バリューパートナーを目指すNTTの取り組み NTT 片山副社長
1.これからの通信サービス
・NTTでは、昨年秋に中期計画でバリューパートナーという方向を打ち出した。ICTの動向を考えると、これからは
サービスとクラウドということになるため、これらに重点を置き、事業を進めることとした。
・これからは、クラウドに機能集中することになり、仮想サーバーや仮想ネットワークに移行する必要が出てくる。
機能やストレージはデバイスからクラウドに移行することになり、デバイスは入出力を中心とするようになる。
・これからの通信サービスとしては、@ビックデータ分析で得られる情報を用いて、インテルジェントなサービスを
提供する、Aクラウドに紐づいた端末を通信に利用できる、Bクラウドの多種多様なサービスをシームレスに
利用できるようになり、様々なデバイスがクラウドのサービスを利用する形態に進化していくと考えている。
例えば、ITSでは、道路の事故状況を分析して、安全な道路を案内するようになることが考えられる。
2.サービスを支える技術
・NTTでは、次世代のサービスを実現するために、ネットワークやデバイス、クラウドに対して研究を行っている。
・ネットワークは増大するトラヒックを支える伝送技術として、コストを上げないで提供するための研究やユーザ毎
に要求されるネットワークが異なるので、柔軟に対応するSDNの技術が重要になると考えて取り組んでいる。
・デバイスとしては、リッチな情報を使い易くするため、豊かなユーザインターフェースが必要になると考えている。
クラウドについては、サーバー攻撃から守るためのセキュリティ技術の実現が決めてなると考えている。
・今後のサービスを実現するには、サービスとクラウド、ネットワーク、デバイスの研究が必要となると考えている。
サービスではビックデータや機械学習を研究している。クラウドについては、セキュリティ保護、仮想化とソフト化、
運用の向上の研究している。ネットワークは高速な中継網を研究しており、デバイスは高品質な映像入出力や
画像認識、音声認識と音声合成、身につける入出力デバイス、センシング技術、五感と脳等の研究をしている。
3.ビックデータ
・ビックデータについては、量と種類、頻度の面から通常のDBでの処理では困難ものが多い状況である。
ビックデータの価値としては、社会や事業に役立つ知見を導出するようになり、現在のような損失の減少から
利益の拡大につながるような利用が増大していくようになる。NTTでも設備故障の発見に利用している。しかし、
少し前の動きを分析すると予見出来ることが分かったので、解約防止や不正利用のチェックに利用していく。
・ビックデータ分析は、より強力な意思決定のツールとして進化していくと考えられている。データの量はセンサー
により、大規模から超大規模になると考えている。処理形態もバッチ処理からストリームデータに対するリアル
タイム処理に変わっていく。分析能力も統計的な処理から機械学習に拡がると考えている。
・アメリカはチャレンジブルな取り組みをするので、日本がビックデータを活用できる環境を作らないと、ビックデータ
の研究開発に大きな差が出て、日本が遅れる恐れがある。国内のコンセンサスを早く実現する必要がある。
・NTTの研究所は、Jubatusという、ソーシャルメディアのデータをリアルタイムに高度解析する技術を研究している。
世界最高速のグラフデータ分析技術では、ソシャルメディアから1億人のつながりを3分で処理することが出来た。
4.セキュリティ対策とネットワーク構築
・サイバー攻撃による戦略では大きなお金は必要としないこともあり、サイバー攻撃が増大している。
この攻撃に対するリスクは次のように考えられるが、守る資産が大きくなるため、リスクが増えていく傾向にある。
リスク=脅威(変化する攻撃)×脆弱性(変化するシステムとサービス)×守るべき資産(変化するデータ)
・サイバー攻撃を完全に防御するのは難しく、費用もかかるため、攻撃を検知することが大切であると考えている。
通信ログを分析し、これまで検知できなかった攻撃を見つけ、攻撃検知の可視化が出来る研究を行っている。
・データを単独では意味のない複数の断片に分割して保管する秘密分散技術を研究しており、データの安全性を
守るようにしている。更に、データを分割したままで計算できるようにする秘密計算技術により、ビックデータなど
の処理で、元のデータが分からないように出来るため、データを秘匿したまま統計分析できるようになる。
クラウド上で利用されたファイルを追跡することにより攻撃を見つける技術も研究している。
・光ファイバーでは100Gの通信速度を実現しているが、2014年迄に日本全体として400G/チャネルを目指している。
毎秒1ペタの世界最大容量の伝送に成功している。(84.5テラ/コア×12コア=1.01Pbs)
4Kを上回る8Kのスーパーハイビジョンに取り組んでおり、2016年には実用化実験放送を目指して取り組んでいる。
・音声合成・音声認識の研究開発も進めており、雑音抑制技術や言い淀みなどによる認識や聞き易い音声合成の
研究をNTTの研究所で進めている。
・先端研究所では、導電性分子や繊維材料による生体電極の実用化や同位体比分析用ガスセンシング用レーザ
技術、腕が長く伸びたように感じる新しい錯覚を利用したマンマシンインタフェースなどの研究にも取り組んでいる。
5.R&D
・NTT研究所では、R&D成果をタイムリーに投入するために、総合プロデューサを作っており、市中の技術や大学の
研究と手を組んでいく考えである。総合プロデューサは、グローバル時代に向けて、オープン化として、すべて自前
でなく、色々なところと協力していくこと、事業もグローバル化していることに対応するグローバル化、お客様が要求
していることに早く対応するためのスピーディ化を目指しており、NTTの持ち株会社の責務である持続的R&Dを含め
4つのマネージメントで取り組んでいる。
6.NTTの事業展開
・NTTとしては、音声通信等やインターネットが減少していることから、収益構造の転換を進めている。
具体的には、グローバル、クラウド、サービスの事業を拡大しており、レガシー系の売上は25%以下にに減った。
映像系が伸びても収益が上がらない傾向があり、ネットワークサービスの競争力を徹底的に強化する考えである。
・クラウドに求められる5つの要件は、@アプリケーションは迅速なサービス提供、A高信頼・セキュアな基盤の提供、
B多種多彩なネットワークの構築、Cマルチデバイス、D強みを活かしたトータルなマネージメントの提供、である。
・NTTはデータセンタを設置しており、NTTコミュニケーションは世界250ケ所でセンタを設置し、世界2位となっている。
ネットワークは長い経験があり技術を持っており、端末はスマートフォンで対応することで、NTTは一通りの技術を
持っている。更に、各国の会社を買い取ったり、連携していき、お客様の要望に対応していく考えである。
・セキィリティについては、北米に拠点を作った。北米に作ったのでは、情報の収集や人材が集め易いためである。
取り敢えず、北米をターゲットに営業して、日本にも提供できるようになると日本に取り込んでいくと考えている。
・NTTはプロバイダーからバリューパートナーに変化していく考えである。お客様に価値を提供できるようにして、
お客様に選ばれ続ける会社にしたいと考えている。
・お客様のニーズに合わせて、お客様に代わって最適なマッティングを行い、Ui/UXの研究開発と使い易い技術を
開発し、より簡単便利にする・更に、先端技術とオペレーションの研究により、より安心安全に使えるようにしたい
と考えている。
「感想」久しぶりに片山さんのお話を聞いた。色々なことを盛りだくさん話したいという感じであった。
内容的には面白かった。私としてはビックデータに向けてトラヒックをどのように増やすのか、
その場合のネットワークはどのようなものになり。それに向けた研究をして欲しいと思ったが、
そのようなことの話はなかった。