再点検・日本  付加価値を高められるか
日本人の付加価値アップの方程式  野村総研 谷川理事長

 1.日本の人口減少と一人当りのGDP

    ・日本は人口が増加してきていたが、2008年に1.28億人をピークとして、それ以降急速に減少している。

     どこまで、人口減少するかは分からないが、人口が減少している間は痛みを伴うものである。

    ・世界の1人当たりのGDPはルクセンブルグが1番で、11万米ドルであるが、人口が50万人と非常に少ない。

     2番目はノルウエーで、3番目はカタールで、一人当りのGDP10万米ドルであるが、いずれも産油国である。

     4番目はスイスで一人当りのGDP8.1万米ドルであるが、資源のない国であり、日本の参考になると思われる。

     スイスと日本の1人当たりのGDP2000年までは同じであったが、その後急速に差が開いている。

     スイスはアンフェアと言われることが時々あるが、したたかさが重要になると思われる。


 2.日本のGDPの向上

    ・日本人一人ひとりの付加合価値を上げるには、日本文化のブランド向上と日本人の機能向上、国内に付加価値

     が残る成長産業が必要であり、企業経営と同じである。

    ・日本のブランドとは何かを考える必要がある。

     アブダビは日本が保有する最大の自主開発油田を持っているが、2018年には更新時期が来る。日本との関係を

     良くする必要があるが、アブダビにはフランスのソルボンヌ大学の分校やルーブル美術館があるが、日本のもの

     はない。欧州では文化を売り込むことが多い。

    ・日本は蛇口をひねると飲水が出てくる上水道を売り込むが、世界の常識では飲水は買うということで、蛇口からの

     水は飲まない。世界の常識を理解して対応しないと上手くいかない。

    ・日本は企業ごとにバラバラに営業しているが、もっと上位の戦略と実行が重要で、トータルに展開する必要がある。

     欧州では植民地戦略でのノウハウを豊富に持っている。マーケットそのものを育てることを考える時期にきている。

    ・日本人個人の能力を上げる必要があるが、日本では社会インフラのとらえ方が小さくしてきた感じが強い。

     例えば、通信事業のユニバーサルサービス基金は米国では6000億円であるが、日本は150億円と非常に小さい。

     米国では耳の不自由な人のためのリレー通信もユニバーサルサービス基金で対応することになっている。

     ドイツでは2017年までに巨大なプラットフォームを構築し、製造業の雇用維持や拡大を目指している。

     日本人の競争力を高める社会インフラを充実させるために、官と民の境界領域を見直し、かさ上げする必要がある。

    ・国内に残る付加価値が重要である。原子力発電所を一基受注すると約3000億円であるが、日本の企業が受け取る

     金額は1割から2割である。5年で割ると60億円位であり、日本としては農産物を年間60億円輸出するのと同じである。

    ・原子力発電所もオペレーションまで受注すると日本にとって大きく変わるが、オペレーションまでは受注できていない。

    ・インドの大手ITサービス会社上位4社の従業員数は2013年には13万人いて、欧米の金融機関のITサービスの開発

     しているが、金融機関の仕事は伸びなくなるため、自動車や航空機の設計サービス開発に取り組むことにしている。

    ・工学系大学の卒業生もインドは大幅に増えるため、日本は国内に付加価値が残る産業を大切にする必要がある。

     日本人のDNAに刻まれている強みは視覚、聴覚、味覚などである。

    ・西洋画に多大な影響を与えた浮世絵では絵師や彫刻師、刷り師、版元などの価値は、量産化しても下がらず、人手

     を経るごとに付加価値が上がっている。大塚国際美術館では、著作権を取得して、世界25カ国の190以上の美術館に

     所蔵されている西洋の名画1000点以上をオリジナル原寸大の陶器に再現して、一堂に展示している。世界初の陶版

     名画美術館である。陶版は2000年以上も色褪せないようにできている。

    ・日本に可能性が残されている領域としては、日本人の感性と人間工学や高精細度プリンタ、高精細ディスプレイ、

     アクチュエータ(触覚)、音響技術を組合せて超臨場感を実現する分野がある。機能だけだったものを感性と組み

     合わせて、製品化することにビジネスチャンスがあるものが多いと思う。

    ・日本の企業がバチカン図書館の電子化を受注したが、日本は宗教に世界一寛容であることも受注の判断となった。

     日本人の強みというと、all Japanで捉えて安定安心というが、 外の世界を使って、日本を再定義する必要がある。

    ・以上まとめると、日本人の付加価値を向上させるには、日本文化への憧れの醸成と日本人の競争力を高める社会

     インフラの強化、日本の強みと先端技術の組み合わせが必要である。


   「感想」IT Japanの講演会に行った。色々な人のお話を集中的に聞けて、良かったが、分からない言葉も多く、
      理解できない部分もあった。そのような部分は、聞いたメモのままにしたので、間違っているかも知れません。