IT投資の動向とITを活用した成長戦略のあり方  慶応大学 中村教授

 1.ITと成長戦略

    ・ITとオリンピックの関係を考えるだけで、 4K動画の世界配信等により、日本の経済は相当成長すると思える。

     これまで、ITの話を考えると、事務の省力化や新サービスの開発など、ほとんどがIT投資の話であった。

     今年になると、ビックデータやクラウド、ソーシャルメディアなど、ITを使う話が多くなってきた。そのため、

     提供側からの政策から利用側の取り組みを考えることが必要になってくる。それにより、IT産業の85

     からGDPの470兆円をどうするかということを考えるようになり、非常に対象が拡大することになっている

    ・日本のこれからの課題としては、公共利用が非常に低いこと、企業経営者がITの重要性を認識していない

     こと、社会認識が低いことなどである。IT投資については、米英韓などはGDPの5%であるが、日本は減少

     しており、今ではGDPの3%程度になっている。また、情報の蓄積量もアメリカでは年間3500pbであるが

     日本400pbと格段と少ない状況である。

    ・日本でITを使いこなしている人は若い人を中心に非常に多いことが特徴である。世界中のブログでの言語

     は日本語が37%とトップであり、英語の36%を上回っている。世界のモバイル発信情報量については、日本

     のモバイル発信情報量に比べると世界平均の5倍となっている。

     現在の日本の若い人は、技術力+表現力+ネット  という形態で世界の中で進んでいると考えられる。

    ・昔、大学入試のカンニングにモバイルを使った学生がいた。入試に対する姿勢としては大きな問題ある。

     しかし、モバイルの使い方の基本としては、色々なところから情報を集めて、利用することである。

    ・今の情報政策はITの産業をどのように育成するかということであるが、利用面からの政策が不足している。

    ・昔、任天堂やソニーがハードウェアとソフトウェアを一体化してゲームで世界中の市場を開拓していった。

     その後、インテルやマイクロソフトがハードとソフトの分離を行い、ソフトウェアの専業として伸びていった

     しかし、最近は、グーグルやアマゾンなどがハードとソフトを一体化して事業展開することに向かっている。 

     デバイスはマルチスクリーン、ネットワークはクラウド、サービスはソーシャルが進んでいる状況である。  


 2.新しい産業の立ち上げ

    ・ITを使って産業を作ることに取り組んでいる。その一つはテレビと通信を融合したデジタルサイネージである。

     品川駅の広告から始まり、市場規模が50兆円と大きな大学や病院の情報共有などに使うようになってきた。

     今は防災に使えるようにならないかと考えている。スーパー堤防より、逃げろという情報の方が大事だと思う。

    ・スマートテレビについては、最初はグーグルやアップルがパソコンのテレビ化的な取り組みで進まなかったが、

     日本ではテレビはテレビとして生かしてネットと組み合わせる形態で進んでいる。

    ・日本のクールジャパンが世界に拡がっている。コスプレが世界的に流行っている。

     先日、中国の北京大学で大学院の学生に講義をした。大学院の学生が知っている日本人を聞いたところ、

     1位が日本ではあまり知られていないアオイソラで、2位がドラえもん、3位が宮崎駿さんだった。ドラえもん

     が日本人として知られている2位であるというくらい、アニメが中国でも知れ渡っていることが分かる。

    ・モバゲイやグリーも海外展開を進めている。ファッションも世界の中心になっている。日本のカワイイ文化を

     まとめて、東京クレジーカワイイパリスといってパリで開催する取り組みも行われている。

    ・今の日本では、ITを引っ張っているのは日本の若い人である。子供達がITを使ってコンテンツやアニメを作る

     動きもある。ドコモと慶応大学が組んでワークショップコレクションを行い、若い人を集めたら、10万人が来た。

     教科書をデジタル化するには、法律を3つくらい変える必要があるが、橋本さん等が地方から変えている。

    ・デジタルでの問題が2つある。一つは炎上であり、日本では3倍くらい増えており、対策を検討している。

     もう一つはビックデータの問題である。ビックデータでは数百テラバイトの情報が使えるようになる。そのため、

     新しい産業となるのではないかと思うが、政府や自治体が持っているデータを使えるようにする必要がある。

     そのため、オープンデータのコンソーシアムが出来た。ビックデータをみんなが安心して利用できるようにする
     には、どこまでデータを使って、どこまで使えないようにする
か、その境目を明確にする必要がある。


 3.IT環境の変化

    ・新IT利用ビジネスが登場しており、海外展開も進んでいる。これからは、技術力と表現力とネットを組合せる

     ことで、製造力と文化力、ソーシャル力を融合することができ、日本の特徴して生かせると思う。

    ・大きな問題は、日本人が自分のことを分かっていないことである。世界で最もクリエイティブな国として、海外

     では日本は33%米国は20%と評価されているのに、日本人は19%しかクリエイティブと思っていないことである。

     これからは日本人の創造力を信じて進むことである。

  [感想] 中村教授のお話は非常に面白かった。今の若者の行動を前向きに捉え、従来のIT産業の見方を大きく
       変えて分析し、日本のこれからの進路を説明されていた。これまでの私の考えと異なる面が多く、まとめる
       のに苦労したが、面白いと思った。