働かないアリはなぜ必要なのか! 北海道大学 長谷川准教授
1.生物の進化とは
・ダウインが提唱している生物の進化とは、@変異個体の出現し、A変異個体が環境に適していれば増加する。
その結果、B変異個体が固定化するということである。すなわち、短期的に効率の良いものが栄える訳である。
進化は個体の利益を最大にすることであり、一般的に言われている種(集団)のための進化は起こらない。
・自然科学とは、何を明らかにする学問かというと、人為的に作り出されたものでなく、自然に存在する事象を
対象として、どうなっているのか、何故そうのようなものであるかを解明することである。
誰もが納得する説明として、再現性が良く使われる方法である。HowとWhyの両方の答えを出す必要がある。
2.働かないアリはHow&Why 働かないのか?
・アリは本来、地下に住んでいるので、外に出てきたアリはエサを集めているので、すべてのアリが働いている。
人間は外にいるアリのみをみているので、アリは働き者と考えるようになっている。
・アリのコロニーを見ると、何をしているのか分からないアリが多く、70%くらいはいると言われている。
何故、働かないのか考える時、反応閾値モデルということを考える必要がある。例えば、部屋の汚いのが
嫌なアリはある閾値より汚くなると掃除を行うようになる。閾値が違うアリは未だ、掃除はしないことになる。
反応閾値はアリ毎に違うので、働いているアリがいても、働かないアリがいることになる。
・反応閾値モデルが正しいかどうかを調べるために、行動観測による個体の働き具合を評価した。その結果は、
働くアリばかりを集めても働かないアリが出てきた。また、働かないアリのみを集めたら、働くアリが出てきた。
3.何故、働かないのか
・コロニー全体の生産性を高めるためには、すべてが働く方が良いのに、何故、働かないのかを考えた。
@動物は筋肉を使って働くと疲れる。A疲れると作業効率が落ちる。そのため、B全員が働くシステムでは
長続きがしないことになる。
・疲労モデルのシュミレーションとして、働くアリが休んでいる時に、働いていなかったアリが働くようにするように
反応閾値の変異がある方が長く存続することが可能であることが分かった。
4.生き残るためには
・生き物は現在まで生き残ったものしか現存しない。そのため、現在、生き残っているものには長期的な存続の
選択が備わっていない筈はない。企業も生き残っていくためには、長期的存続するようにする必要がある。
長期的存続と短期的効率はトレードオフの関係にあるため、企業も双方を備え持つようにする必要がある。
「感想」タイトルが面白いので、講演を聞きに行った。生き物が生き延びていくためには、短期的効率だけを求めるのではなく、
長期的存続を考えていく必要があるということであった。企業も同様に生き延びていくには、長期的存続を考えておく
必要があると説明していた。何となく、分かった感じがする。