今こそ作り上げる日本経済の成長基盤と世界展望   財部誠一様  H23.7.29

 1.日本人の問題意識

   ・最近の関心事は、中国の新幹線事故とその後処理とアメリカの債務上限の問題だと思う。

    この2つの事象の根本は同じである。日本人は視野が狭く、別々の問題と考えている人が大半である。

    これは2008年のリーマンショックでバブルが崩壊し、その対応の結果により出ていることで根は同じである。   

    2008年のリーマンショックは、欧米のバブルが崩壊し、15世紀以降、欧州が世界の秩序を決めてきたが、

    BRIC`sが成長し、先進国の他に新興国も入れたG20で世界の秩序を決めないといけなくなったことである。

    先進国はバブルが崩壊した後の債務処理が終わっていないため、米国の債務上限問題が出てきた。

    中国は公共事業で世界の経済を支えていくことになり、中国で無理をして新幹線を作ってきた結果である。  

   ・ 今回の事故で、中国の世論が政府を動かすようになったと感じるに連れて、中国が本格的な国家になり   

    つつあることと思うようになってきた。温家宝が出てきたのは、本格的に原因を追究することを意味している。

    鉄道省は外からに刺激がなく、紅衛兵時代からの古い体質が残っており、人を人と考えないような体質が

    あり、今回の事故で根本から見直されるようになると思う。


 2.2008年からの変化

   ・2008年から世界はまったく変わったということを認識すべきである。日本ではほとんど海外の状況が報道

    されず、ほとんどの日本人が海外に関心を持っていない。このような国は北朝鮮以外にはないと思う。

    日本では311日の被害が起こり、管総理だけでなく、民主党、自民党も経済を考える政治がなくなった。

    日本には、巨額の債務、老齢化、少子化、年金制度など大きな問題があるが、今回の原発問題で電力

    不足という問題が出ており、日本の経済成長ということがまったく考えられていない状況である。

   ・今回の地震で都市ガスの被害が出ていないことは驚くべきことである。これはスマートメーターが守った。

    日本には先進国として自慢できる技術があり、今さら、再生エネルギーというのは実態を知らないことが

    問題である。太陽光パネルと言っているが、日本の企業は半導体の問題からほとんどが撤退している。

    太陽光パネルは中国と台湾だけが生産しており、すべて輸入する必要があり、日本の産業は成長しない。 


 3.日本にとってはチャンスがきた

   ・日本の産業にとっては、ビックなチャンスがきたということである。

    2008年に先進国の時代が終わり、これからは新興国の時代になると言われている。しかし、新興国とは

    何かということは明確になっていないが、アジアに集積していることである。
    ブラジルも成長しており、富の象徴である昨年の自動車販売台数がドイツを抜いて世界3位となった。

    日本も1960年代までは消費は少なく、海外に行くことも難しかった。1970年代になり、日本の消費が急増した。

    その理由は所得であり、所得が急増した結果、消費が増え、衣食住に目鼻がついてきた。その後、日本の

    消費が爆発した。世帯当たりの所得が1万ドルを超えると、消費が爆発すると言われている。

    中国は北京オリンピック以降、消費が急増している。今回の事故でも民意が政府を動かすようになった。

    古いアジアのイメージは間違っている。既に、消費が爆発しるしているか、間もなく爆発する感じである。

    日本の状況を考えても分かるが、消費が爆発すると、不景気になっても、消費は減らなくなる。

   ・昔から日本の政治家が良い時代はなかった。これまでは、官僚が優秀で頑張ってきたと言われている。

    しかし、本当は民間の企業がすべてやってきた。本質的に経済を大きく動かしてきたのは民間企業である。

    昔の企業の経営者は政治に頼らずに頑張ってきた。最近、企業の経営者が環境の悪さを言うが、可笑しい。


 4.新しい時代

   ・企業が長く成長するのは難しい。GEはどんな時代でもイノベーションをし、常に世界のベスト10に入っている。

    最近、GEは中国の農村地で売れる超音波診断装置を開発した。1000万円位した装置が100万円程度になり、

    携帯電話の2倍くらいの大きさにして売り、大量に売れている。それが先進国でも売れるようになってきた。

    これまでは新製品は先進国で開発し販売したものを新興国で売っていた。これからは、需要の多い新興国に

    向けて開発し売れるものが、先進国で売れるようになる。2008年以降の世界では、発想を変える必要がある。

   ・日本の企業は先進国を中心としてやってきて上手くいった経験から脱皮できなくなっている。

    新興国では、今の日本の製品は売れない。日本の企業はミスマッチばかりしている。

    新興国では完璧なものは売れない。ローテクでも良いから必要な機能を安く作って売る必要がある。

   ・新興国に進出していくには、性悪説に基づく管理が必要である。新興国では当たり前の話である。

    新興国で合理化ということは、組織そのものが新興国が求めるものを実現できるかということである。

    しかし、日本人や日本の企業は日本の文化や組織をそのまま持ち込もうして、言い訳ばかりしている。

    今の日本の企業はアジアの一員として成長するようになっていない。

    アジアが新興国として成長する時代になっていることから、今は日本の企業には良いチャンスである。