社会福祉協議会について 社会福祉学科 河合教授
・日本の社会福祉協議会は特異な存在だが、地域の役割は大きい。社会福祉協議会は国際的には民間団体である。
社会福祉では民間の役割が大きいが、民間団体が集まって出来た組織である。
・英国社会が1760年から1830年に産業革命期として生産システムが大きく変わり、激変した。この間、英国は世界の
工場として栄え、富を集めていた。しかし、この時期は社会福祉にとっては難しい時期であった。この時期は仕事を
すれば稼げた時期であったので、この時期の貧困は仕事を選び過ぎるとか、働かないためと思われていた。それも
あり、英国では貧困を国や行政が助けるのは良くないことと言われていた。エリザベスⅠ世が1600年代に作られて
いた貧困法を全面的に作り直し、1834年に改正貧困法を作ったが、国家が貧困者を助けるのを止めるものだった。
しかし、貧困層が増えていった。1869年頃から慈善団体が増えてくる。バラバラに慈善事業を行うと不公平が出た。
救貧活動をもっと効率的に行うため、慈善団体の組織協会を作った。しかし、発想的には上から目線で考えていた。
・次にソーシャルセツルメントムーブメントを学生達が1884年に作った。トインビーホームで労働者教育をした。学生も
当初は上から目線で見ていたが、一緒に暮らしてみると現実問題として捉えることが出来るようになり、同じ目線で
見るようになった。産業革命という言葉を作ったアーノルドトインビーが社会革命の拠点を作った。
・この動きは米国に拡がり、1877年には米国でCOSが設立された。1887年には学生のセツルメントが出来た。地域
組織化という用語は一般的にあったが、民間社会福祉活動としてコミュニティオーガニゼーションが生まれてきた。
・日本では1951年に社会福祉協議会が出来た。GHQの社会福祉を担当したメンバーはニューデール政策を進めた
メンバーで、日本に公的な福祉組織がなかったので、国家の責任として公務員が担当することを決めた。その一環
として、厚生省に社会福祉協議会を作るように命令した。厚生省の人には社会福祉協議会が何をするのか分から
なかったので、米国に行って勉強した。そこで勉強したのがコミュニティオーガニゼーションであった。都道府県には
一通リ社会福祉協議会が出来たが、市町村はなかなか難しく、自治体の職員が兼務で形だけを作った。
・昭和25年に救護法を生活保護法に変えた。それまでは民生委員が行っていた部分もあり、生活の保護は行政が
担当し、その上を民生委員が担当することになった。そこで、民生委員が世帯更生資金貸付事業の活動を行った。
・1960年に山形会議が開催されて、社会福祉協議会は何をするか検討し、地域住民の民主化をすることを決めた。
社会福祉協議会は民間なので住民主体として行政とも対立することがあるとした。1960年に基本要綱を決めて、
直接サービスはしないで、埋もれた問題を掘り起こすことにした。住民主体と地域組織化を打ち出した。しかし、
1960年後半からの高度成長と共に、色々な問題が出てきた。中学までは充実したが、高校が不足したことと共に
幼稚園の不足、公害問題などが出てきた。自治体が公害対策に熱心に取り組まなかったので、革新市長が出て
きて、多い時は半数近くまでになった。1973年に活動強化要綱で、住民運動に遅れていると反省し、住民運動に
力を入れることになった。しかし、その年の暮れにオイルショックが起きて、活動強化要綱はお蔵入りになった。
・もっと見える形の活動にすべきだという方向に転換した。その結果、行政が行うことをどんどん民間委託という形
で、ホームヘルパー、入浴、給食の仕事を受けていった。直接、サービスを積極的に行う方向になった。1992年
に事業型社会福祉協議会になっていった。しかし、介護保険が出来て、民間と競合することになり、厳しくなった。
民間との競合により、都市部ではこれらのサービスから社会福祉協議会が撤退したところも出てきた。農村部は
民間が進出していないので社会福祉協議会が行っているところが多い。現在の社会福祉協議会の活動は地域
組織化や成年後見事業を行っている。
・社会福祉協議会は民間団体であるが、事務局長や次長は行政から転職した人が行っている。地方に行くと組長が
会長を兼ねていることもあったが、介護保険制度が出来て以降、なくなった。このように行政との関係が密になって
おり、お金も行政が出ている。しかし、地方の福祉にとって、社会福祉協議会は重要だと思っている。
みなさんには社会福祉協議会を育てるようにして欲しいと考えている。
「感想」社会福祉協議会という言葉は家内から聞いているが、何をするところかはまったく知らなかった。今日のお話を
聞き、福祉というのは民間から出てきた発想だということで、納得がいった。そのため、行政が福祉を行うと
どうしても上から目線になり、今一つ上手くいかないことが何となく分かった感じがする。今、何となく感じている
ことではあるが、今後の福祉は救貧ではなく、みんなが成長するように根底から見方を変える必要があると思う。