音楽業界での最新SNS活用 EMI 梶望様 H24.6.6
1.宇多田ヒカルのデビュー戦略
・梶様が宇多田ヒカルに会ったのは、宇多田さんが15歳の時だった。梶様も若く、デビュー戦略を机上で考えていたら、
上司から全国の放送局をCDを持って回れと言われた。当初はアポなしで全国のFM局をCDを持って回った。
最初はリスナーから誰が歌っているのかという反応が返ってきた。九州や北海道のFM局が取り上げてくれた。
全国のFM局ではパワープレイと言って、1ケ月間積極的にPRしてくれる仕組みがあり、宇多田さんを取り上げてくれた。
・次に取り上げてくれたのは、クラブDJで、5月から半年間、地道な活動の結果、トレンドリーダーのシンパが出来てきた。
それらの中での小さなアクションをニュースとして発信した。そのような活動の積み重ねが、最後にテレビを動かした。
当たり前にやることを地道に取り組むことで、宇多田さんの歌が良かったこともあり、全国に広がるようになった。
・当たり前にやることをやってきたことであるが、結局は結果が出たプロセスのみが戦略として評価されると思った。
2.音楽マーケティングの変化
・過去の音楽マーケティングは、アンアンなどの有効なメディアに取り上げて貰うことであった。みんなが見ている番組
で取り上げてくれるとそれだけでCDが売れた。露出すれば、露出するほど、売れた足し算の時代であったと思う。
・現在の音楽マーケティングは、有効なメディアに取り上げて貰うより、オンラインツールで流れた方が効果的である。
ソーシャルメディアでは、聞いた人が知合いなどに流してくれるので、沢山の人に短期間で知ってもらうことが出来る。
現在の音楽マーケティングはデバイスとツールの掛け算のようなものであり、掛け算のマーケティングに必要なこと
は、コンシューマが、個人の気づきを作り、行動する動機を作り、環境の絆を作るように、発展させる必要がある。
どんなメディアと協力して、どのような打ち出し方で、どんなデバイスやツールを駆使するか、検討する必要がある。
・どんなワクワクするストーリーを流出できるかがポイントであり、自分のことに置きかえ、共感できるかが重要である。
3.SNS活用と効果 : ネットは戦略、戦術なので、ビジョンが大切になる
・SNSキャンペーンだけで音楽が売れるか言えば、否である。MySpaceだけでブレイクしたアーティストはいない。
メディアはラジオやテレビのように一方的に流すものであり、元来目的を持って探すWebはメディアではない。
SNSは人と人をつなぐ有能なツールであり、SNSの使い方次第で、効果に大きな差が出てくる。
・SNSを活用する条件としては、@本人が面白いと思っていること、A本人が自分の発言に責任を持つ覚悟を持って
いること、B炎上時にバックアップできる体制を持つことである。SNSでは逃げると世界は追いかけてくるものである。
・ソーシャルキャンペーンのポイントでは、動画が重要なメディアになってきた。20代は特に動画が上位を占めている。
宇多田さんが、みんなに笑顔が広がれば、きっと世界は良くなる、絶望の反対はユーモアであると言っていた。
面白い人と面白い仕事をするには、自分自身が面白くなることが大事であると宇多田さんが言って、活動していた。
・面白い場所(人)には人が集まるので、メディアで面白くする。デバイスとプラットフォームが新たなマーケットを生成する
時代になり、今のレコード会社は上手くいかなくなった。既成概念を壊した時に新しいカルチャーが創造されると思う。
→宇多田ヒカルさんのマネージメントをしてきた梶さんがこれ迄の取り組みと最近の動きを説明していて分りやすかった。
特に、最近の不景気感が蔓延している現状では、自分自身が面白くなることが大事であるということは共感した。