賢明なチームをつくるには多様性が必要 日本マイクロソフト 佐々木順子執行役員
1.日本マイクロソフトでの課題
・佐々木さんは日本マイクロソフトのすべての製品に関するサポートを担当している。製品の数は1200以上あり、
ほとんどの人が何らかの形でユーザーである。社員は400名、契約社員が100名、外注が700〜1000名である。
・2年前に日本マイクロソフトに入社した。面接の時に、社長などからは大幅に改革して欲しいと言われた。
日本マイクロソフトに入って調べてみると、何てちゃんとしたチームだろうと思った。すべての項目で目標を達成
している。チームのメンバーは、みんな長時間、良く働くし、社員の満足度調査も非常に高い。問題は見えなった。
そこで、調べる相手の幅を拡げて調べてみた。他の部門からは知られていないとか、期待されていなかった。
部門内はスコア至上主義で軍隊的であり、スコアだけ上げれば良いという雰囲気で社内では非協力的であった。
前任は外人であったが、5年間の任期中にお客様に会ったことは一度もないとのことであった。
2.日本マイクロソフトでの取り組み
(1)最初にビジョンを作った。メンバーはプロになろう。良いプロはチームが必要になるので、プロを育てるチームに
なる。更に、お客様にファンになって頂くチームになることであった。
(2)実現する方法論に悩んだ。過去に2つの改革を経験した。一つはIBMのガスナーがIBMを変革させた時であり、
売る製品がすべて変わり、仕事の仕方もすべて変わった。それでも、IBMを甦えらせた。もう一つは、日本IBM
のハード部門の変革である。社員は1/3に減らせ、1/3は他部門に移し、1/3のNW部門は子会社に切り出した。
これらの時は危機感を煽ることで実施したが、今回は、現状否定は出来ない状況である。
糸口を見つけた2つのことがある。一つは「ビジョナリーカンパニー2飛躍の法則」を読むように指摘されて読んだ。
本当にグレートな組織は人を選ぶ必要があり、日々進化することである。 GoodはGreatの敵であるということで
あり、そこそこで満足していては駄目だということを考えたである。もう一つは、3月11日の東日本大震災である。
福島の原発の事故があり、8時には東京のメンバーは東京から避難し、すべて大阪に移すと決まった。佐々木
さんは休んでいたが、社員は誰からも命じられた訳でないが、日曜日も出てきて、サーバを運搬し、月曜日に
大阪でサービスを行うことが出来た。そのことから、社員を徹底的に信用することにした。
(3)実施した施策として、指令命令型の責任者に辞めて貰った。3週間ほど、二人で話し合ったが分かり合えないこと
が分かり、退職することになった。次は、規律を見直した。その頃、パワハラを受けているという告発を受けた。
調べると、告発した人は評価項目を上げるために、グレーな部分の数字をいじっていた。それを上司が咎めた
ので、告発した。告発した人は辞めて貰った。リーダーも他の部署に出した。それを機会に評価制度を変更した。
個人にスコアを持たすのを止めた。リーダーには数字の話をしたが、社員には一切、数字の話はしていない。
・次は、コミュニケーションの改善である。全体会議で話したり、ブログ、ツィッターで呟いた。ランチタイムに4〜5人
の社員と話をし続け、1年間かかった。それにより、会議でみんなが発言するようになり、活発になってきた。
・部門内の人事異動がなく、力をつけた人は退職していた。そこで、2割位を入れ替えた。特に、各人に後継者の
育成を指示した。次に、採用に手を付けた。クラウドになると、ものは売らないで、サービスがポイントになる。
そのため、人が大切になる。人を支える人を重視したら、数字が下がってきた。そこで、3割くらいは技術的に
とがっている人を採用し、7割くらいは人を支える人を採用することにした。また、コラボレーションをした人、イノ
ベーションをした人、サイレントアウエイをした人を表彰することにした。サイレントアウエイでは、厳しい苦情の
対応に長年努力している人を表彰した。これまでなら、日が当たらい人であるが、重要な仕事をこなしている人
であり、表彰することで、職場の雰囲気も変わってくる。
3.まとめ
・これらの施策に対しは、社員を楽にするためでなく、お客様に良いサービスをするためだと言ってきた。
お客様を中心に、あなた達の成長を支えた環境を作るので、自分で成長するように言ってきた。
最近、少しづつ成果が出てきた。数字の話は社員にはしないようにしている。評価とお客様の話はする。
追いかけるものは、お客様や社員の満足度であり、ついてくるものは、売上や利益であると考えている。
・人間を変えるには、一つ目は時間の配分を変えること、二つ目は住む場所を変えること、三つ目は付き合う人を
変えることであると、大前研一さんが言っている。
私は、社員に町に出るように言っている。そのためには、会社から早く帰るようにする必要がある。
時間当たりの生産性を向上して、仕事を早く終わらせ、会社を早く帰るようにすることがポイントである。
そのため、社員には時間当たりの生産性を向上することを考えるように話している。
・会社の経営を変えるには、今までいなかったような人を経営に入れることである。異質の人を入れると、何故する
のかとか、何故必要なのかという、Why が出てくる。同一の人だけでは what だけしか出てこない。
・これらの改革では、多様性が大切ということが分かった。新人や中国人に言われて、それによって変えてきた。
現代は、正解のない時代であり、聞いたことに回答が出てこない時代であり、どうすればお客様に満足して
頂けるかというには、過去の成功体験に沿ってやっても無理である。そのため、Why により、違った視点でやる
ことが大切であると思った。
IBMから日本マイクロソフトに移った佐々木さんの話を聞いた。外資系の会社で幹部として働く、自分の経験を聞き、
非常に面白いと思った。仕事の仕方は日本の会社と大体同じだと思った。
講演の後で、対談という形で会社で女性が頑張るためには、どのようなことに気をつける必要があるかということを
話していて、大いに参考になった。