身近な消費者問題 ~消費者トラブル回避のために~    法学部 大木教授

  ・今日は消費者契約法について説明する。消費者契約については複数の法律にまたがっているので、一つ一つ

   検討する必要がある

  ・事例1として、求人で仕事を受け取るため、パソコンを買って、講習を受けたが、仕事がなかった。モニターでも

   同様の話がある。この問題には色々な法律が適用される場合があり、基本的には民法の詐欺取消しや錯誤

   無効により取り消すことが可能である。しかし、民法では詐欺を仕組んだことを証明することや動機の勘違いを

   証明する必要があるが、実際上は難しい。そのため、消費者契約法による救済することが出来た。消費者契約

   法は消費者に限定されるが、不実告知や不利益事実の不告知による取消が可能となった。消費者取引法での

   消費者とは個人をいう。事業者は法人や団体が事業のために契約の当事者となる場合の個人とする。消費者

   契約は消費者と事業者との間で締結される契約である。訪問販売などを規制する特定商取引法があり、業務

   提供誘引取引の場合は契約書面の交付日から20日間であれば、クリーンオフを可能としている。民法の場合は

   5年間の取り消しが出来る。クリーンオフでも書面に欠陥があれば、20日間の期間を延ばすことがある。そのため

   書面の欠陥を丁寧にチェックする必要がある。誤認による取消の可能性や消費者に著しく不利益な契約内容も

   契約条項の無効化を規定されている。更に、公序良俗違反の無効化もある。消費者が一方的に不利な場合は

   無効化していこうとしている。誤認による意思表示の取り消しとしては、不実告知、断定的判断の提供、故意に

   よる不利益事実の不告知がある。民法の相手が騙すことがあるかどうかに関わらず、消費者を守ることになった。

  ・誤認の事例2として、スーパーの店頭でお買い得と言われて買ったが、考えてみるとそれ程、得ではなかったとか、

   コーヒーが美味しいと勧められて買ったが、それ程でもなかった。取消が出来るかということであるが、不実告知

   の可能性はあるが、一般的には該当し難い。味は主観的評価なので、客観的には評価が難しく、この例は一般的

   なセールストークと認められることになり、特別な場合を除き、取消は難しいと思う。

   事例3は築3年と言われて購入した中古マンションが実は築5年だった場合は、不実告知で解約できると考えられる。

   事例4は、新しい消化器に買い替えることになっていると言われて買ったが、買い替える必要はなかった場合は、

   取り消せるかということでは、消費者契約の立法担当官の意見は取り消せないと言われている。消化器が重要

   事項に該当しないと言われている。新しい消化器の内容や価格等が明確に比較できないので、不実告知をして

   いないと判断している。事例5は、医師が絶対に治ると言われたが治らなかった場合である。立法担当官は断定

   的判断は経済的事項に限定しているので、断定的判断としていないので取り消せないとの意見である。また、医師

   は絶対に正しいことを言えない場合もあるので、状況によっては嘘も許される場合があるので、取り消す可能性は

   少ないと思われる。

  ・事例6は、資格取得の講座を受講すれば資格が取れると言われたが、取れなかった場合である。立法担当官はこれ

   も経済的なことでないので、取消し対象外としている。しかし、学者の間では取消しが出来ると考えられている。不実

   告知に該当するかは難しい。事例7は、眺望、日当たり良好と言われたが、数ケ月後に隣に高層住宅が建ったので、

   解約できるかということである。これは解約できる。前に空き地がある場合は、高い建物が建つ場合が多いもので

   ある。事例8は、00日に届くと言われて買ったが、届かなかった場合は、消費者契約法の問題ではない。債務不履行

   にあたるかということであるが、指示した日に届かなかったということだけでは解約は難しい。事例9は、半年後に株が

   上がると言われて買ったが、上がらなかった場合である。消費者の判断材料を提供しているだけで取り消しは難しい。

  ・困惑による表示の取り消しについては、消費者が退去すべき旨を示したが事業者が退去しない不退去型と消費者が

   退去する旨を示したが事業者が退去させない監禁型がある。対面販売が前提で退去の意思を示すことが要件となる。

   事例10は、モニターに選ばれたと事務所に呼ばれ、長時間拘束されて結局高額な商品を契約してしまった場合である。

   退去したいという意思を表明することが必要であり、対面が原則であるので、この場合は取消しが出来る。事例11は、

   電話で勧誘されたが、断ったら、毎日会社にまで執拗に電話で勧誘があり、しぶしぶ契約した場合である。対面が原則

   であり、消費者契約上は電話での勧誘の場合は適用されない。しかし、特定商取引の電話販売により取消しが出来る。

  ・事業者の賠償責任を一方的に免除したり、制限する状況は不当な契約条項として無効とされる。高額な違約金の設定等

   も消費者を一方的に不利になる場合は消費者を守るようになっている。事例12では、天災などの不可抗力等で事業者の

   責に帰すべき事由によらない損害は責任を負わないということは有効かということである。確認の意味なので有効となる。

   事例13は、商品に隠れた瑕疵があっても、損害賠償、交換、修理は一切行わないとすることは、消費者の権利を一方的

   に害しているので無効となる。事例14は、結婚式場を前日にキャンセルする場合は契約金額の80%を解約金とすると

   ことであるが、結婚式場のように直ぐに予約が取れない場合は、キャンセル料は仕方がないが、キャンセル料が平均的

   損害を超えている場合は無効となる場合がある。平均的な損害を消費者センターなどで調べることが必要である。

  ・消費者団体訴訟制度があり、一定の消費者団体に事業者の不当な行為の差止請求を認めて、被害の発生や拡大を防ぐ

   制度である。適格消費者団体は総理大臣が認定することにより、濫用を防いでいる。事例15は、語学教室のパンフレット

   に受講期間内の受講回数は無制限と言う記載があったが、自由に受講日や受講時間が決められないので、差止が可能

   ということである。必ずしも無制限とは言い難いので、団体は事業者に申し入れを行う。受け入れない場合は差し止め

   請求を行うことになる。ひょうご消費者ネットがRIZAPの広告が誇大広告として申し入れを行った。RIZAPは会則を撤廃した。

  ・H25.12に消費者の財産的被害の集団的な回復の特例法が出来て、3年後の今年に施行されることになった。実際に被害

   のあった人を救済するために、団体が訴訟を起こすことが出来るようになったことは大きな進歩になると思う。

  ・特定商取引法は訪問販売法以外にも広げている。特に、クリーンオフ制度を広範囲に進めている。事例17は、英会話教室

   に入会し、50回分のレッスン料として20万円を支払ったが、3回受講したが、上達しそうにないので退会して返金を求めたい

   ということである。特定継続的役務提供に該当するであるが、中途解約に伴う事業者の損害賠償を一定範囲に制限した。

   語学教室の場合、サービス提供前の解約は15千円とし、サービス開始後の解約は、提供したサービスの対価と5万円か

   契約残額の2割相当の低い額を合算した額とした。このため、15400円は返還して貰えることになる。 


 「感想」今日の授業は、消費者契約法の説明であったが、私も老齢化に伴い起こりうる問題で興味はあった。
      事例に基づき、丁寧に説明して頂き、分かったような感じがした。授業を聞いた感じでは、消費者を守る
      ために、色々な法律が出来ているとのことであるが、非常に面倒な感じになっており、民法自体を見直す 
      方が良いのではないかと思った。