スマートデバイス実践活用の今  野村総合研究所 深津康行様  23.12.22

1.スマートフォン・スレートPCのビジネス活用動向

   ・スマートフォン・スレートPCは近年劇的な進化を遂げており、ビジネス利用への期待が高まっている。

    従来型携帯電話と比べると、大画面、高処理性能、アプリケーション開発環境の充実などに優れている。

    ノートPCと比べると、起動が早い、タッチ操作による直感的操作性、通信性能、低価格等に優れている。

   ・インターネットの各種サービス等の利用に適したスマートフォンが台頭し、その普及は今後も加速する。

    タブレット端末などスレートPCの販売台数は急速に増加し、2015年には現在の2倍以上になる見込みである。

   ・業務に活用しやすい10インチサイズのスレートPCが本格的に登場し、iPad以外の選択肢が増えている。 

   ・モバイルソリューション活用の目的は、顧客への説明力向上や担当者のスキルアップ、ペーパーレスによる

    個人情報漏えいの防止、入力コストや端末コストの削減など様々であると共に、課題意識も様々である。

   ・企業では、モバイル端末単体で動くか、グループウェアなど社内業務の一部と連携する利用が大半であり、

    基幹システムと連携するような本格的なモバイルソリューションとしての活用はこれからの状況である。

2.スマートフォン・スレートPCを活用した業務システムの検討ポイント

   ・スマートデバイスを業務に活用するには、端末の選定、運用環境の整備、アプリ開発を考慮する必要がある。

   ・端末の選定では、機種を絞ることによるコスト削減や、端末特性に大きな違いがあるために、利用環境や利用

    シーンを明確化にする必要である。セキュリティ対策ソフトの対応範囲やアプリ開発環境も考慮すべきである。

   ・端末運用については、情報漏えいリスクの対策や端末状態の適性維持、業務外利用の制限を考慮する。

    スマートフォンを業務に利用するには、盗難・紛失対策や業務端末として適正に利用させる必要がある。

    スマートフォンの情報保護や利用の適正化にはMDM導入が基本だが、複合的に対策をとることが重要である。

   ・最近のスマートフォン向けセキュリティ対策のトレンドは、端末にデータを残さないよう端末をシンクライアント化

    する仕組みである。将来的には業務利用に応じて業務アプリを仮想化して配信する仕組みが期待さる。

    OSや端末ベンダもセキュリティ対策を進めているが、端末の状況について継続的なウォッチが重要である。

   ・業務アプリとしては、アプリの迅速な開発と配信や、データのリアルタイム性確保により、ビジネススピードに

    追随することが必要であり、未成熟で変化の激しい技術に対して自己責任で対応することが要求される。

3.業務システムとの結合度に応じた対応

   ・レベル1:社内システムへ単なるファイルアクセスであっても、端末側に情報を残さない仕掛けがポイントである。

    WebコンテンツはWebアプリ構成で配信し、端末に情報を残さないため、セキュアブラウザ製品を利用する。

    Office文書などWebコンテンツ以外のものについては、仮想化構成で配信する。

   ・レベル2:グループウェアや情報サイトとの連動では、既存のメールシステムやグループウェア資産を出来る

    だけ簡単にスマートデバイス端末から利用できるようにすることがポイントである。

    社内グループウェアへの接続と簡易リモートデスクトップライクなUI配信機能を提供するプロダクトを導入する。

   ・レベル3:既存の業務システム資産の一部を切り出し、出来るだけ簡単にスマートデバイスから利用できる

    ようにすることがポイントである。

    既存の業務システムがWebアプリの場合は、セキュアブラウザ製品とコンテンツ変換プロダクトを導入すると

    共に、スマートフォンやタブレットで見やすい画面レイアウトに調整する

    既存業務システムがWindowsアプリの場合は、仮想アプリに変換し、仮想アプリ方式で配信する。

   ・レベル4:スマートデバイスのメディア特性を考慮し、最適化された業務アプリを構築・運用するアーキテクチャを

    しっかりと整備することが重要である。

    アプリ配信やデータリアルタイム性の観点から基本はWebアプリとして開発するが、スマートデバイス特有の

    機能を最大限活用するため、一部はネイティブアプリ化を行い、通信状態が不安定な環境でも業務継続する

    仕組みを実現する。HTML5を活用して、タッチパネル式のスマートデバイスに最適化されたUIを追求する。

   ・開発技術は乱立状態であり、優位性のあるプロダクトがなく、ベストプラクティスを選択しずらい状況である。

   ・スマートデバイス向けアプリ開発では、端末やプラットフォーム、開発技術に課題があり、品質確保が難しい。

    端末については、バッテリーが直ぐなくなるとか通信がしばしば途切れる課題がある。プラットフォームでは

    バージョンによる差異が大きく、APIの品質が不安定で、プロセスダウンが頻発する問題がある。

    システム開発の品質管理が重要性を増しているが、テストのアウトソース化が一般化してきているが、開発

    現場での工夫対策とノウハウ蓄積が重要である。 

   →スマートデバイスを利用した業務システムの開発、導入が本格的になるにはまだ、時間が掛かる感じである。