町内会・自治会と地域福祉活動 岩手県立大学 菅野先生
・講師は港区で生まれて、五反田で成長した。明治学院大学を卒業して、いわき大学に就職した。震災の時期は
原発から40Kmのところに住んでいたが、震災の時は東京に出張していた。専門は災害支援、コミュニティ支援
であり、現在は岩手県立大学で教鞭を取っており、盛岡市に住んでいる。
・岩手県には消滅可能都市と言われている33市町村があり、人口減少が進んでいる。先日も、山村の町で52歳
の男性と82歳の母親が亡くなっていて、しばらくして見つかったことがある。男性は肝臓を患っていて亡くなった
と思われる。そのため、母親が低体温症で亡くなった。その地域には以前4軒があったが、段々減って、今では
その親子だけ住んでいた。その地域の連帯感は強く、亡くなる前日も自治会長が訪問していた。そこで、ろばだ
(炉端)会が結成された。地域のつながりを考える時がきていると思う。そこで、今日は町内会・自治会について
地域福祉の観点からみた話をする。ポイントは町内会・自治会の福祉活動、その課題、今後の方向などである。
・全国の町内会・自治会の数は294359団体ある。港区では230団体、高輪地域は50団体ある。町内会や自治会
では婦人が活動している。東京では町内会、町会と言うところが多いが、全国では自治会と言うところが多い。
沖縄では字と言うところもあり、関西では社協と言うところもある。海外でも似たような組織がある。しかし、海外
はその土地のブランドを守ることが多い感じである。日本の自治会・町内会は日本独自のものという感じである。
沖縄では米軍に土地を貸していて、収入が多く、小学校くらいの建物を持つ立派な組織があり、活動している
ところもある。このような地域では、外から来た人がなかなか入れない場合がある。町内会費も年間2万円と高く、
人を雇って税金を集めることも行っており、法人格の資格を持っている。高知の本山の町内会では町会費をその
地域の豊かさで決めているところもある。自治会や町内会が各地域の収入まで把握している状況である。
・町内会・自治会の活動は、地域の特性により大きく違っている。(町内会に対する感想について、クラス内で自由
に意見交換する。)その中、出てきた意見としては、町内会費がマンションと個人では違っているという話が出た。
町内会・自治会について、老人になり町内会を脱退するとゴミの収集や街灯を外された問題もあった。赤い羽根
の共同募金が町会費に上乗せして取るのはおかしいと裁判になったこともある。
地方では漁師など同じ仕事をしている場合があり、連帯感が強いところもある。都市では、流動性が高いので、
コミュニティに参加するのが難しいという問題もある。六本木ヒルズにも町内会があり、住民と会社が集まって
活動している。都市部では町内会は懇親的な機能が中心になっている。町内会・自治会は法律で規定されて
いるものはなく、地縁による団体の認可の規定があるが、資産を持っている等により法人化する場合である。
・町内会・自治会は色々な活動をしているが、分類すると3つになる。防犯・防火など地域の問題を解決する問題
対処機能と地域の施設や環境の維持を行う施設維持機能と運動会や盆踊りなどを行う親睦機能である。
・町内会や自治会に対して、政治的な期待が高まっている。一つは、地域共同体における相互扶助体制を構築
するための基盤とすることがある。政府でも自治会・町内会に期待しており、厚労省では、地縁に基づいた組織
であり、住民の生活を多くの側面で支えており、重要な役割を担っているとしている。総務省は、都市コミュニティ
における課題に対する活用を検討している。地域のつながりの再構築のため、町内会・自治会の再評価により、
地域における見守りやささえあいなどの活動強化を政策的基調にしたいとの期待が高まっている。しかし、町内
会・自治会がその期待に応えられるかは、担い手の減少などから疑問がある。
・葛飾区では町内会の役員の平均年齢が60台が最も多いが、高齢化している。役員の在任期間は1~3年毎に
交代する場合と固定化しているところがある。自治会長が孤独死の発生を経験している人数は,1~2名が多いが、
20名も見た自治会長もいる。自治会では単身高齢者の情報把握を必要としている。自治会の7割が福祉部会を
持っているが、活動内容は敬老行事と募金活動が多く、見守りやささえあいなどの日常活動は少ない。町内会・
自治会の課題としては担い手がいなくなっていることと個人情報の壁である。民生委員は個人情報を持っている
が、制度上出せない仕組みになっている。元気の良い自治会長は自ら調べてまとめているところもある。資金、
財政面の課題も出てきている。都市部では局地的に高齢化している地域がある。高齢化に伴う世帯規模の縮小
と単身世帯が増加していること、多国籍化により、孤立が深まっているなど、町内会の基盤が弱くなっている中で、
期待が高まっている状況になっている。
・新宿の団地では老朽化から建て替えを進めて、ほぼ建て替えが完了した2321戸の巨大団地である。現在、高齢化
率が52%となり、一人暮らしの世帯が51%になっており、新球住民がほぼ半分づつになっているが、自治体がだん
だん減少していった。ある一人暮らしの住民が宅配ピザを食べたいと言ったことを機会に、民生委員と自治会がピザ
を食べる会を開催したら、たくさんの人が集まり、そのメンバーがハリウッド映画を見る会やカラオケボックスに行く会
などが次々に企画され、定期的な活動に発展している。ちょっとしたキッカケを上手く使えば変わることが分かる。
・都心の団地では東日本大震災の避難者を150世帯を受け入れる必要が出てきた。避難者を支援するのに、学生が
動き出した。コミュニティ全体を学生が支援してコミュニテイが復活しつつある。岩手県立大学では「ドナベ・ネット」を
立ち上げており、地域の住民と学生が顔を突き合わせてしゃべると信頼関係が出来てきた。信頼関係が出来ると
相手を気にかけるようになる。見守りやささえあいは気にかける人がいないと上手くいかない。
・町内会・自治会は地域福祉活動の土台になっている感じがするが、町内会・自治会は行政からの仕事で忙しくなり
過ぎている。町内会・自治会が何の組織が見えなくなっているので、話し合っていくことが必要である。都市では
学校も多いので、学生などの外部資源の導入を進めていくことが重要である。田中実さんお話で、「今、重要なこと
は住民同士のつながりの希薄化や現実の困難な状況を言い立てるのではなく、世話焼き社会を作り上げるために、
地域に積み上げてきた人のつながりの資産を大切に、一緒に生きていく力を溜めるために努力し続けていくことに
誇りを持つこと」と言っており、町内会・自治会が大事だと思う。
「感想」町内会、自治会について、説明を聞き、地域の役に立っている重要な組織だということは分かったが、
戦時中の自治会の行動などを考えるとそのまま受け取って良いか疑問を感じた。特に、今の自治会や
町内会は地元の高齢者が仕切っている感じがすることや、行政の活動に貢献していることを考えると
先生が指摘しているように、このままで良いのかということも考えられる。