世界経済の今後と投資の重要性 慶応大学 竹中平蔵教授 24.5.26
1.日本経済の現状
・今の日本は内向きになっている。現在のように大きく変動している世界経済に関心を持つことは重要である。
投資は経済の基礎であり、日本人はあまり興味を持っていないが、経済発展のためには重要である。利益を
すべて使い、投資をしなければ、次の年も同じ売上しか上げられない。国も投資をしなければ、GDPは増えない。
・所得には労働所得と資本所得がある。日本は労働所得は増えなくなったが、資本所得はこれからも増やせる。
日本の家計の金融資産は1400兆円であり、これを有効に活用する必要があるが、今の日本は出来ていない。
国会で審議している消費税を上げても13兆円であるが、1400兆円の1%の運用利益があると14兆円になる。
これからの日本は持っている金融資産を投資することにより、経済を成長させることが出来ると考えている。
2.世界経済
・OECDでは今年の成長率が米国が2%、日本も2%、欧州は0%と予測しているが、今年は悲観的予測を出している。
悲観的予測ではすべても主要国の成長率がマイナスとなっている。これは現在の予測が難しいということである。
今はギリシャ問題があるのに、ユーロが暴落しないことが問題であると考えている。ドイツとフランスが守っている
ため、ギリシャのファイナンスは出来る。ギリシャ国債を多く持っているフランス、ドイツの銀行を守る考えである。
フランスやドイツの銀行がおかしくなったら、決済が出来なくなり、リーマンショック以上の問題になる恐れがある。
・アメリカは比較的良好に運営している。リーマンショック以来、アメリカの進んでいる方向は正しいと考えている。
日本とアメリカの共通の課題は、失業と格差の社会不安と何の解決にもならないポピリズムである。
・BRICsは人口が大きく、発展力がある。購買力で測ったGDPはBRICsが25%で、米国の22%、欧州の20%を上回る。
中国は当初は生産基地と考えていたが、最近は人口が多いことから消費地と考えるようになった。
2008年のリーマンショックの翌年、2009年の中国の成長率は9%となった。世界経済で見るとこれは驚くことである。
2005年以降、急成長が期待される新興経済発展国とされるNEXT11も多くは大きな人口と資源を持っている。
3.世界経済の今後
・昔は人口が多いと食べさせないといけないので投資が出来ないため、悪いことだと言われてきたが、最近は経済
発展のために人口が多い方が良いと思われるようになっている。中国が人口の多いことが良いことを証明した。
これは新しい傾向であり、グローバリゼエーションにより、人、資本、経済すべてがフラットになった結果である。
・中進国にワナがある。人口が多いとある程度までは上手くいくが、それからは上手くいかなくなる場合がある。
イノベーションを起こせるかどうかである。教育問題、経済のインテクレーションの問題を解決する必要がある。
・日本はグローバル化が遅れたので低迷している。韓国は金融問題以降、グローバル化に取り組み急成長している。
日本は膨大な金融資産を持っているので、従来からのしがらみから抜け出し、グローバル化を進める必要がある。