新成長戦略と内外経済見通しについて 東京大学 伊藤教授
1.日本経済について気に留めておくこと
・日本の経済は大きく変わっているため、変化に気を留めておく必要がある。更に、経済はつながっていることを考えて、
為替や金利についてはつながりを良く考える必要がある。
・日本の経済は大きく変わった。海外の方が日本を注目するようになってきた。先日、カナダの財務大臣に会った時に、
日本は何故変わったのかと聞かれた。私は20年間色々なものを貯め込んできたており、それを一気に吐き出している
のだと答えた。個人はお金を貯めてきた。企業は資金を貯めてきた。これらのお金をどう動かすかが重要になってきた。
・デフレから脱却するとどうなるのか、昔、高校時代の同窓生の集まりで、インフレには気をつけろと話したことがある。
当時は、年20数%物価が上がっていた。昔の人は資産や預貯金を持っていた。そのインフレの対策は分散である。
2.デフレからの脱出
・今年の実質GDPは0.5%伸びており、名目GDPは1.5%に下がる見込みである。日銀総裁は2%の物価上昇を目指している。
一方、失業率が下がっている。賃金も上がっており、コンビニのアルバイトの時給が900円から1500円に上がっている。
政府も名目GDPは3%、実質GDPは2%の目標設定して、財政投資や法人減税などに取り組んでいる。
デフレから脱出して、インフレの方向に定着するかがポイントである。ルビコン河を渡るかと言われており、後戻りはない
という意味である。日銀のやった金融緩和は背水の陣であり、退路を断ったということであると考えている。
・何が起きるかというと、ソフトバンクがスプリンとを買うということが起こった。米国3位の会社を2兆円で買ったが、大手
3行が1兆5千億円も貸したことである。日本経済にないものはリスクを取って投資する気持ちがないことである。
お金はじゃぶじゃぶにある。デフレで日本中が草食系になった。どうやって肉食系にするかがポイントである。
・新成長戦略は民間企業をどう動かすである。単に、投資を持ってくることだけでない。法人減税をしても、企業が貯め
込んだら何もならない。次につながることが重要である。給与を上げ、研究することにより、稼ぐ力をつけることである。
このようなことがじわじわ拡がっていくか見ていく必要がある。
3.グローバル経営
・グローバル経済について、日本では一部のみを見て動くことが多い。先日まで経済危機で金利が6〜7%のなっていた
ポルトガルやイタリヤに今の金利は米国より低い。金利が30%まで上がっていたギリシャでも今は6.5%になっている。
国際情勢は断片的にしか入ってこない。そのため、トレンドを見て考える必要がある。リーマンショック後の社会をどう
するのか検討されており、米国の金融緩和を終わられるか議論している。2007年のサブプライム問題も7年経っている。
・予想が難しい。だから1に分散、2に分散ということが重要になる。一般的に日本の経済は良い方向に向かっている。
何もしないで、10年、20年やってきた。どう日本経済を立て直していくのかがポイントである。日本の経済の再生と財政
の健全化をどう両立させるか考える必要がある。借金を減らすことではなく、財政赤字を減らすことである。
4.高齢化対策と年金問題
・これまでは政府が赤字を出して、民間が元気を出してきたが、今回は政府は赤字を増やさないで、税収が増えている。
このまま社会福祉費や医療費が増えていては赤字は減らない。2015年には高齢化に対する対策が必至になる。
結論から見ると、自分の生活は自分で守ることが大事になると言うことである。
・年金は大きく変わる。普通、年金は物価スライドや賃金スライドすることであったが、これからの年金は、マクロ経済に
スライドすることになる。これは既に、法律は可決されており、年金が年0.9%減少することである。これをやらないと日本
の年金は持たない。
・為替とレートは予測できないと言うことを頭に入れておく必要がある。
何故、予測できないかと言うと、世の中には頭の良い人が一杯いる。予測できるとなるとみんなが一斉に対策を打つ
ので、将来起きる筈のことが直ぐ起きてしまうことになる。そのため、為替とレートは予測できない。
・最近、為替はずーと安定している。何かが起きると急にぶれることが起こる。株も同様である。私としては上がって欲しい
と思っているが、分からない。
・オリンピックの2020年や2025年に大きな変化があると思う。今は20年に1回あるかないかの大きな転換点であると思う。
これから色々なことが起きるので、トレンドを見て欲しい。
「感想」 伊藤教授の話は面白かった。特に、為替も株も先は分からないから、分散しておくように言うことは面白かった。
海外の話は断片的にしか入ってこないので、トレンドを見るようと言うことも分かったような分からないような話である。
特に、印象的だったのは、日銀が背水の陣でデフレから脱却するつもりだから、良く考えろということだった。