クラウドコンピューティングへの期待 東京海上日動 渋谷部長
1.ユーザ企業の期待
・ユーザ企業として取り組んできた者としては、コンピュータは最もユーザに負担をかける商品だと感じてきた。
コンピュータは設置場所を選ぶし、巨大な冷蔵庫のようなデータセンタが必要である。OSのバージョナップが
度々あり、その都度、試験することを要求される。専門人材がいない企業で使いこなせているか心配である。
・東京海上ではシステム部門1427名の内、2割が運用管理の業務に携わり、開発要員は67%になっている。
運用管理はとても大事な仕事ではあるが、個々のユーザ企業が負担しなければならないのかと考えていた。
システムを使いこなすには100名位の要員が必要であり、1000人規模の大会社でないと使いこなすことが出来ない。
世界中のシステム開発の70〜80%が失敗していると言われているが、これで良いとは思わない。
2.クラウドの課題等
・システム開発は建築の工程と似ている。建築は見えるから良く分かるが、システムは見えない。だから、いつも
すれ違いのコミュニケーションが生じる。見えることは大事である。見えないものを見えるものとするため、数値化
したり、ビジュアル化、アジャイルに取り組んだが、もっと、ソフトウェアを見える商品にするかがポイントである。
・クラウドになると、電力のようにプラグをさせば使えるようになり、所有から利用を実現出来ると考えている。
東京海上ではForce.Comを多用している。Force.Comにより、開発面、運用面、コスト面で効果が出ている。
・エジソンは電灯を作った後、電灯システムという社会インフラを作っている。エジソンが電灯システムを作ることに
より、急速に大きな発展を実現した。日本でも、それ程、期間を置かず、電灯システムを実現し、発展している。
・コンピュータも、ベンダーと一緒に社会インフラにつないでいって欲しいと考えている。
コンピュータも所有から利用へ変化していく姿が見えると良いと思う。品質面での課題も少なくない。
・ITの世界は失敗に学ぶ世界であり、ベンダー等が持つ課題と解決策を公共知としてシェアされるべきである。
ITの失敗に対しては、報道関係もトラブルをセンセーショナルに扱うべきではないと考えている。
3.メーカやベンダーへの期待
・クラウドだから情報やデータがどのように扱われているか見えなくても良いと思わないで欲しい。東京海上が
クラウドに情報やデータを預ける場合でも、預けた情報とデータの管理責任は東京海上にある。
そのため、お客様への責任として、情報とデータが何処に保管されているか知るべきであると考えている。
クラウドだから見えなくて良いとは考えられない。社会インフラには透明性は不可欠である。
・アップルやグーグルなどは世界的に活躍している。日本のベンダーには規模の経済を達成する道筋を見せて
欲しいと考えている。更に、日本のベンダー各社には社会インフラを構築するスタンスを持って欲しいと思う。