構造変化する世界経済と日本経済〜企業の活路  日本総研 高橋進理事長  H2491

1.世界経済 〜 新興国シフトは続く

   ・世界経済は一時は良くなったが、また、低迷が続いている。先進国の低迷が続いており、新興国が世界の景気を

    支えているが、牽引役になるには時間がかかると考えられる。当面の鍵は新興国の消費の拡大であると思う。

    しかし、新興国の景気対策で後遺症が出てきた。中国ではバブルが起こり、景気の過熱を抑える必要が出てきた。

   ・また、先進国の景気が低迷しているので、新興国の回復にも影響が出ている。中国では賃金が急速に上がって

    いるが、先行きの不安から賃金が伸びている割には消費が伸びていない状況となっている。


 
(1) 欧州債務危機の出口

   ・財政赤字の拡大、景気悪化、金融不安のトリレンマになっており、景気を良くすることからはじめないといけない。

    欧州の景気を良くするためには、ドイツが頑張らないといけないが、直ぐに動くことは難しく、時間がかかる。

    欧州各国の銀行の監督や財政を統合していくことが必要であるが、45年はかかると思われる。

   ・ユーロ各国の労働コストの経年変化を見ると、ドイツはあまり上がっていないが、アイルランドやギリシャ、イタリア

    の労働コストが大幅に伸びており、競争力がなくなっていることが分る。これを解消するには、債務危機の南欧の

    賃金を下げるか、ドイツの賃金を上げる必要があるが、南欧の賃下げは抵抗が強く難しい。南欧も債務危機で

    少しは賃金は下がっているが、ドイツの賃上げが必要である。しかし、ドイツの経済も陰りが出ており、賃上げ

    難しい状況である。取り組みには日本の金融危機と同様、10年から20年と非常に長い時間がかかる感じである。


 
(2) まだら模様が続くアメリカ経済

   ・アメリカは2つの問題がある。一つは雇用情勢の改善が遅れて、賃金が伸び悩んでいることである。もう一つは

    住宅市場の緩慢な改善である。アメリカの経済は回復しているが、欧州問題などからまだら模様となっている。

   ・将来的にもシェールガスやドル安を考えた楽観論と高齢化による成長率の鈍化を考える悲観論に分かれている。


 (3) 中国経済の展望

   ・中国経済は成長率が急速に下がり、2007年の14%から8%になっている。今年の下半期は少しは持ち直すと思う。

    政府は賃上げにより国内消費を中心とする経済にしたいと考えているが、輸出の伸び悩みで難しくなっている。

   ・今後を見ると中国が急成長を続けることは難しくなっている。農村部から都市部への人口移動がピークアウトする

    共に、人口の増加が行き詰まり、成長率が鈍化すると思う。いつからスローダウンするかということは、既

    スローダウンしているという意見と10年後からという意見があり、良く分らない

   ・中国の成長率が1桁になると、全国が豊かになる前に成長が止まることになり、汚職や非効率なことが問題になる


2.日本経済 〜 景気の現状と展望

   ・足元の景気は東日本大震災の復興需要で回復してきたが、輸出の影響で、一服の状況である。

    2013年にかけては復興需要が景気を押し上げると思う。しかし、その後は消費税の引き上げにより不明確である。

    消費税を3%引き上げると成長率が0.9ポイント押し上げる見込みであり、2014年以降はマイナス成長になる恐れが

    ある。政府は景気対策として公共事業を進めると言っているが、安易な公共事業は課題を残すことになると思う。

   ・日本の経済を考えると、3つのポイントを考える必要がある。

   ・一つは電力の問題である。政府は2030年の方向を検討しており、3つのシナリオを出して、検討している。

    今の原発を動かすだけの15%と今の原発の古いものを止める0%新しく原発を作る25%3つのシナリオである。

    政府は当初は15%を目指していたが、国民の動きから0%にする方向に変わりつつある。しかし、今直ぐシナリオを

    決める必要があるのかは疑問がある。もっときちんと検討して決める必要がるのではないかと思っている。

   ・いれにしても、原発のコストは上がっていく。自然エネルギーや再生エネルギー等への投資も必要となってくる。

    今は電力危機だと思う。再生エネルギーをどう立ち上げるか検討する必要があるが、その前に電力消費をどれ

    だけ抑えるかが重要である。スマートシティ構想が電力危機を克服する一つの方法であると考えている。

    各家庭が電力を使用している状況を見られるメータをつけ、監視することで電力消費を抑えることが出来る。

    今は電力会社がメータを押さえているため、メータが普及しなかった。その面から改善する必要であると思う。

   ・中国でも電力の不足が課題となっており、原発を建設したり、大規模な太陽電池を設置している。このような日本

    の技術が実現できれば、中国の問題にも大いに貢献できると考えられる。

   ・2つ目は成長戦略である。6重苦ということで、日本の企業が海外に出ている。出ていく先としては、一番が中国で、

    2番目がインド、3番目が韓国、4番目は台湾である。韓国、台湾は需要が少なく、輸出を支援している状況である。

    この動きはグローバル化の波が進んでいるということであり、これにより、日本の企業の空洞化が進んでいる。

   ・国内で成長するj企業が育てるかという成長戦略が不可欠である。新幹線や水のビジネスの輸出や患者の輸入等

    が考えられる。エネルギーや環境、医療・介護などの産業を育成する必要がある。これについては、デフレの克服、

    規制緩和、公共投資などの政策が出てきており、対立している。どれが正しいかは分らない。

   ・3つ目は社会保障の問題である。高齢化で社会福祉費が膨らみ続けており、社会保障改革を行わないといけない。

    国民会議を作って検討する予定であったが、今回の国会ではすべて先送りとなった。


3
企業の問題 〜 日本企業の発展に向けて

    ・現在、部品を作ったり、加工することでは儲からなくなった。スマイルカーブと言われるが、研究開発や営業・販売、

     サービスの部分が利益を上げている。日本の企業も研究開発やデザインなどに力を入れる必要があるが、今の

     日本の企業はものづくりにしがみついている感じがある。日本の企業は縦割りであり、視野が狭い。もっと視野の

     広い、横展開が考えられる人を育てる必要がある。製品単体より、システム的に考えられる人を育てる必要がある。

     人材を育成するには時間がかかるが、人材を育成する企業に期待したい。

  [感想]
   今日は日本総研の高橋理事長のお話を聞いた。テレビで良く見ているが、本人のお話を聞いたのは初めてである。
   日本の企業が求められている仕事が変わっているが、今の日本の企業は昔の仕事にしがみついている感じがする。
   もっと若返り、新しい仕事の出来る会社に変換する必要があると思った。