日本政治経済の状況について  高橋洋一教授


  1.日本経済の停滞について
    ・何故日本が停滞しているのか、20年位前から考えており、数字を基にして考えてみて、一応の見通しが出来た。
     経済の論文は縦書きになるが、縦書きでは数字と英語を排除することになり、数字で考えたことは表現できない。
     データは嘘をつかないが、データを使う人には嘘をつく人がいる。今日はITの専門家を相手に説明するのだから
     数字の話を中心に日本の経済などの説明をする。結果的には金を刷れば名目GDPは上がることである。
    ・世界のマネー伸び率と名目GDPの伸び率を図にプロットすると、何かの関係があるかもしれないことが分かる。
     2000年と2011年のマネー伸び率と名目GDPの伸び率の相関係数は0.7であり、ほぼ比例している傾向が見える。 
     日本はお金の伸び率がマイナスであり、名目GDPの成長率もマイナスになっている、世界でも珍しい国である。
     このことは金融政策がどれくらい効果があるかを示している。 

 2.金融政策の波及効果

    ・金融政策と波及効果の関連をまとめると以下の通りである。

        マネタリーベース増加 ------→マネーストック増加 ------------          

          ↓0.5年後                                 |                            

        予想インフレ率 ()                            | 2年後   

          ↓       株価()                         ↓ 

        実質金利 () --------→ 消費 ()         GDP  ()  45% 

          ↓          ---→   投資 ()   →    失業率 ()  3.5%   --→ 長期金利()

        為替 (円安)   -------→   輸出  ()         賃金  ()   3%       貸出 ()

                                          インフレ率 () 3%     

    ・経済的な原理では、マネタリーベースやマネーストックの効果は以下の式で表される。

      ・ BEI=5.3+0.05*半年前のマネタリーベース+0.4*消費税織込   相関係数 0.91

      ・ インフレ率=2.1+0.62*2年前のマネーストック増加率  相関係数 0.89

      ・ 一人当りの報酬上昇率=-3.66+1,00*2年前のマネーストック増加率  相関係数 0.93

      ・ 失業率=4.36-0.16*2年前のマネーストック増加率    

      ・ 名目GDP増加率=-2.1+0.9*2年前のマネーストック増加率  相関係数 0.91

   ・このような原理を使いながらアベノミックスは進められており、予想インフレ率やGDPなどを計算して発表している。

    今のところは予想通りに進展していると考えている。これらの状況が変われば新しい対策に取り組む考えである。

   ・株価の動きは大きな動きは把握できるが、日々の動きはこのような原理とは異なるところで動くことが多く分からない。

    しかし、今の日本の株価は出遅れていたのが戻っただけであると考えている。

    これまで、アメリカや日本の株価の変化を見ると、もっとも大きく動いても一年間で40%までであったのに、今年の日本

    の株価は80%も上がっている。これまでの動きからすると、いずれ調整されると考えている。

    株価と地価はインフレ目標には入っていないことを理解しておいて欲しい。


 3.アベノミックスと財政再建

   ・アベノミックスの第3の矢である成長戦略は難しい。岩盤規制というものがあり、規制改革には抵抗が強いことである。

    そのため、今回の取り組みでは、岩盤規制に穴を開けて、ダイナマイトを仕掛けるようなことを実施した。

    期間限定や地域限定という特区制度で岩盤規制に穴を開けたいと考えている。将来的には投資が増える必要が出て

    くるが、その投資を制約する規制があれば、投資が円滑に進むようにするには、規制を外す必要があると考えている。

   ・成長戦略の話をすると直ぐに、財政再建の話が出てくる。財政再建というと増税の話が出てくるが、増税と財政再建と

    は関係はない。税を上げると商品の価格が上がり、売れなくなる。結果としては増収にはならないという事例が多い。

    むしろ、商品の価格は同じで、売上が伸びた方が企業にとっても良く、税収も増える訳である。

      ・基礎的財政収支率=-4.4+0.8*1年前の名目GDP成長率   相関係数 0.92

    上記の経験側があり、財政再建には名目成長率を上げる必要がある。そのためには、マネーストックを増やすことで

    対応できる訳である。税金の仕組みを変更したりする必要jから、税を見直すことはあるが、財政再建とは関係がない。

   ・名目GDP成長率が3%では世界の国では最下位である。名目GDP成長率を45%にしても下から56番目である。

    名目GDP成長率が5%となると、基礎的財政収支率がほぼ0となり、財政再建が実現することになる。

    日本も、世界のほとんどの国が名目GDP成長率を高くするようにしていることを考えていく必要がある。

 [感想]
   前日には竹中平蔵さん、今日は高橋洋一さんの話を聞き、何となくアベノミックスが分かった感じがした。
   高橋さんの経済的な数式には驚いたが、このような数式が当てはまるのならば、今までの政策の根拠は
   何か気になった。でも、データを色々と示して説明されたので、分かったような感じがした。
   それにしても岩盤規制とは誰が守っているのか、その根拠は何か知りたくなった。