スマートモバイルが巻き起こす情報武装革命U トーマツ 八子知礼様
1.スマートホン/タブレットの動向
・世界の人口が69億人なのに、モバイルデバイスは50億台を超えており、今年末には70億台になる見込みである。
パソコンは12.7億台で、ノートパソコンは増えているが、ディスクトップは減少しており、全体では横ばいである。
・日本のスマートフォンは伸びているが、個人利用が50%と伸びており、法人は37%の伸びで、まだ利用は低い状況である。
タブレットを含めたスマートデバイスの出荷台数は、2015年にはノートパソコンの出荷台数を越えるとの予測である。
・iPhone以前の携帯電話は電話の延長であるが、iPhone以降のスマートフォンはパソコンの技術をベースとしている。
携帯電話では、アプリはプリインストールであるが、スマートフォンはダウンロードしてインストールして利用する。
使い勝手の向上を目指し、画面の大型化とモビリティの向上を追求したのが、スマートフォンとタブレット市場である。
今後、最も成長するのはタブレットで、2012年にはネットブックを逆転し、2015年には全PCの23%に成長すると思う。
(現在はiPadが独走しているが、マイクロソフトからWindouws8が出てくるとタブレットにも変化が起こると考えられる。)
・スマートフォンのプラットフォームはAndroidがiOSより増えており、2011年第3四半期末では2倍程度に拡がっている。
Androidは1.5年の間に3度もメジャーバージョンアップしており、アプリ開発のサイクルが追いつくかの課題がある。
iPhone例年Xmas商戦で1000万台以上販売しており、北米で1160万台、その他で1200万台と順調に売れている。
iPADも順調で、2011年第3四半期の出荷台数は1500万台を超え、最大手メーカであるHPのパソコンを上回っている。
電子図書で稼ぐため、Kindle Fireは安く販売されており、タブレットデバイスのシェアが変わるか注視する必要がある。
・アマゾンなど、モバイルクラウドは豊富なコンピューティングリソースとコンテンツの垂直モデルで成功している。しかし、
日本の企業は垂直モデルを出せていない状況が続いている。モバイルクラウドは200〜250%成長する見込みである。
2.ワークスタイルの変化と生産性改革が期待される領域
・音声からデータ、デスクワークからモバイルワーク、そしてクラウドワークへと発展している。業種や職種によっては、
モバイルデバイスで片手操作し、立ったまま仕事をするワークスタイルが当たり前の時代が来るように思う。
・情報通信業は労働生産性指数は上昇しているが、建設、不動産、金融業、卸売業などでは10%以上下落している。
これまではホワイトカラー中心のICTであったが、スマートデバイスとクラウドによりブルーカラーの領域に進むと思う。
生命保険や販売代理店等の店頭・カスタマーフロントでは、スマートデバイスを導入して、紙カタログを廃止すること
により、お客様満足度を向上したり、業務のスピード化と業務の品質の均質化を実現している。
検針・定期検査や機器のメンテナンス・オペレータ等のフィールドサービス業務では、業務レポートでスマートデバイス
を導入することにより、コスト削減と業務のスピード化を実現したり、報告品質を改善している。
3.スマートデバイス導入の落とし穴
・パソコンは紛失したり、情報管理の問題から、パソコンを持ち出すことを禁止している企業が多く、生産性が低下して
いる。モバイルワークを推奨する製品やサービスを提供している企業ほど禁止しており、使い勝手を縛り付けている。
新しいデバイスに対する統一的なポリシーがない企業が多く、タブレットもパソコンと同様に持ち出し禁止にするか?
・過剰なセキュリティポリシーの適用により、生産性が低下するばかりか、ユーザには抜け道を探す場合が出てくる。
企業の情報システム部門は一律の過剰なポリシーを改める時期に来ていると考えている。
・スマートフォンやタブレットを導入している企業も、メールとグループウェアを読める程度で利用している企業が多い。
スマートデバイスの導入に失敗している事例の典型パターンとしては、セキュリティポリシーにケータイとスマフォ
の区別がない、落とした場合のデータの閲覧が出来る、データのバックアップが出来ていない、アプリケーションは
自分でインストールする、個人利用と企業利用が混在しているなどである。
・タブレット上のアプリケーション環境では、マウス操作によるウィンドウシステムには限界があり、合わない。
タッチ操作の時代にあったユーザインターフェースが必要となっている。
・SaaSやアプリが氾濫しており、職種やワークスタイルに合ったものを選ぶことが出来ないなど使い難い状況である。
スマートデバイスを業務に導入するには、業種別、職種別に最適なアプリを選定し、グラフィカルなダッシュボード・
帳票を導入することにより、出来るだけ一画面に統合したシングルビュー環境を構築する必要がある。
4.スマートデバイス導入のポイント
・海外では、企業のIT部門が個人のスマートデバイスであっても、一定のサポートをしている企業が多くなっている。
最近、BYOD(Bring Your Own Device) と言って、個人が使い慣れ、アプリケーションもカスタマイズしているスマート
フォンやタブレットなどのデバイスを、会社内に持ち込んで業務端末として使用することを認める考え方が出ている。
・スマートデバイス導入のポイントとしては、次のようなことがある。
@クラウド側かデバイス側かを意識させないこと、Aネットワークに繋がっていなくても動作すること、
B業種別、職種別に最適なアプリを選定すること、C複数SaaSをマッシュアップした環境を構築すること、
Dグラフィカルなダッシュボード、帳票を導入すること、E一画面に統合したシングルビュー環境を構築すること、
Fタッチ操作ユーザーインタフェースに即したアプリを実装すること、
Gセキュアなアクセス環境を構築すること、H効率的・効果的に管理可能な環境(MDM等)を導入すること
・クラウドはネットワークに繋がり、自分や自社が持っている大切なもの(知識、リソース、感情)を共有する事から始まる
と考えている。モバイルクラウドでは更に、リアリティ、モビリティ、パーソナリティが加わると思う。