成熟した日本ーこれからの日本経済はどうなる! 東洋大 松原聡様
1.2012年の日本経済
・スカイツリーは建設中に東日本大震災があったが、トラブルはほとんどなく建設を進めることが出来た。
原発では、六ヶ所村の再処理システムやモンジュがトラブル続きで、建設が10数年も遅れている。
日本の技術が信頼できるか疑問が湧いてくる。それとも、国が関与する技術がおかしいのか分からない。
・リーマンショックの時の麻生内閣の経済危機対策は予備費は15.4兆円、事業費は56.8兆円であった。
2011年の4次までの補正予算も14兆円となり、ほぼ同じとなり、経済効果はそれなりにあると考えている。
円高だが、サプライチェーンの回復が早く、内需主導の景気回復すると思う。消費税は足を引張ることになる。
2.「成熟」とは何か?
・成熟というのは人に使う言葉であるが、日本とか社会に成熟という言葉を使う時は、長期的な話であると思う。
・経済の成熟化としては、日本のGDPが15年間、5兆ドルと変わっていない。中国のGDPは1995年は日本の1/8
であったが、2010年には逆転した。米国やイギリスは順調に伸びている。ドイツやフランスもGDPは伸びている。
日本が成長戦略が取れなかったことである。豊かになると成長は鈍るが、日本には可能性があると考えられる。
・製造業の海外生産が進んでいる。電機が1995年は10%であったが、27%になった。輸送は4.1%が30%になった。
企業は既に国境がなくなっている。政府は何一つも手を打っていない。有効な施策がない。本気度が足りない。
3.成熟への対応が遅れた!
・少子化と言っているが、1975年には、既に、出生率が2.05を割り込んでいる。そのまま、出生率が減少している。
結婚した人の出生率は下がっていない。結婚するのが遅れているのと、結婚しない人が増えているためである。
結婚後の女性の所得を調べたが、働き続けると2.8億円であるが、出産後会社に復帰すると2億円、出産後パート
で働くと生涯所得は4800万円に下がる。このように日本にはどうしたら安心して結婚させられるかの対策がない。
・「生涯独身で過ごすのは望ましい生き方か」の調査では、2002年には男子は60%だが、女子は50%と減少している。
非嫡子率も、北欧では50〜63%、英仏は45%、米国は37%であるが、日本は2%と非常に低いが、対策はない。
・人口減少に伴い、年金問題が大きくなっており、今のままでは2030年には積立金が枯渇する状況になっている。
4.劣化する日本
・歳出と歳入の差が広がるワニの口を締めるため、財務省は下顎を上げるよう、消費税を増大すると言っているが、
国民は上顎を下げろと言っている。実態的に、毎年170兆円の国債を発行する必要があるが、難しくなっている。
・日本国債のCDS(債務がデフォルトになった場合に保証する費用で1/10000で表す)は上昇しているが150である。
ポルトガルのCDSは1176、イタリアが504、スペインは404、フランスも205と日本より高く、日本の評価が高い。
国債の金利も1%と低く、国際的な評価が高いのが円高に繋がっている。
5.どうする?日本
・日本が国際的に信任が高い理由は、@増税の余地、A高い国内貯蓄、B経常収支である。
・欧州の消費税は20%を越えており、日本の消費税を15%以上上げる余地があると考えている。
消費税を5%上げると13〜14兆円税収が増えるため、15%上げると税金が約40兆円増えることになる。
・2011年の資産と負債残高としては、個人の資産は1491兆円と高齢化になり下がると言っていたが、減少が少ない。
個人の負債は353兆円で、収支は1038兆円の黒字である。一方、政府の資産は488兆円で、債務は1078兆円で
収支は580兆円の赤字である。国全体としては、450兆円の黒字である。
・経常収支では、所得収支は黒字であるが、今年は貿易収支が赤字となり、大幅に黒字が減収した。
貿易収支は東日本震災の影響が大きくいと考えられる。所得収支に急に減少する性格のものではない。
このため、経常収支はしばらくの間は黒字が続くのではないかと考えている。
・これらを総合的に考えると、マーケットが日本の国債を評価しているのは正しいと考えられる。
・このような財務状況を考えると、増税は仕方がないが、実施するタイミングが重要であると考えている。
増税を実施するとしても、成長戦略が出来た後にすべくだと考えている。
・企業が安心して活動するためには、広義のインフラの整備が大事になると考えている。
次の災害が起きても企業活動を継続するためのバックアップインフラの整備が不可欠である。
法人税の引き下げや貿易障壁の解消なども、広義なインフラと考えて、重要になると思う。
電力料金の引き下げや東海道新幹線、東名自動車道等、東海の災害に対する予備の確保が必要と考える。