世界の構造転換と日本の進路   日本総合研究所  寺島理事長  H24.7.4

ITとは冷戦後のパラダイム転換

   ・情報ネットワーク革命は、アメリカが冷戦時に蓄積してきた技術を民間に解放して起こったと考えられる。

    軍事用の技術を、まず学術用に開放し、更に、民間用に開放していった。軍事用として、被災に強いパケット交換

    ネットワークが1969年にAPRA-NETとして日の目を見た。軍民転換として1993年にAPRA-NETが民間に接続した。

    ITは、アメリカの冷戦時に蓄積した技術の民生転換であったことが原点であると見ることが出来る。

    アラブの春において、中東諸国の人たちをインターネットがつき動かし、大きな流れを作ったことからも分かる。

    情報は相互依存の過敏性があり、情報があっという間に広がって、過敏に人を動かしていく特徴を持っている。

   ・情報ネットワークが如何に世界を変えているのか認識する必要がある。

    冷戦時は世界は2極に分かれていたが、IT技術により、BRICが台頭し、NEXT11と広がり、多様化している。

    1990年代の冷戦後は、IT技術によりアメリカがよみがえた。更に、ITによりグローバル化が進展していった。

    新しい推進エンジンを見つけて投資を呼び込むことにより、無極化が進み、全員参加型の秩序が生まれてきた。

    一見、世界は混とんとした時代に見えるが、本当の意味でのグローバル化になっているということである。

    世界人口(70億人)の半分がインターネットを利用するようになり、全員参加型の秩序を作っている背景にICTがある。


2.ネットワーク型で世界を考える

  ・リーマンショック以降も、何故、中国のみが成長しているか不思議である。中国をネットワーク型社会として捉える

   大中華圏という考えがある。中国と香港、シンガポール、台湾を有機的チャイナとして捉えると見方が変わってくる。

   踏み込んで考える視界ではネットワーク的見方が必要になってくる。中国は香港の資本技術を使って成長している。

   香港は中国の需要で成り立っている。台湾から中国に100万人以上が移住しており、経済関係は強くなっている。

   シンガポールは1人当たりのGDPは4万ドルで、日本を抜いている。ITとバイオの研究に力を入れている。バイオと

   ITは関連性が強い。シンガポールには病院が多く、先進的研究を進めており、中国の病人を大量に取り込んでいる。

   LCCで最も先行したのがシンガポールであり、中国からの旅行者が非常に多く、中国との関係を強化している。

  ・シンガポールはバーチャル国家として実験国家として重要である。これまでは、資源、工業生産力が尺度であったが、  

   目に見えない財を考える必要がある。シンガポールはソフトパワーに力を入れており、技術、ソフト、サービスがある。

  ・日本もネットワーク発展の中にあることを認識する必要がある。3.11後、日本が円高に苦しんでいるのかが疑問である。

   日本企業が韓国の企業にやられていると言っているのに、何故ウォン安なのかも不思議である。

   欧米からか見れば、韓国や台湾は日本の周辺国であり、日本の技術をてこにして成長していると見えている。

   ネットワーク社会の中で日本も成長している。このようなことを理解するには、物凄く柔らかい世界観が必要である。

   3.11と神戸の時とで違っているのは、携帯電話とコンビニであり、如何にITが変えてきたかを表している。

  ・今後、どうすれば健全なIT社会を作ることが出来るか、又、機械と人間の判断をどう位置づけるかを考える必要がある。

 (感想)
  寺島さんは三井物産に勤務していたので、国際的な見方は面白い。大中華圏の見方は非常に面白い。
  日本に位置づけを良く考える必要があると感じた。特に、最後に話された健全なIT社会とはどのようなものかは
  重要なことと思う。今後、システムが判断をする場面が増えると思うが、人間との分担は十分監視する必要がある。