災害マネージメント  ~災害への備え~         社会福祉学科  明石教授

  ・講師は国連で働いていたが、社会福祉について学んだことはなかったので、米国に留学して社会福祉の勉強した。

   日本ではカウンセリングは臨床医が行うが、米国ではソーシャルワーカーがカウンセリングを行うので最初に学んだ。

   3.11の時に東北に行ってカウンセリングを行ったが、今でも学生を連れて東北に行き、カウンセリングを続けている。

  ・今日は、災害を国際的に見たらどのような状況になっているかということを3つに絞って説明する。

   災害によって緊急援助を必要とする人が増えている。先進国では都市に大規模な人口移動が起こっている。1950

   には都市に住んでいる人は30くらいであったが、1998年には45%になり、2025年には60%になる見込みである。

   都市化が始まって以来、緊急援助を必要とする人は急増した。しかし、災害により死亡した人は減少している。日常

   的なハザードの影響はコントロール出来るようになったが、地震やハリケーンなどに対しては果は上がっていない。

   1970年以降、災害は3倍になったが、死亡者は半減している。阪神大地震の時は医療関係者は水が悪くなり、下痢

   が増えると言ったが、現実には食欲が減少し、便秘が増えた。自然災害は1980年代は120/年であったが、2008

   には500/年に増えている。気象変動と環境の変化で、がけ崩れや土石流、洪水、熱波などが増えている。都市に

   人口が密集しているので集団的脆弱性が高まっている。年々、テクニカル災害が増えている。人工的に発生する災害

   発生件数は2000年には350/年となり、自然災害の発生件数を上回っている。アジアは災害で死亡している人が多く、

   特に、噴火や洪水で死亡しているが多い。ヨーロッパやオセアニアは災害で死亡している人は少ない。アフリカは

   噴火などによる死亡者は少いが、洪水など水に関連したによる死亡が多い。

  ・災害の定義には災害対策基本法があり、暴風、竜巻、豪雨、豪雪、高潮、地震、津波、噴火、地滑りなど色々な自然

   現象、または、大規模な火事又は爆発などの被害の程度により、政令で定める原因による被害をいうとなっている。

   ハザードは死傷者の発生や資産の損失、インフラの損害、農産物被害、環境へのダメージなどの原因となる現象

   物理的状況である。脆弱性はハザードが引き起こす被害の傾向を測る。脆弱性は、物質、社会、経済、環境の要因

   の組み合わせで測定され、害につながる傾向を減少させる行動により低くなる。災害リスクに共通した定義はないが、

   国連はハザード、脆弱性、発生の可能性、レジデンス(弾力性)、対応力の概念を以下のような方程式で表している。

      災害リスク=ハザード×脆弱性×発生する可能性/レジェントあるいは対応能力

  ・災害に対する国際的な取り組みが20世紀の中頃から発展してきた。国連も1980年頃から災害の取り組みを始めた。

   災害を管理するプロセスには4段階あり、減災、災害への備え、対応、復旧である。これらは区別することが難しい

   場合もあるが、分類すると何をしなければならないかが明確になることがある。“減災”はハザードの可能性のある

   ものを除去、軽減することである。“災害備え”については、被災する可能性のある人々や被災者を支援する人々

   が生存し、資産などの損害を軽減させたり、消滅させる手段を獲得することである。被害を抑えることも重要である

   自由に備えることも考えておく必要があるそのためには、スキルを備えることも必要であり、防災士の資格を取得

   することも一つの方法である。アメリカでは身分証明書や家族の写真を持つことがある。アメリカでは事故が起きても

   身分証明が出来なければ対応して貰えない。“対応”は災害が発生した時に取る行動であり、スキルも必要になる。

   たとえ人から助けを求められている時でも、救助するスキルがなければ助けられないし、安全性を見極められない

   と助けに行くことも出来ない。“復興”は被害を受けた状況から通常の状態に回復することであり、元に戻すことでは

   ない。もっと良くする必要がある。

  ・アメリカにCERTCommunity Emergency Response Teams)という組織がある。CERTはロスの消防署が取り組んだ

   ことから始まった。CERTは地域の中で緊急対応する組織であり、地域毎にチームを組んで取り組む仕組みである。

   大きな災害時には消防や警察はすべてに対応できなくなるので、自助や共助が重要になる。現実的には、災害時

   には消防士や警察官に助けられる人より、地域の人に助けられた人が多い。公助が来るまで、共助で生き延びる

   ことが大事になるので、住民に研修を行う必要が出てきた。CERTは消防士や警察官のような専門家でなく、地域

   の住民が行う組織であるCERTのメンバーは専門家ではないので、研修が必要であり、CERT研修には、研修員

   を育成する研修と住民を対象とする研修がある。住民に向けた研修では、7週間にわたり、2時間半の研修を行って

   いる。研修内容は、災害への備え、小規模消火活動、災害医療活動、簡易探索・救済活動など7つの研修を行い、

   最後にシュミレーションを行って、試験答の見直しや災害活動の実践を行っている。研修後はチームを組織化し、

   研鑽する必要がある。政府も支援している。現在ではアメリカ全土でCERTの研修が行われている。

   「感想」今日の講義で、災害の備えについて聞かれて、場当たり的に実施していることが気になった。3.11の時
 
        の反省として、食器棚の中の食器がたくさん落ちて壊れたので、扉の開閉を止めるシールを着けたが、

        基本的には家具を減らし、収納壁にしたことであると思う。また、食料品も賞味期限が直ぐ来るので、毎日の

        買い物で少し多めに買って保存しているが、家内からは食べ物が多いと不満が出ている。じっくり考える
 
        必要があると感じた。