知っておきたい成年後見制度 ~自分と、家族の安心のために~ 黒田教授
・成年後見制度は、法制度なので、出来ることと出来ないことがはっきりしている。行政が縦割りなので、成年後見
制度では非常に難しいことが多い。世界では障害者に対する権利を守る動きがあり、被後見人の権利を制限する
成年後見制度と会わない部分も出てくる。
・成年後見制度は成年者を対象とする後見制度である。未成年者には一律の保護されるのに対し、成年になって
判断能力が不十分な人を保護する。未成年者には保護者として、親権者や未成年後見人には強力な権利が与え
られている。親権も未成年者が20歳になるとなくなる。
・2000年4月に介護保険制度と一緒に成人後見制度が出来た。それまでは、禁治産と準禁治産制度があった。成年
後見関連4法を制定された。後見は禁治産を改訂し、保佐は準禁治産を改訂した。補助と任意後見は新設した。
成年後見制度の考え方は、自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーション等の新しい理念と従来の
本人の保護の理念の調和を目指している。成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があり、法定後見
制度は民法に規定されており、家庭裁判所に選ばれた保護者が支援する。任意後見制度は特別法であり、判断
能力がある内に本人の意思に基づき自ら選んだ代理人契約しておくものである。
・2014年には 34373人が申し立てており、急速に増加している。しかし、世界的には10%くらいがいるのではないか
と言われており、まだ少ない感じである。本人の判断能力を医学的に鑑定する必要があるが、2007年の40%から
急速に下がり、2014年には10%と低くなっている。審判期間を短くするため、鑑定を控えている可能性がある。
・後見人に本人の配偶者や親子がなることが減少しており、親族以外の第三者が増えており、2014年には65%に
なっている。親族を後見人に選定するとトラブル場合が多いので、裁判所が第三者にする傾向が増えていると思う。
しかし、後見人になる人は多くないので、市民後見人を増やすことを取り組んでいる。後見人は財産目録を作成し
なければならないが、親族から預金通帳や不動産の登記簿などの資料を集める必要があり、非常に苦労している。
後見人の報酬については、一般の市民後見人は無償、弁護士で月3万円、社会福祉士は1万円くらいで非常に安い。
後見人の申し立てた場合は、申し立てた人が費用を負担しなければならなく、費用を負担する人がいない場合は
市町村長が申し立てることが出来るようになり、2007年頃から急増しているが、予算の関係で制約される場合が多い。
・成年後見制度では、後見制度の対象者は判断能力が常に出来ないことである。後見は家庭裁判所の審判により
開始される。そのため、申し立てがないと認められない。申し立て出来る人も制約されており、本人、配偶者、四親
等内の親族、未成年後見人などに絞られている。申し立てに必要な資料も非常にたくさん必要である。成年後見人
は一応候補者も書けるが、家庭裁判所が職権で選任する。後見人の権限は本人保護の実効性の観点から広範な
代理権や取消権による保護が法定され付与される。しかし、自己決定の尊重から、日常生活に必要な範囲の行為
については、本人の判断に委ねて、取消権の対象から除外される。婚姻、認知、遺言などは取消しは出来ない。
後見人には、本人が行う契約等に事前に同意する同意権はないが、追認権はある。本人に代わって契約する代理
権はある。後見人には取消権があり、訪問販売や悪徳商法で不要なものを買った時は取り消すことが出来る。取消
権を行使した時点で残っている利益だけを返還する義務を負うため、買った時の状況に戻す必要がないことになる。
成年後見人が本人の居住用の不動産を売却や賃貸、抵当権を設定する場合は家庭裁判所の許可が必要である。
また、医療同意は代理権の対象とならないので、手術等を行うために、病院から代理を求められても対応できない。
保佐は後見に準して決められるが、補助は審判により同意権、取消権、代理権が付与され、決められたものはない。
・成年後見人が後見開始時の職務は、1ヶ月以内に財産目録を作成し、毎年の支出金額を予定しなければならない。
財産の管理、身上監護を行う必要があるが、身の回りの世話のような事実行為は職務に含まれない。職務を遂行
する際の指針としては、本人の意思を尊重し、その心身の状況及び生活の状況に配慮することである。成年後見人
には善管注意義務が求められる。成年後見人と本人の利益が相反する行為については、監督人がある場合を除いて
特別代理人、臨時保佐人、臨時補助人を選任しなければならない決まりになっている。
・費用は本人の財産から支出することが出来るが、報酬は家庭裁判所の審判が必要である。報酬がすべて後払いで
ある。後見制度は本人が生きている人の制度であり、本人が死ぬと後見人には一切の権利はなくなる。
「感想」成年後見制度のお話を聞くことが出来た。まとめた資料を沢山貰ったので、まとめる時に見たが、後見人になる人が
少なく苦労している感じとのことであるが、仕方ないと思った。成年後見制度の法定後見制度は家庭裁判所が行う
のが適当だと思うが、任意後見制度は社会制度として検討する必要があると思った。私は任意後見制度に関心が
強かったが、まだ、良く整理されていない感じがした。