アジアで勝つ日本経済の今後の課題   住信研究所主席研究員 伊藤洋一  24.6.21   

1.ベトナム、インドの状況

   ・ベトナムのホーチミンでは、みんなバイクで通勤している状況であり、10年前のタイを見ている感じである。

    ベトナムの人は器用で自分でバイクを修理して使っており、10年後みんな自動車を乗るようになると思う。

   ・ベトナムの労働者の給与は8000円程度であるが、現金収入であり、半分は親に仕送りしている。

    労働者の出身はほとんどが農家であり、農家にはほとんどで現金収入がなったため、変わっている。

   ・これまでは安い労働市場という状況であったが、現金収入があるため、巨大な市場となりつつある。

   ・インドはIT関係が成長している。インドのIT技術者で優秀な人の給与は7〜8万円である。

    これらの人たちの間にはローンで家を買うことが増えている。インドの消費は日本に似てきている感じである。


2.日本経済の状況

   ・アジアに最も早く進出したのは韓国である。韓国の人口は4千万人であり、アジアで儲けないとやっていけない。

    しかし、サムソン、現代、LG電子など、代表する企業は少なく、入社する競争が激しい状況になっている。

   ・日本の企業もやっとアジアに進出していかないといけなという感じになってきた。かなり遅い状況である。

    日本企業は技術を持っているが、アジアの人にどのように合わせていくのかが今後の課題である。

   ・日本の家電メーカは不調である。アップルに比べると単体では日本の方が優れているが、組合せが出来ない。

    アップルは色々な製品を組み合せて使うことができ、色々な使い方が出来るようになっていることが特徴である。

    アップルでは、スティーブジョブスだけが製品を考えてきたため、色々な製品がループになっている。

    重要なのは、製品がつながって情報をやり取りすることが大事であるが、日本の企業は事業部制などから、

    各々の製品単体のみを考えて開発しているため、製品との間で情報をやり取りできなくなっている。

   ・ユーザは情報がつながっていることを望んでおり、消費者の重要なポイントとなっている。伊藤さんはfacebook

    やツィッターを使っているが、ほとんどが音声入力で、キーボードで入力していないとのことである。

    iPhoneとドコモのスマートフォンではマルと音声入力した場合、ドコモのスマートフォンでは“丸”が出るので、

    改行するが、iPhoneでは“。”が出るため、文章の終わりに。を使うため、メールを見ると違いが直ぐ分かる。

    自動車業界は非常に遅れている。自動車でも行先を音声入力すると色々な情報を出すようにするべきである。

    トヨタがマイクロソフトと提携するということであるので、自動車業界も大幅に変わり、良くなると思っている。

    通信が限りなくユビキタスになり、奇妙な製品が生まれ出てくる。日本の企業は技術が落ちたわけでないため、

    色々なものをつないで使えるようにするべきであると考えている。


3.欧州問題

   ・欧州危機の中、ダウは12000ドルと高くなっている。ギリシャは欧州の23%であり、大きな痛手にはならない。

    欧州は補助金漬けで、競争力がなくなっている。欧州は働かなくなっている。アメリカ人はまだ働いている。

   ・生産拠点はアジアに集中している。ギリシャ危機で分かったのは欧州に生産拠点がなくなったということである。

    世界の投資家は中国やインドなどアジアを見ている。日本、アメリカ、ドイツは幅広い産業を持っている国である。

   ・日本の経済連のトップは三井化学の会長である。化学業界は日本の輸出額の2位になっている。

   ・今後の日本の企業は縦割りを止めることである。日本には幅広い産業があるのだから、ユーザが要望している

    ように、色々な製品とつなげて、情報のやり取りが出来るようにすることである。

    欧州危機とか、世界危機と言われているが、日本で作ってきたものを作る企業は必ず増える。

    景気の良し悪しに気を取られるのではなく、今何が起こっているかということを良く見ていくことが大事である。

    これからは製品に個性が必要になる。豊かな消費者の気持ちをつかむことが重要である。


4.質疑

   Q欧州問題は日本にどのように影響すると考えると良いか。

   Aユーロは2002年に出てきたもので、まだ10年しかたっていないため、本当に定着している状況ではない。

     ギリシャがユーロから脱退しても何も起こらない。日本への影響は、一時的にユーロ高になるくらいである。

   Q日本の寿司など飲食業が中国などに進出しているが、どのように考えると良いのか。

   A日本の食品はブランドになっている。中国やアジアでは、日本の食品は安心だということが定着している。

    中国では15%の人が文字を読めない。インドでは35%の人が字を読めない。製品に何を書いているか分らない

    ので、作っている社員は何を作っているのか分っていない人がいるのだから、食品は信用出来ない。

    中国人が日本に来た時、マツキヨで漢方薬を買っていることを見ても、日本の製品は安心だということが分る。

    日本やロシアは99%の人が字を読めるため、作っている人は何を作っているのか知っているから安心できる。


5.感想

   ・伊藤様のお話を久しぶりに聞いたが、見方が面白いと思ったが、まとめてみるとなかなか難しかった。

    指摘されている製品単体としてではなく、色々な製品をつないで使えるようにすることは、大事なことと思った。

    日本企業の事業部制は時代遅れになっている感じで、全体を見て良いサービスを提供する企画部門を強化する

    ことが必要を感じた。