身体運動の仕組みと身体機能の加齢性変化      教養教育センター  黒川教授


  ・少子高齢化社会における高齢者の健康と体力の重要性について話をする。今、地球には64億人が住んでいるが、今世紀

   中頃には100億人になると見込まれている。先進地域の人口は増えないが、発展途上国では人口が大幅に増えていく。

   日本の人口は減少していく。しかし、高齢者が増えていく見込みであり、子供は減っていく。2005年には65歳以上の人口は

   2556万人で、総人口の5人に1人を占めていた。今世紀半ばには3人に1人が高齢者になると言われている。特に、75歳以上

   の高齢者が増えていく。高齢者のいる世帯数は昭和58年には871万世帯で、世帯全体の4分の1であったが、平成15年には

   1646世帯となり、3分の1を超えた。高齢単身世帯と高齢夫婦世帯が著しく増加している。要介護の人も増えている。

  ・日本人の平均寿命は83歳で、健康寿命は75歳で、いずれも世界一ある。男性の場合は、健康寿命が72であり、平均寿命

   80歳であるので、8年間は一人で生活出来ないことになる。平均寿命と健康寿命の差が短ければ問題がない。

   どうすれば良いか。そのため、高齢者の健康であることが重要になる。我々の身体は使っていると丈夫になるが、使わないと

   退化する。若い時に運動をして活力水準を上げていて、退化するスピードを落とすことが重要になる。

  ・健康で快活な日常生活を遂行するには、生活環境に適応できる身体能力が必要であり、この能力を総称して生活フィットネス

   と呼ぶ。生活フィットネスの中でも特に重要な要素に脚の筋機能がある。脚筋機能の低下は歩いたり、立ったり座ったりする

   ような日常生活に支障をきたすようになる。転倒の危険性が高まり、骨折しやすくなる。生活フィットネスが高いと病気しても

   寝たきりにならないでいることが出来る。骨折して骨が回復しても、筋肉が足りないで寝たきり状態になると回復できなくなる。

   生活の質を上げるにはお金や物質だけでなく、身体力が大きな要素になる。高齢者の場合は個人差が大きい。

  ・どうしたら高齢者が元気になるか。身体の構造には206+αの骨がある。骨はパイプ状になっており、折れにくくなっている。骨

   2年半で入れ替わる。破骨細胞が骨を溶かして、骨芽細胞が再生する仕組みで骨が再生されている。歩いたり、走る時など、

   足に刺激があると骨は強くなる。骨を強くするには動くことが重要である。筋肉には骨格筋と内臓筋がある。骨格筋は随意筋で、

   内臓筋は不随意筋である。骨格筋は自分で動かして強化することが出来る。足には大腿四頭筋と前脛骨筋の5つに大きな筋

   があり、年を取ると大腿四頭筋と太殿筋が急速に衰える。筋肉は科学的エネルギーATPを消費して、力学的エネルギーを生み

   出す一種のエンジンである。筋肉は筋原線維が集まっており、運動すると一部が切れるが、回復すると以前より強くなるので、

   筋肉が強化される。年を取ると筋原線維が減り、筋肉が細くなる。年を取るとバランス感覚が衰える共に、筋肉も衰える。その

   ため、歩幅が減少し、歩くのが遅くなってくる。下半身の筋肉より、上半身の筋肉が落ちやすい。

  ・筋力も20代から減少する。最大酸素摂取量も年齢が高くなるに連れて減少する。柔軟性、敏捷性、平衡感覚も低下する。

   全身反応時間は遅くなる。運動を定期的に実施している人の筋骨格系の機能は高い。高齢者でも身体運動のトレーニング

   は効果がある。運動直後にアミノ酸・グルコースを投与すると筋肉のフェニルアラニンバランスは良くなる。次回の授業では

   自宅で出来る運動を教える予定である。

   「感想」高齢になるほど、健康が大事になると思うが、身体が思うように動かないので、体操も十分には出来ていない。

        これからも出来る限り身体を動かすようにしたいと思うので、次回の授業を楽しみにしたいと思う。