スマートオフィス2014
〜快適性・効率性・事業継続性・新ビジネスを実現するオフィスのスマート化
26.2.6 東京大学大学院 江崎浩教授
1.Green Eco System
・インターネットの活用により、節電・省エネの実現に取り組み、危機管理BCPや衆知。効率化を実現しており、これから
は新機能Innovationへの展開に取り組むようになってきている。東大は東京都で非常に多く電力を使っているとの指摘
から、電灯をすべてLED化した。その結果、一般電灯電源は約15%削減に成功したが、副次効果として、発熱の抑制や
虫対策が実現できた。照明用LEDの電力供給をLANケーブルで実現することが出来るようになったことから、LED照明
を細かく管理できるようになった。
・新しい使い方として、生活パターンの把握や健康管理への利活用が出来るようになった。東大では、深夜まで研究する
人が多く、健康管理が課題であり、照明を利用している部屋や研究者が分かるようになったため、連日深夜まで仕事を
している人を把握し、対策することが出来るようになった。このように、照明のデータとして利用できるようになったため、
コミュニケーションや環境衛生としても活用できるようになってきた。
・もう一つは、LED型スピーカの活用である。LED型スピーカを活用することにより、特定の場所にのみ聞こえるようにする
ことが出来るようになる。その結果、特定の人の耳を狙い撃ちしたり、広い部屋で多くのグループが会議出来るようなる。
2.戦略的武器モバイル・クラウド
・孫正義的生活で、エコ・省エネがある。孫さんがiPadとiPhoneだけで生活することにより、個人情報の保護や情報漏洩
対策が出来る。Think Clientは家で充電し、オフィスではバッテリー駆動で利用する。サーバはデータセンタへ疎開させる
ことで、災害対策でも有効になった。最後は、社内ネットをoffにし、3G/LTEで接続することで危機管理も強化できるよう
になるとのことである。
・これをネガティブに考えると、省スペース化で、床面積が小さく出来るとか、電気代が安くなり、利益率が上がる、電気代
を社員につけ回せるとか、情報管理が容易になると考えるようになるが、これをポジティブに考えると、ゆったりとした
業務空間を獲得でき、他のものが買える、自宅でも仕事が出来る、飲んで帰宅出来るようということになり、大きく見方
が変わる。
・Internetの活用に対して、私たちの意識をネガティブからポジティブに変える必要がある。マイクロソフト社では、事務所
の移転で、モバイルコンピューティングによるコスト削減に取り組んだ。初期の入居経費の削減、入居中のコスト削減、
退去時の現状復帰コストの削減と共に、危機管理対策や知的財産保護、遠隔業務機能を実現した。
3.インターネットが変革する21世紀型の社会インフラ
・フランスワインは農業製品であるが、カルフォルニアワインはICTを活用することで工業製品とした。浦霞も杜氏が高齢
化してきて危機になったが、酒作りを手作業から工場化することで復活した。更に、バイオサイエンスに向かっている。
杜氏への対応による生産性向上は工場化により、工場の被災時の代替えによる危機管理に対応できるようになった。
・物流で考えると2つ目の革命が起きている。一つ目は1990年代後半のコンテナ・パレットの活用である。これにより、物流
がアナログからデジタルになり、インターネットを活用できるようになった。2つ目はIT革命で、3Dプリンタの登場である。
既に、プリンタでは自宅で印刷することが進んでいるが、これからは3Dプリンタが進むと思う。これにより、設計図が重要
になると考えている。それと伴に、作業の分散化が進むと考えられる。コード化が物流を根底から変えている。
・ソニーの本社ビルの相談に乗った時に、スマートなビル・キャンパスを考えた。デベロッパである日本生命の話を聞くと、
ゼネコンとベンダーが独自技術でビジネスを組み上げていて、面白いことややりたいことを言うと、不可能ではないが、
高くて時間がかかるとか弊社では出来ないと言う。そこで、後から変えていけるようにするスケルトン&インフィルと言う
考えでビルを建設することにした。IT業界のオープン化に似て、竣工時ピークでなく、継続的に高機能化できるようにした。
・これは1960年代の公害対策の頃と同じで、目的は少ないコストで、多量×綺麗な製品を生産することであり、環境改善
は付随して実現できることで、快適で効率的なビルを作ることにした。
・東大グリーンICTプロジェクトは本郷キャンパス工学部2号館から取り組み、2005年10月に竣工した。その後、全学5主要
キャンパスの見せる化に取り組んだ。産学共同研究開発コンソーシアムを民間主導で作って推進し、新ビジネスの創成
を目指している。これらのグローバル標準化に取り組み、中国とはIEEE1888、米国市場はNIST SGIP CoSを推進している。
東京大学の2011年夏の節電実績は、主要キャンパスでは、ピーク電力の削減率は31%、総電力量の削減率は22%〜25%
となっており、工学部2号館では、ピーク電力の削減率は44%、総電力削減率は31%となっている。連携しなかったものを
連携させると共に、見せる化にすることにより、2年で投資を回収することができた。国からの予算はゼロで、すべて産学
連携の予算で実施しており、インターネット的設計や実装、運用を行っており、経済性を実現している。
・マイクロソフトの本社ビルでは、多種多様なものを統合すると共に、どこからでも制御できるようにしてした。大塚商会の
本社ビルではすべてのデータの見える化を進めている。
4.送電・給電方法のイノベーション
・東大のコンピュータセンターをクラウドコンピューティング化した結果、大幅な節電を実現できた。しかし、クラウドコンピュー
テングの本当の効果は、システムの管理性と活動継続性(BCP)、問題解決の迅速性である。
・トーマスエジソンの逆襲と言われているが、最近は直流がどんどん増えている。ACアダプタが何故こんなに熱を持つかと
考えると、直流方式の方が経済的になると思う。直流化することにより、PoE(パス オン インターネット)と言うように、電灯
のように、コンセントをつなぐとコミュニケーションが出来るようになる。
将来は、データセンタは大量のエネルギーを使うものから、情報やエネルギーの拠点になると考えている。
・ガスインフラの戦略的利用の可能性が出てきた。3.11の時、仙台では中圧の都市ガスは止まらなかったので、災害時の
インフラと活用できた。災害時、石油は流通システムを使うので、制限されるが、中圧の都市ガスは流通システムを使わ
ないので、制限されないので、災害時の効率的なエネルギーとして活用できることに注目されている。日本橋の新しい
プロジェクトでは、災害時のBCPのために、ガスと直流電力を使うエリアエネルギーマネージメントシステムを目指している。
・分散化・多様化する移動性を持つ発電源とネットワーク化する設備、直流化する電力供給のために、データセンターを核
にした、電力、熱、情報の自立型スマートシティを目指しており、2020年に向けてクラウドデザインをスタートさせている。
・エコを、省電・省エネ、質素倹約、柔和温順ということで、我慢、忍耐、縮小と考える場合があるが、ECO-System=Smart
では、独立自尊・切磋琢磨、生産性、効率化ということで、智恵、創造、成長とプラス思考に考えて生き残る必要がある。
今後のスマートシティでは、エネルギーの使い方をいかにプラス思考に持っていくかがが重要であると考えている。
「感想」 江崎教授は飛行機の便の関係で、サンフランシスコからの講演となったが、面白い話が聞けたと思う。
現在の行き詰まりを打破するには、現在の課題をプラス思考で考える必要があると思った。