スマートフォン時代の新しい社会とビジネス 慶大 夏野教授 H23.12.14
1.15年間を振り返ってみる
・1998年に飛行機の予約をWebで出来るようになった。今では70%がWebから予約している状況になった。
この年に楽天株式会社が設立され、googleが登場してきた。また、1998年にはネット証券が登場した。
一般の人がインターネットを使うようになってから、15年になり、社会の環境が大きく変わった。
・1990年後半には、インターネットの信頼性に不安を持っていた企業も、フロント系業務をWeb化するようになった。
2000年代前半には、あらゆる情報がWebに上がるようになり、個人の情報収集能力が飛躍的に良くなった。
Webに情報を上げた方が色々なメンバーから協力して貰えるようになり、積極的に情報を上げるようになった。
2000年代後半には、個人の情報発信能力が飛躍的に伸びた。しかし、企業はセキュリティ問題に直面した。
その結果、企業は社員のモラルが高いのに、米国や中国のようにITを性悪説で見るようになり、停滞している。
2.クラウド革命とは何を意味するのか?
・Webの進化により、パソコンではパッケージソフトが不要になってきた。このため、個人型から共有型になった。
Facebookでは個人のつながりがすべて見えるようになっている。ツイッターでは色々な人から返ってくるので、
色々な見方や考えが分かり、勉強になることが多い。新しい発想が出来るようになり、イノベーションが出来る。
夏目さんのツイッターでは、予想しないような反応が返ってくることも多いので、見方や考え方が変わってきた。
・クラウド革命は、信長の鉄砲のようなものと考えている。それまでの戦法を大幅に見直す必要があると同時に、
指揮官やリーダーが自ら使い方を考えないといけない問題である。経験のある人、判断する能力がある人こそ
ITを使いこなさないといけないが、今の日本では、特に、経済界のリーダーはITを使っていない状況である。
・管理型ネットワークからオープン型になると共に、知識革命が進み、複雑系的知識ネットワークが実現している。
ダボス会議のWGでは、ソーシャルネットワークを社内に導入するにはどうするか検討している。日本からは
夏目さんだけが参加している状況で残念である。この検討ではセキュリティの概念を革新する必要があると思う。
・複数の異なるデバイスからのアクセスが出来るようになり、仕事のやり方を思い切り変えられる時が来た。
コンテンツの融合が加速し色々な端末から利用できるようになり、端末に特化したサービスは衰退していくと思う。
3.スマートフォンとは何か?
・一般的には、タッチパネルと汎用OSと言われているが、iPhonenが使っているiOSは汎用OSとは言えない。
タッチパネルの進化は著しく、当初の使い難さは払拭された感じであり、UI革命が起こっている。
アプリの原点はJAVAケータイであり、iModeで実現してきたアプリがスマートフォンで出てきたいという感じである。
昔は、ノキアが250ドル以上の携帯電話をスマートフォンと呼んでいた時期があり、定義がはっきりしていない。
・スマートフォンはパソコンの延長線の概念で作られたものであり、ネット接続が主機能で、音声は副機能である。
そのため、スマートフォンの種類によっては、ネットを利用していると、音声通話が使いえない機種もある。
・セキュリティや責任範囲はパソコンの延長線であり、トラブルに対しては利用が責任を持つようになっている。
電話の延長線から生まれた高機能ケータイとは考え方が違い、作り方も違うものである。
スマートフォンは、回線の種類は問わないが、高速回線を使うことが前提となっている。
・世界のスマートフォンはインターネット接続が可能なケータイである。海外のケータイはeメールすら満足に使え
なかったし、ウエブは論外という状況であり、通信業者もショートメールで稼いでいたので後ろ向きであった。
2000年前半に日本でiフォンが出来、成功したことが、世界ではスマートフォンで引き起こされている状況である。
・日本ではキャリア主導でない、海外と共通のタッチパネルケータイということである。日本人はiPhoneをイメージ
してandoroidを使っているという感じである。これまでは通信技術を持たないとケータイが作れなかったが、
通信技術がコモディティ化されたことにより、パソコン技術でケータイが作れる時代になったということである。
iPhoneの他に、iPADを利用しているが、iPADは非常に使い勝手が良い。iPhoneとiPADは機能が重複している
ので、両方を持つ必要はない。ケータイは電池の問題が根本的にあり、複数のケータイを持っている人が多い。
タブレット端末は電池の持ちも良いので、パソコンに代わるものとして、大きな影響を及ぼす可能性がある。
4.クラウド+スマートフォンで何が変わったのか?
・業界進化は通信業界からネット業界が主導するようになり、サービスの進化はアップルとグーグルが主導する。
ノキアのような端末メーカは主導権を失い、通信業者キャリアは主導権を放棄したことが特徴である。
・これまでのように通信業者にコントロールされた進化のスピードは、ユーザが求めるものを徹底的に追及する
進化スピードになっていくと共に、ネットワークの効率は軽視される方向に進むと考えている。
・ビジネスモデルを正しく理解することが必要である。日本の通信企業はトラフィックを増やすことが目標である。
グーグルは広告収益を増やすことを第一目標としており、Androidなどはそれを支援するために行っている。
アップルはiphoneやiPADの販売を目標にしており、その他の活動はそれを支援するために行っている。
5.クラウド時代のITの未来
・モバイルとパソコンは実質上完全に融合し、コンテンツもアプリも完全に融合する。
・すべてのデバイスがネット市場に統合され、デバイスの主役はソフトからHTML5対応のブラウザになると思う。
・コンテンツ・サービスの使用価値が本来の価値となり、ネットワーク自体の価値は相対的に低下する。