前の日経平均株価は8300円であった。今の株価は15600円になっている。3年前の有効求人倍率は0.42であった。

     今の有効求人倍率は1.1になっている。東京は1.5である。ここ2年で日本経済の景色は大きく変わったと言える。

     2007年の日経平均株価は18000円であった。今の方向は正しいが、まだ、十分に成果を上げたとは言い切れない。

    ・第1の矢は黒田さんがデフレを克服するため、大胆にやった。これで、昨年外国人の株の買い越しは15兆円になった。

     第2の矢は財政出動で、昨年は10兆円、今年は5.5兆円を実施しており、そこそこはやっている。

     しかし、2020年までに財政再建するに道筋はまだ出来ていない。これからの課題である


 .財政再建

    ・財政再建には私たちにとって重要である。年金はGDPの割合では既に、英国を超えている。今の年金は経団連の

     会長にも支払われている。年金と保険は同じ倫理である筈だが、今は、年金は権利と思われている。 今の年金は

     平均寿命が65歳で制度設計していたのだから、平均寿命が80歳を超える状況では行き詰るのは当然である。

     財政再建のためには、我々が覚悟する必要があると思う

    ・第3の矢は成長戦略であり、今年の6月に第2段階を出した。この成長戦略は英国では絶賛された。海外のマスコミ

     がこれ程、誉めるのは珍しいことである。しかし、岩盤規制に対する取り組みは進んでいない


 3.
成長戦略と岩盤規制

    ・岩盤規制について農業分野の例では企業農地を持つことが出来ない。昔は農業に従事している人が2000万人

     いたが、今では230万人であり、ほとんどが高齢者で、もうしばらくすると農業に従事する人がいなくなる状況である。

     医療分野では、35年間、日本の大学に医学部が新設されていない状況である。これでは医師不足になる筈である。

    ・こういう岩盤規制を打破するために特区でやっていくことにした。しかし、東京は特区についてはやる気がない。

     東京は企業もお金も入ってくるようになっているのである。一方、大阪は橋本さん等が旗を振っておりやる気がある。

    ・特区に対する体制だけは出来ているが、どう運用していくかである。働き方の問題である。ベンチャーでは終身雇用

     は出来ない。新しい形に変えていく必要があり、柔軟な働き方を考えていく必要がある。

     しかし、日本の正社員は世界で最も保護されている。これを組合が守ろうとしている。

 4.グローバル化

    ・グローバル化が進んでいる。今までの常識を越えた範囲のことに取り組む必要がある。

    ・エネルギー政策では、野田政権時代、民主党は、企業には6重苦があると言っていた。まだ、手が付いていない。

     今までの政府の政策を進めてきたのは、経済産業省の人達である。そのため、経済産業省の所管している事業

     への取り組みが弱い感じである。電力事業だけでGDP4%であり、農業の4倍である。アメリカではシェールガス

     革命と言われているが、再生エネルギーでは日本と欧州である。今、日本は毎年1兆円支出している。その内の

     40%が原子力の支出である。これから日本が取り組む課題は、世界のエネルギー産業を育成することである。

    ・もう一つは資本のリサイクルである。欧州では、今あるインフラを運営する権利を民間に売っている。

     デンマークのAPLは、世界で数多くの主要な港の運営を請け負っている。また、フランスのヴェオリア・ウォーター社

     は世界中で上下水道の事業を行っている。日本もインフラを運営する権利を民間売ることが重要である。


 5.これから取り組むこと

    ・これから2つの方向が必要である。一つは地方を重視することで、アベノミックスが地方に浸透していくようになる。

     しかし、地方へのお金のバラ撒きになることには注意する必要がある。

     もう一つは女性を重視することである。社会の方向を変革していくが、直ぐに具体的な政策を出すことは難しい。

     そのため、何%を管理者にしなさいというような指標を示すことも有効かも知れないと思う。

 「感想」竹中さんの話は何度も聞いているが、今回は分からない言葉が多く出てきた。聞いた感じとしては、成長戦略として
      岩盤規制の打破に向けて、特区を進めたいと考えていること、その中で、東京がやる気がないことが気になっている
      ようであった。最後に、再生エネルギーへの取り組み、資本のリサイクルなどはどのように進めるか気になった。