行政とメディア ~地域をつなぐコミュニケーン~      法学部  川上教授

  ・調布に住んでいるが、麻布中学、麻布高校を卒業した。世論研究が専門で、今は行政と住民のコミュニケーションを活発にする

   ことを研究している。どんな情報で住民は動かされるかとか、どういうコミュニケーションが人を説得するのかなどを考えている。

   どんな情報を出すと住民が納得するのか、良い世論が形成されるのかを考えると、戦略コミュニケーションとして行政広報が

   重要になっている。地域に行政の広報誌は必要かを考えている。港区民は広報誌を良く読んでいる。特に、ネットによる広報が

   盛んである。港区は特殊な地域である。テレビのキー局がすべて港区にある。全国放送をしていても、視聴者の声を聞く

   港区で聞くことが多い。そのため、全国放送でも港区の場所が多く出てくる。NHKがローカルニュースを放送している。群馬の

   大泉ではコミュニティラジオを放送している。しかし、自分の地域の話題をどういう風に取り入れるか考えるとテレビやラジオ、

   新聞などは難しい。じっくりと地域の課題を解決するツールにはならない。港区の広報誌が読んでもらえない。行政の広報誌

   は独占という特徴があるので、競争原理が働かない。競争原理が働くと良いものが出てくる。品川では学校が選べるようになり、

   良くなっている。競争があるから努力するが、独占の行政には難しい。行政にも競争原理を取り入れるようなってくると思う。

   つくば市では運動公園の建設に反対運動が起きて、取り止めになった。そのため、行政は広報広聴を勉強している。住民が

   行政に働きかけることで行政が変わってくると考えている。

  ・パブリックリレーション(広報)は19世紀末から20世紀初めに出てきた。アメリカとキューバの関係が悪化したことがあるが、その

   理由は新聞が嘘の記事をでっち上げて煽ったためである。その新聞は信頼関係がなくなり消えていった。ペンシルバニア鉄道

   会社の事故の時、記者を招き。事実を知らせたことにより、正確な情報伝達を行い、信頼関係を確立した。第2次戦争でも日本

   政府はミッドウエイ海戦で正確な情報を出さなかったので、国民の信頼が失われた。正確な情報を出すことで、住民と信頼関係

   を構築することが行政広報誌の役目である。山梨県のえびすで生肉を食べて4名が亡くなったが、山梨県では生肉を流通して

   はいけないと広報していた。しかし、行政が広報しても業者は改善しなかった。この状態では広報誌の意味はあるかと心配に

   なる。おれおれ詐欺やリフォーム詐欺などでも広報誌に出しても役に立っていない。行政がアリバイに利用している感じもある。   

  ・住民が声を行政に上げることで変えていけるが、広聴を通じて住民ニーズの把握も大切である。掲示板に貼って貰いたいと

   たくさんのポスターが送られてくる。しかし、掲示板そのものがなくなった。鈴鹿市ではメールモニターの方にアンケートを取り、

   結果を広報に掲示している。自分の意見が取り上げて貰えると好感を持たれている。ホームページで意見を取るところもある。

   2番目は行政の問題である。行政の縦割り行政の弊害がある。住民から受け取った意見を活かす組織が必要である。関西の

   家電メーカでもお客様の声を活かして良い製品を作るようになった。例えば、ビデオのコントローラで使っていないボタンが多い

   という意見が出てきた。ユーザの立場で考えてシンプルな商品を作るようになり売れたことがある。高齢者が使えるものが必要

   ということで、ドコモのらくらくフォンのように成功した例がある。商品を売るためには、ユーザ目線で作ることが大切である。

  ・コミュニケーション手段の点検が必要である。ユーチューブやツィターで情報を出している行政もあるが、その地域の天気予報や

   イベントの情報が多く、ツールがあるから情報を出すと言う考えがある。どの位フォローアがいるのかが大切である。見る人が

   興味がある情報を出すことが大切である。空き室情報を元AKBの大島さんを使ってユーチューブで出すと1週間に10万回のアク

   セスがあった。観光情報をQRコードで説明が見られるようにすることも効果がある。何に使うと港区を活性したり、経済が回わり、

   行政サービスが納得できるようになるか検討する必要がある。コミュニケーション手段の改善は港区でも大事である。

  ・次は、情報である。今はちょっとしたことが世の中に広まる。ジャーナリズムは良く考えている。読者はどこを読んでいるのか良く

   考えている。新聞記者は読者が関心を持つものを書いている。特に考えているのは人間を扱っている。行政は制度は扱うが、

   人間を扱っていない。ふるさと納税でもっとも成果を上げている長崎県では 広報で障害を持っている人を取り上げている。その

   理由は障害者週間ということだけでなく、障害者の思いを取り上げている。障害者の人を扱うことで、住民に知って欲しかった。

   岡山県真庭市が広報で農業を取り上げているが、農業で頑張っている人を一人一人取り上げている。その後に、制度を取り

   上げており、制度を使ってやっている人の例を紹介している。50人以上の農業の人に登場して貰って、生き様を紹介している。

   それにより、農業を理解して貰っている。東北も七ケ浜町でも、震災の9月前に災害予防のため、行政情報誌で災害を特集して

   いた。30年以内に99%災害が来ると周知していた。しかし、その規模は歴史に残る程ではなく、不十分であった。行政では繰り返し

   周知する必要があり、それを実施していた。港区にとって防災情報は何か考える必要がある。防災広報をどうするのか考えていく

   場合、人を前面に考える必要がある。効果の検証は行政が行うべきであるが、重要である。

  ・認知症の問題がある。地域全体の問題として取り上げる必要がある。認知症を正しく理解して対応するべきである。高崎市では

   周囲の理解がなく、苦労した人の話があり、市役所の人が徘徊した例がある。その結果、町の人が無関心だったことを報告した。

   それにより、何かあればメールで連絡するようになった。社会が守っているということが安心につながる。そのため、サポーターを

   育成している。地域の様々な情報を掘り起こして集約することが重要である。千葉ではスマホで行政が情報を取り上げるために、

   SNSを使っている。住民協調型行政に転換していくことが必要であり、みなさんがその接着剤になって欲しい。より良い港区の

   コミュニケーションを作って欲しいと考えている。

  「感想」行政のコミュニケーションという興味のあるお話であった。今の行政はほとんどの仕事を外に任せている状況で、

       地域の実態や意見を知らない感じがするので、SNSなどのコミュニケーションツールで広聴するとますます実態を

       知らなくなるのではないかと心配になった。でも、コミュニケーションを基礎とする行政は今後大事なると思った。