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日本経済復興のシナリオ 堺屋太一元経済企画庁長官 H23/6/2 |
・今の日本は第3の敗戦の時期だと思う。(第1の敗戦は江戸末期、第2の敗戦は太平洋戦争である。) 今の日本には、@M9.0の東日本大地震、A40mの津波、B原子力の事故、C何も出来ない政府、などがある。 1990年代から20年下り坂を続けてきた。これまでの第1や第2の敗戦は乗り越えて復活してきた。その理由は @前の日本を作ろうとしなかったことで、新しい日本に脱皮したこと、 A外国のものを積極的に取り入れたこと、Bお札?を変えたことである。 ・第2次大戦の敗北後は、大量生産が必要になった。官僚が指導し、経済運営を行う体制を確立した。 官僚が指導し、日本型の経営と終身雇用により、大量生産に適した体制が確立した。 計画経済により、コストに利益を加えた金額が価格となり、企業は安定的に成長することが出来た。 企業には倒産がなくなったことから、終身雇用制が定着するようになった。 ほとんどの国民は職場の中だけで生活するようになり、核家族となった。 これにより、安くて良いものが早くできるようになり、1993年には日本の生産性は世界一になった。 日本の経済が急速に成長してきたため、3年間で円はドルの2倍になったが、問題なく対応することができた。 一億総中流となり、国民間の格差が減少した。また、長寿世界一となり、この成長が1990年に終わった。 ・この間に世界が大きく変わっていた。米国では知価革命が進んでおり、近代工業社会は一区切りしていた。 それまでの日本では生涯所得の高い会社が良い会社であり、みんながその良い会社を目指してきた。 しかし、ベトナム戦争では豊富な物質を持っている米国が勝利をおさめることが出来ず、物量の時代は変わった。 大量生産による公害の発生、ニクソンショックによるドルと金の交換停止、石油ショックなどが出てきた。 1980年代に地球環境の問題として、人類は地球の資源に限界があることを思い知らされた。 その結果、ものが多い方が良いという考えから、満足が多い方が良いのではないかという考えがでてきた。 米国の労働が、自動車産業から情報産業や金融機関、観光業に重点が移ってきた。 それに伴い、人生観が変わった。生涯の収入が最も多いより、必要な時に使うべきという見方に変わった。 米国では欲しい時にものを買い、後から返すというローン社会になった。米国では産業が国外に出ていった。 日本がどんどんものを作り、米国に輸出した。日本はバブル景気になり、アラブはユーロダラーが流れていった。 その後、発展途上国は管理者の代わりコンピュータを活用して、東南アジアがものを作るようになった。 その後、中国でものを作るようになり、世界の製造地帯となっていった。 ・若者が真面目に働かなくなった。ものを求めなくなった。アメリカから社会主義国、欧州、それから日本に波及した。 それでも、1990年代まではまだ何んとかなった。その後は下り坂が続き、阪神大震災の災害が発生した。 ・これからはインフレか、デフレか。円安か、円高か。地震不況か?まだ良く分からない。 最も危険なのはスタフグレーションである。ものは高くなるが、景気は良くないという状況である。 阪神の大地震の時は3ケ月間は円高となり、その後は円安に向かい、140円代になった。 株価も12800円から82年には21000円まで上がった。 阪神大震災の対策を堺屋さんが頼まれた時に考えたのは、@不良銀行はつぶす。A預金は保護する。 B中小企業は守る。C良い銀行には公的資金を注入し立て直す。D大型の補正予算を組む。ことである。 今の日本は@1人当たりの所得の減少、A高齢化、B教育問題、C格差社会(ワーキングプワー) D医療問題、E技術競争力の低下、官邸主導の問題、などと色々と問題が出てきている。 そのため、東日本大地震の後に、スタフグレーションの恐れが出てきている。 ・これからは過去の日本を作るのではなく、新しい日本を作らないと駄目である。 (1)東北復興庁を早急に作り、東北6県を大きく見て、省庁毎の縦割りでなく、集約する必要がある。 これまであった230の漁港を50程度に集約し、特色のある音楽の町などを作り、新しい街をつくる。 これからの道州制の基となるものを作るべきである。 (2)公務員改革を進め、現在、身分となっている官僚制を職業に変換することである。 官僚は採用された時から省庁に紐付きになっており、仲間のために働く人が偉くなるようになっている。 国民のために働くことは考えていない。民主党になってから官僚がますます強くなっている。 (3)経済の立て直し 増税をする前に支出を切るべきである。国家公務員を大胆に見直し、費用を削減する必要がある。 福祉が危険になっている。年金の保険料を支払う人が、対象者の4割しか払っていない状況である。 これでは、福祉が早晩行き詰ると考えられる。 (4)道州制:東北をモデルにして全国の道州制を進める必要がある。 道州制では地方主権型を導入することとし、官僚の権限が届かない形態とするべきである。 これにより、文部科学省、国土交通省、厚生労働省などは廃止できると考えている。 日本は多様性のある、それぞれの地域が独自性のある社会を実現するべきである。 (5)文化大革命:何が幸せか? ・移動型の生活から歩いて暮らせる生活に変えて、コミュニティが出来る社会を実現する ・高齢者を生かす社会:高齢者を経験のある安い労働力として活用する必要がある。 昔は若い人が多く、子供のものを作っていたが、今後は人口の多い高齢者のものを作るべきである。 |