ビックデータを活かした意思決定が生み出す圧倒的な競争力 Paul Mclnerney様
1.ビックデータは多様な業界で圧倒的な競争力につながっている
・保険会社はキャンペーンによる保険掛け替え率を3倍にした例がある。金融会社では照会数が2倍になり、
支店の収入が3〜5%増加した。通信会社でも5つの販売チャネルにおいて20〜200%の売上が増加した。
・部分的に最適化するためのツールも出てきたし、成果も上がっている。それを会社全体に拡げていくか
が課題となっている。
・TESCOやamazon、Capital One など、ビックデータのリーダーは競争に圧倒的な差をつけてきている。
TESCOはビックデータの活用により、15年間で営業利益を約6倍に増加させている。
・トップ企業は成長が鈍っていく傾向があるが、amazonはダントツトップに拘らず、成長を続けている。
amazonはビックデータ技術への集中投資により、おすすめ商品の表示やメールによる顧客サービスシス
テム、無駄のないサプライチェーンなどのビジネスモデルを確立し、販売効率を飛躍的に向上している。
・amazonのおすすめ商品の表示では売上の35%を作り出している。ネット上の価格情報を収集し、瞬時に
価格設定に反映するアルゴリズムにより価格をダイナミックに設定し、他社との価格差を維持している。
・スペインのBBVA銀行では、極端なマイクロターゲティングにより、BBVA実績を上げている。顧客の
協力を得て、マドリッドのある町での購買行動と場所をフェースブックを使って実験的に記録し、その
データを活かし地域における購買の額とタイプと順番を細かく追跡し、マーケティングに活かしている。
・カナダのロジャーズワイアレスは顧客の感情等をボイスの分析で行い、顧客窓口の強化を実施している。
2.日本企業がビックデータ活用に成功するための4つの優先課題
・最初はロードマップを明確に定義することである。意思決定からスタートし、バランスの取れたアプロ
ーチを用いる必要がある。2つ目はビックデータを専門とする希少な人材を確保することである。
3つ目は組織内のビックデータ利用を推進するプロセスを構築することであり、最後に、フロントライン
のビックデータ利用を可能とするプラットフォームとアプリケーションを開発することである。
・全ての経営レバーを活用することが重要である。より良いデータとより良い洞察が毎日のより良い経営
判断に貢献することになる。方針が策定された後は、データ、分析、ソフトウェア、人材、プロセス、
戦略、意思決定のすべての要素を含めた実行戦略の構築が必要となる。
販促、価格、品揃え、レイアウト、SCM,,ターゲットマーケティング、媒体などすべてのアクションと
データ、分析、ソフトウェア、人材、プロセス、戦略、意思決定のすべての要素を組み合せて、ロード
マップを作ることで、ビックデータを着実に活用を進めることが出来る。
3.ビックデータの技術者が不足している
・ビックデータの取組みの成功に必要な人材は、10年以上のマーケティングとITのマネージメントを経験
し、統計学とコンピュータ工学に精通し、10年以上のビックデータ構築のマネージメントを経験している
ことが必要である。更に、業界のデータの意味合いを読み取る訓練を1年以上受けた経験が要求される。
・2018年の段階で、日本のビックデータの技術者が50%以上も不足する見込みである。
絶対的に不足しているビックデータの技術者を採用するよりも、見込みのある社員を育成する必要がある。
・ビックデータから売る意味合いは通常のプロセスに結合されない限り意味をなさないため、プロセスが
重要であり、ビックデータを利用しなければならいようなプロセスを構築する必要がある。
・フロントラインのビックデータ利用を可能とするプラットフォームとアプリケーションを開発する必要が
ある。業界毎にプラットフォームやアプリケーションは変わると思うので、小売りのタブレットを使った
店員によるリコメンデーションや海運事業のリアルタイムダッシュボードなどある。
「感想」
SASの講演会でビックデータ活用の話を聞いた。ビックデータの専門家は給与が高く、インド、韓国には
多いが、日本にはビックデータの専門家が非常に少ないとのことであった。ビックデータの育成には、
非常に時間がかかるので、現状では自社でセンスのある人を育成するべきだということは痛感した。