会社におけるバカの壁 〜世代や組織を超えるコミュニケーション術〜 養老孟司様
・最近、遺伝子について研究が進んでいるが、遺伝子には脳が読んでいる情報と細胞が読んでいる情報がある。
細胞が読んでいる情報は、現実に細かく読まれていると考えられるが、人間はその内容を知らない。
脳が読んでいる情報はATGCの組合せで表されているが、現実の遺伝の1.5%でしかなく、後は分かっていない。
・コミュニケーションを行う時に、情報を伝えるというが、“情報“と言う言葉は最近出てきたものである。
コミュニケーションを行うには情報を人間がやり取りする必要があり、情報となるには読み取る人が必要である。
情報をきちんと読み取ること(これをリテラシーという)を情報化という。読み取る人がいないと情報にはならない。
発信者が送り出した情報は変わらないが、受け手が認識することにより、受取る人側の情報の内容は変わる。
・パソコンを長時間使っている人が多いが、情報処理を行っているが、情報化はほとんど行っていない状況である。
人間が色々なものを見ていても、意識していないと情報化をしていない。最近の人は情報化の能力が低下している。
最近の医師は、責任問題を避けるために、情報化する部分は検査に任せており、目の前の患者の顔も見ていない。
このように、最近の医師は情報処理はしているが、情報化はしていない。しかし、情報処理を行うためには、情報化
して処理する情報が必要であり、このように情報化を疎かにする状況は長く続かないと考えている。
・私が言う“バカの壁“とは、自分に情報に対するリテラシーがあるかどうかということだ。相手の言うことをきちんと
聞いて認識しているかどうかである。昔の人はあまり言葉は使わなかった。身体を使っている時は言葉は使わない。
医学の研究では、現代の人は基礎代謝の40倍のエネルギーを使っている。外部エネルギーが大きくなると人間の
価値が下がる。情報処理しかやらなくなり、情報化が疎かになるため、外部エネルギーを落としていく必要がある。
私が話をするのが苦手な人は、人の話を聞かない先生とお坊さんであり、話しやすいのは弁護士である。
弁護士は相手の話を聞かないと仕事にならないから、人の話を聞く態度や能力に長けているのではないかと思う。
・終戦の時の小学生だった。それまで、国民がお国のためと戦ってきたが、終戦を境として考え方が180度変わった。
学校の教科書も指示された個所に墨を塗って使った。この時、自分は最初から信用したのが悪かったと感じた。
自分で情報をブロックしたら、情報にはならないため、情報をどう取り、信用するかは皆さんの責任である。
戦争のように世界が激しく変わることがある。現代社会で育った人は情報処理のみをして、情報化はしていない。
NHKニュースは公平に努めていると良く言うが、そう思わない。2台のカメラが別々に撮ると内容は違ってくる。
テレビではみんなが同じものを見ると思っているが、世の中には同じものはない。夫婦と雖もいつも見るのは、相手
の顔であり、見る対象が違うと認識する情報は変わってくる。夫婦と一括りにして、当たり前のことを認めていない。
色々な見方が出来るのがリテラシーである。お互いに理解するためには、バリアを低くすることが必要である。
人間は自分の考えを曲げないと気持ちが良く、嫌なことは聞きたくない。嫌なことは経験がないためである。
嫌なことを見ないようにするには、距離が必要であるが、色々なことを知っておくことは大事なことである。
→時間がきたので、後は自分で考えて欲しいとの締め括りであった。話は面白かったが、まとめるのは難し買った。